第5話 問題解決
翌日から渚はちゃんと学校に来るようになった。
渚曰く、駿に弱みを握られ、無理矢理彼女みたいなことをさせられていた。というのがことの顛末らしい。
そんな渚は真由香に呼び出されていたから、今頃は事情を話していることだろう。
そして、今は昼休憩。昨日あった一部始終を一緒にお弁当を食べている響に伝えたところ・・・・・・
「なんで私のいないところで解決しちゃうのよ」
とご立腹の様子。
俺の前の席に座っている響は頬をぷくぅと膨らませて不満顔をしていた。
「私だって柏君の活躍見たかったのに!」
「え?」
「聞こえなかった?もう一回言う?」
「いや、聞こえた・・・・・・」
「じゃあなんで、ラブコメの難聴主人公みたいに『え?』って聞き返すのよ」
「いや、別に『え?』は聞こえないとか以外にも使うだろ。さっきの『え?』は驚いたんだよ」
「何に?」
「それは・・・・・・」
俺は言葉に詰まった。
まさか、自分の活躍が見たかったなんて恥ずかしいことを言われるとは思っていなかった。
だから、思わず『え?』と聞き返してしまった。
(それに、さっきの顔はずるいな〜)
響が活躍を見たかったと言った時の顔はまさに恋する乙女そのものだった。
「てか、九条さんもラブコメとか読むんだな」
「そりゃあ、読むよ!ラブコメは私の指南者だからね!」
「そう、なんだ」
「柏君も読むの?」
「まぁ、読むかな」
「へぇー!」
響の顔がパァーと明るく輝いて「じゃあ、今度・・・・・・」と何かを言いかけたところで、響が座っている席の本来の持ち主が帰ってきた。
「お二人さん。あんたらなんで付き合ってないの?」
戻ってきて開口一番に爆弾発言をする渉。
「おいっ!渉!」
「本当よね〜。私はこんなに柏君のことが好きなのに」
そんな、渉なら乗っかるように響が言う。
「ちょっと!?九条さんまで何言ってるの!?」
「だって〜事実だし。それに柏君に告白したんだから、私の好きな気持ち隠す必要もないでしょ?」
「ひゅ〜。言うね〜」
渉は口笛を鳴らし、響は「あ、今どきますね」と言って席から立ち上がった。
そして、渉は空いた自分の席に座って俺にジト目み向けてくる。
「で、宗一の気持ちは変わらないわけ?」
「変わらないよ。そもそも、俺にそんな資格ないって」
「はぁ〜。ごめんね。九条さん、こいつこういうやつだから、愛想尽かさないでやってくれると助かるよ」
「大丈夫。柏君の自己評価がどれだけ低くても私の中の評価は変わらないから」
そう言って響は真剣な眼差しで俺を見つめてきた。
そのあまりにも純粋な瞳に俺は目を逸らしてしまう。
(真っ直ぐすぎるだろ・・・・・・)
何も言えずに黙っていると響が「柏君は私のことが嫌い?」と聞いてきた。
俺は首を横に振って、響の方を見た。
「そっか。それが知れてよかった」
響は満足といった表情を浮かべていた。自分の席に向かって歩き始め、戻るかと思いきや「そうだ」と何かを思い出したようにくるっとこっちを向いて言う。
「柏君、次の土曜日って空いてる?」
「空いてるけど・・・・・・」
「じゃあ、一緒にフリーマーケットに行かない?」
「え?」
「その『え?』はどっち?まぁ、どっちでもいいや!約束だからね!一緒に行こうね〜」
俺の返答を聞く前に響は自分の席に戻っていってしまった。
「行くのか?」
何が起こったのかとポカンとしていると渉が聞いてきた。
「さっきのって・・・・・・」
「デートの誘いだろうな」
「・・・・・・だよな」
「行けよ」
「行かないって」
「行かなかったら殺されるぞ」
「誰に?」
「誰にってそんなの・・・・・・」
渉はそこで言葉を切ってクラスを見渡した。
よく見ると、クラスメイトたちの視線が俺に集まっていた。
その中の何人かは殺気を放っていて俺は察した。
「分かった?」
「あぁ・・・・・・」
「だから、諦めて行ってこい」
「はぁー。何でこんなことに・・・・・・」
「お前、それは贅沢な悩みってやつだぞ。相手はあの九条さんなんだぞ。彼女とデートしたくてもできないやつらがどれだけいると思ってるんだ?」
「知らん」
「まぁ、それは俺も知らないけどな。とにかく行ってこいって」
「だから、俺はもう恋愛はしないんだって・・・・・・」
「別にそんな気持ちで行かなくてもいいだろ。純粋に友達として九条さんと休日を楽しめばいいんじゃないか」
友達か・・・・・・。
実は少しだけフリーマーケットも気になってたし、女友達と一緒に遊びに行くと思えば、まぁいいか。
「そう、だな」
「どうだったかちゃんと話聞かせろよ〜」
渉がそう言ったところで先生が教室に入ってきて午後の授業が始まった。
そういえば、集合時間も場所も聞いてないんだけど・・・・・・。
(俺はどこに何時に行けばいいんだー!?)
心の中でそう叫ぶと響と目が合った。
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