デートとハプニング!?
第6話 待ち合わせ
そして、土曜日。
俺は一枚の紙を手に持ち待ち合わせ場所に向かっていた。
この紙は何かって?
これはデート?の約束を結んだ日の放課後、俺の下駄箱に入っていたものだ。
もちろん差出人は響。
ここには、今日の集合場所と時間が書いてあった。
集合時間は十時。
集合場所は駅前の大きな木の前だった。
「まだ来てないか……」
集合時間、五分前。
辺りを見渡してみたが響の姿はまだなかった。
俺は今日どんな気持ちでいればいいのだろうかと昨晩からずっと思っていた。
渉は『友達として』と言っていたがそんな簡単に割り切れるもんじゃない。響は俺のことを好いてくれていて、告白までしてくれた相手だ。今更、友達として見れるかと言われれば微妙な感じだ。
これがまだ告白されていなかったら純粋に友達として今日を過ごすことができただろうけどな。
そんなもやもやとした気持ちを抱えながら響のことを待っていると急に視界が真っ暗になった。
「だ~れだ?」
後ろから女性の声。
春風に誘われて鼻に香るフルーティー匂い。
背中に当たる柔らかな感触。
って!?柔らかな感触!?
「早く誰か当ててよ~」
「……九条さんでしょ。てか、九条さんしかいないでしょ」
その柔らかな感触に戸惑いつつ言った。
「当たり~!」
視界がもとに戻り、目の前に私服姿の響が現れた。
黒色のオフショルダー、足のラインがはっきりと分かるジーパン、赤色のベレー帽、赤色のヒール、モデル雑誌から出てきたのかと思うほどオシャレな響の私服姿に俺は思わず見惚れてしまった。
「待たせちゃった?」
「い、いや……俺も今来たところ」
「そっか~。てか、来てくれてありがとね」
「一応ね……」
「一応でも来てくれて嬉しいよ!」
「本当は来る気はなかったんだけどね……」
「またまた~。そんなこと言いつつ本当は私とデートしたかったんでしょ?」
少し前屈みになって上目遣いで俺のことを見て言った響。
その拍子にオフショルダーの下に隠れた下着がチラ見えする。
(ピンク……)
何考えてんだ俺!?
頭をぶんぶんと振って煩悩を振り払った。
そんな俺の様子を見て響は楽しそうに笑う。
「あはは、何やってるの?」
「いや、ちょっと煩悩を……」
「煩悩?」
「な、なんでもない。こっちの話だから気にしないで」
「そう?まぁいいや。それじゃあ行こう!」
響は俺の手を自然に握るとフリーマーケット会場へと歩き始めた。
「く、九条さん!?」
「何?」
「何って、手……」
「手がどうしたの?」
「いや、どうしたのじゃなくて……手、離してほしいんだけど……」
「なんで?」
俺を見つめるそのまなざしは、なんで離さないといけないの、と訴えかけていた。
ダメだ……。
これは離す気がない。
「分かったよ。もう、このままでいいよ」
俺は半ば諦めるようにそう言った。
すると、響の表情は見るからに明るくなった。
「やった!ずっと柏君と手を繋ぎたかったんだよね!」
「そ、そうなんだ」
「やっと夢が一つ叶った!」
「それは、よかったね」
俺はもう苦笑いするしかなかった。
やっぱりどんな気持ちで響と一緒に行動すればいいのか分からない。
そう思いつつ、響に案内されるままにフリーマーケット会場に向かった。
☆☆☆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます