059.女神様と大人のレッスン?!

 という事で、僕は今、リビングで正座している。

 勿論、服に着替えた後でね。


 板張りの床で正座をすると、とても痛いよね……

 直ぐに足がジンジンと痺れてくるし。


 「お兄ちゃん。女の人の裸を見てはダメでちゅよ!」

 「は、はい……ごめんなさい」


 今日は珍しくメーテちゃんが、ほっぺたを膨らませて僕を怒っている。

 でも、目は笑っているから、もしかしたら、みんなの代わりに怒っている振りをしてくれているのかも?


 「そうですよ。これからは、ドアに掛かっている看板を入浴中にしてから入ってください」

 「はい……そうします」


 (はぁう、美月さんにまで怒られてしまった……)


 でも、僕が脱衣所のドアを開けた時には、そのような看板は無かったような……


 (あっ、女神様……)


 実は真っ裸まっぱだかのメルさんが浴室に入って来た時、女神様は姿を消していたんだよね。

 だから今、僕が怒られているのは、メルさんの裸を見てしまった件についてで……


 あれ?もしも、これで女神様と混浴していたことまで知られていたら……ひぃ~~~怖すぎる。


 って、メルさんも、僕が脱いだ洋服に気が付かなかったのかな?

 汚れ物を入れるカゴに入れておいたのに……


 それにお風呂に入るように進めたのも、メルさんだし……


 「まぁまぁ、みなさん。私はもう平気ですから~」


 パジャマに着替えたメルさんが部屋に入って来て、みんなをなだめてくれている。

 どうやら、お風呂が終わったみたい。


 (って、うわ!また……メルさん、それはメーテちゃんのパジャマだよ)


 丈が短すぎて、オヘソとパンツの上の部分が……


 だめだめ、今はそれを教えてあげる時じゃない。

 僕は同じ失敗をしない男だからね!


 (きっと……)


 お風呂に入って来た時のメルさんの悲鳴はもの凄かったけれど、今は笑顔になっているから、どうやら許してくれたみたい。

 でも、きっと恥ずかしかったよね……


 「メルさん。本当にごめんなさい。僕、何でもしますから」

 「うんうん。しょ~がないな~~。それじゃ~、私とも婚約してもらおうかな~♪」


 冗談ぽく言っているけれど、メルさんの目が本気だ。


 「ほへぇ?」


 僕は家のお掃除とか皿洗いとか、冒険者ギルドの依頼の話しをしたつもりなのだけれど……


 キラキラとした笑顔で、メルさんに凄い事を頼まれてしまった。

 どうやら僕は、メルさんとも婚約をすることになったみたいです。


 という事は、あの強面のギルドマスターが、僕のお兄さんに……


 「もう、ルキ君たら。お姉さん、やきもち焼いちゃうぞ♪」

 「ル、ルキ殿。いくら何でも、その歳で4人目はまだ早いのでは……」


 マリア王女様は、何故か嬉しそうにしているし。

 あっ、やはり3人目は師匠なのですね……


 「私が一番最初なんだから~~」

 「いや、アメリアさん。皆さんの前ですから……」


 前じゃなくても、困るけれどね……


 「キュピーーーーー!!!」

 「えっ、ライル君まで?!」


 アメリアさんだけでなく、ライル君までが僕に抱き着いて来た。

 足が痺れているから、勢いに負けて床に転がってしまう。


 ムギュ~~


 (あっ、掴んじゃった……)


 何をかって?

 それは……引きはがそうとしたアメリアさんの……をパジャマの上から


 「ア、アキラ君……不潔です……」

 (み、みづきさーーーん!誤解ですから~~~)


 僕の心の叫びも空しくむなしく、憧れの人は2階へと駆け上がってしまった。


 気まずい空気の中、僕は自分の部屋に戻りドアにスライド式の鍵をかけてから、ベッドにダイブして横になった。


 「はぁ~、僕はどうすればよかったのかな~」


 一緒に部屋に入って来たライル君を、両手で持ち上げて考える。


 「キュピー……」


 どうやら、ライル君にも分からないみたい。


 「青春よね~~♪」

 「うわぁ、イ、イーリス様……。なんでここに……」


 しかも、同じベッドに横になっているし……いつの間に……


 「私のルキ君を慰めてあげようかな~って♡」


 女神様が、僕の顔を覗き込んで来たのだけれど、


 「な、な、なんですか!?その恰好は…………」


 目に飛び込ん出来たのは、スケスケのネグリジェと、その下に透けて見えるのはブ、ブ、ブラジャーだった……

 しかも、ポヨヨ~ンって、縦に揺れているし。


 「ほら、大きな声を出すと、みんなが来ちゃうわよ?」


 女神様の人差し指が、僕の唇を塞ぐと、なぜか声が出なくなった。

 更に、あまりにも美しすぎる顔が、ゆっくりと接近してきて……


 (あっ、ダメだ。このままでは、キスをされてしまう)


 『め、女神様ですよね?ドアに有った看板を隠したのは……』


 でも、今の僕にはテレパシーがある!

 だから、急いで話を逸らすことにしたんだ。


 『あら、もうテレパシーを覚えたのね♪優秀~~♡』

 『うわぁ、あ、当たってますよ……』


 それなのに、女神様のオッパ、じゃなくて、大きな胸が僕の胸に押し付けられた。

 柔らかな感触が広がって行く。


 『あっ、ごめんなさい♪ルキ君が私と話しをしたそうに、し・て・た・か・ら♡ふぅ~~~』


 女神様が掌に乗った花ビラを、息で吹き飛ばした。

 僕の顔を温かくて、ほんのりと甘い香りがする風が包みこむ。


 しっかりとしなければいけないと思うのに、どうしてもボ~~っとして、うっとりとしてしまう。


 <特殊効果オプション女神の瞳デア・アイリスが付与されました>


 (え?そういう事ですか?)


 そして僕の手を柔らかな手が持ち上げて、プルルンっとした赤い唇が、


 「チュ」


 <特殊効果、女神の美肌デア・ビューティフル・スキンが付与されました>


 (はぁ~よかった。特殊効果が切れかかっていたのですね……)


 『こうやって、優しく掛けてあげるのよ。イイ?』


 女神様の濡れた瞳に見つめられ、吸い込まれそうになって、僕の頭がボ~~っとなっている。


 (これが夢見心地というのかな?)


 僕の手が勝手の持ちあがって、女神様の背中に……

 それでも、僕は何とか気力を振り絞って返事をした。

 このままでは、大変なことになってしまう気がして。


 『は、はい。でも何で色っぽく……』


 きっと、こうやってアメリアさんに、特殊効果を付与すればいいという事を、女神様が教えてくれているのだと思う。

 でも、このまま抱き付いてしまったら……


 ドンドンドン


 「アキラ君。大丈夫?!」

 「はっ」


 ドアを叩く美月さんの真剣な声が聞こえた瞬間に、僕は夢から覚めた。


 だって、もうそこには、女神様の美しい姿がなかったから……


 でも、部屋を包み込む花の香りは、いつもよりも濃くて。

 大人の女性が覆いおおいかぶさっていた温もりと、あの柔らかな感触が、今もハッキリと残っている。


 (はぁう)

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