058.お風呂場で絶体絶命!?

 僕が夕食の片づけをしていると、メルさんが帰って来た。


 「おかえりなさい、メルさん。あっ、カレーとパンを今、用意しますね」

 「ありがと~~、ルキフェル君♪お風呂の火を付けておいたから、後で入ってね」


 「は~い!」


 そう、このギルドマスターのお家には、なんとお風呂があるんだ!!

 ただ薪で沸かすタイプだから、外から火を起こさないといけない。


 仕事帰りだというのに、メルさんは本当に気が利く女の子だと思う。

 僕と歳が変わらないのに、毎日働いているし。


 (あれ?何か変……)


 僕は気に成りながらも、木のお椀にカレーをよそり、パンをもってテーブルに向かった。


 「メルさん……」

 「なあに?ルキフェル君。まぁ~美味しそうなスープ♪」


 周りに人が居ないから、今がチャンスだ。


 「あの……背中にボタンがありますけれど……」

 「えええーーーー!いやだ~~私ったら……、これで仕事しちゃった♪」


 どういうふうに着たのかは不明だけれど、メルさんの上着は前と後ろが反対だった。

 しかも……いや、これは言わない方がいいかも……


 同じようにミニスカートのボタンも、お尻の方に有るのだけれど。

 真ん中のボタンが一個飛ばされていて、その……ピンク色の布が……


 きっとこの後、お風呂に入るだろうから、そっとしておいてあげようと思う。

 それにしても、何で他の人は教えてあげないのだろうか?


 そして、お皿洗いが終わった僕は、お風呂に向かった。


 脱衣所で脱いだ服をかごに入れて、浴室に繋がる木戸を開ける。


 ガラガラガラ


 むわ~~っと、湯気が中から溢れ出して前が何も見えなくなる。

 そして、少しすると薄っすらと前が見えて来て。


 「「…………」」


 (え~~~!!ど、どうして~~!?)


 泡が付いた金色の長い髪を洗っている女性が、僕に気が付いて固まっている。

 その白い身体をした人は木の椅子に座っていて、背中をこっちに向けているのだけれど……


 「ご、ごめんさい」

 「も~、またルキ君ね~~。ちょっと待っててね。今、泡を流すから~~♪」


 僕は慌てて後ろを向いた。

 脱衣所には女性物の洋服が置いていなかったから、誰も入っていないと思ったんだよね。

 それなのに……


 シャーーーーー


 そして、あのシャワーの音に続いて、


 キュッ


 「もういいわよ。こっちを向いて♪」


 イーリス様の明るい声が聞こえた。

 ゆっくりと振り返ってみると……


 「えっ、えええーーーーー」


 僕は思わず、喚いてしまった。

 だって、女神様が白いバスタオルを巻いて立っていたんだよ?

 オッパ……じゃなくて、胸の上半分が見えたままだし、バスタオルが短いから太ももだって……


 (はぁうぅ……)


 それによく考えたら、僕も裸だった。

 慌ててオチンチンを隠す。


 (って、あれ?)


 僕の腰にも白いタオルが巻かれていた。


 「はぁ~よかった。でも……」

 「ふふっ、これなら一緒に入れるでしょ?」


 (えええ!!!女の人と一緒にお風呂に入って良いのかな~?)


 お母さまとは小学5年生まで、一緒に入っていたけれど……


 僕は悩んだ末に、一緒にお風呂に入る事にした。

 別に僕がエッチだからじゃないからね?


 だから、湯船に浸かった女神様を見ないように後ろを向いて、僕は急いで頭と体を洗った。

 それでも浴室が狭いから、目の隅にチラチラと、その~柔らかそうな……ダメダメ、見ちゃダメ!絶対にダメ!!


 実は女神様に、相談したいことがあるんだ。


 そして女神様に触れないように気を付けながら、僕は同じ湯船に入った……

 出来る限り距離を取ってね。


 ザバ~~~


 溢れ出すお湯が、嫌でも隣にいる大人の女性の事を思い出させる。

 今の女神様は金色の髪をタオルで巻いて上を向きながら、赤い顔をしてお湯を堪能している。


 「あの~~女神様……」

 「ん?なぁ~に、ルキ君♪あっ、オッパイを触ったらダメよ?」


 (…………)


 一瞬で、何も考えられなくなった僕は、綺麗な声に誘われ思わず視線を下に……

 隣にいる女性の胸元に行きそうになる。


 でも、ここでも忍耐スキルが発動した!


 「ち、ち、違いますよ……。あ、あのですね。魔法で魔物にされてしまった人間を、戻すことは出来なかな~っと思って……。もう変な事を言わないでくださいよ……ブツブツブツ」


 僕は顔を真っ赤にしながら、一気に考えていた事を話した。

 そう、アレクシアさんとクラースさんの事だよ。


 長い年月を森の奥で、しかも二人っきりで隠れ住んでいるのは、あまりにも寂しくて、そして悲しい事だと思うんだ。

 だから、何とかならないかな~っと。


 オッパイよりも大切な事だからね!


 「ん~~、出来るかもしれないけれど~~。その人、幾つかしら?」

 「えっ、300歳は超えて……」


 (あっ、そういうことなんだ……)


 反対に質問をされて驚いてしまったけれど、僕は女神様が言おうとしている事を理解した。


 普通、人間は300年も生きられないよね?

 だから人間に戻った瞬間に寿命が来て……、そう、死んでしまうかもしれないんだ。


 それでも、僕には高速思考ファースト・シンキングが有る!


 一瞬のうちに、別の方法を考え導き出した。


 「そっか~、残念だけれど……」

 「分りました。それでしたら、女の子の吸血鬼バンパイアに、女神の美肌デア・ビューティフル・スキンを付与してもらえますか?」


 そう、アビルノの僕でも、お日様の下を歩けるんだ。

 きっと吸血鬼でも、出歩けるようになるよね?

 そうすれば、みんなと外で遊べるようになるはず!


 見た目は二人供、人間と変わらないからね。


 自分でも良く考え付いたと思う。


 「ああ~~、私は女神だから、殿方にしか使えないのよね~~」

 「えっ、そいう物なのですか……」


 女神様だからって、男性にしか魔法を掛けられないとは考えにくかった。

 だって、お母さまの髪の毛の色をピンクにしてたよね?


 「女はいつでも~ミステリアス~なのよ~♪でも~、代わりに、チュ」

 「アッ……」


 思わず僕は、女の子みたいな声を上げてしまった。

 だって、いきなりホッペタにチュ―されたんだよ?


 <こ、こほん。んっ、ん。技能スキル天使魔法エンジェル・マジックを取得しました>


 なんだか、いつもは冷静な天の声さんも、照れているみたい。


 「えっ、天使魔法って?!」


 僕が驚き、女神様に質問をしたところで、


 ガラガラガラ


 何と、別の人が入って来た。

 背は僕と同じぐらいで、細身の……


 「…………キャーーーー、ルキフェル君!!!」

 「えっ、え、えええーーーーーーーーー!!!」


 (何でメルさんが、しかも裸で…………)


 ドタドタドタ


 メルさんの悲鳴を聞き付けて、大勢の女性達がやって来た。


 「どうしたの、メルちゃん!」

 「ルルルルル、ルキ殿、貴方という人は……」

 「ル、ル、ル、ルキ様……、私という婚約者がいるというのに……なぜ……どうして……」

 「アキラ君……」

 「ルキお兄ちゃん……メ!」


 (あっ、これは……)

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