047.ドロップ品 ギルマスの秘密?!
「うわぁ~~、何か刺さっている」
マンティコアが倒れていたところには、大きなクレータが出来ていて。
その中央には真紅の巨大な魔石と、巨大な武器が突き刺さっていた。
剣と槍が組み合わさったような、見たことがない武器。
1mを超える金色の
しかも刃の幅は50cmぐらいかな?
柄だけでなく全体的にマンティコアのタテガミと同じ金色が使われていて。
刀身は牙と同じ乳白色で、波打つ刃の部分が、サソリの尻尾から生えていた毒針と同じ色をしていてる。
なんとも禍々しい武器だった。
「こりゃ~ドラゴン・ランスじゃねーか?」
「ドラゴン?ランスですか?」
どうやらギルドマスターだけは、その正体を知っているみたい。
ルキフェルは、自分の背よりも大きなドラゴン・ランスを、軽々と地面から抜き取る事に成功した。
今の彼は筋力も3倍に成っている。
しかもレベルは30越えだ。
ただそれは武器と呼ぶには、あまりに無骨で、そして暴力的なフォルムをしていた。
あのマンティコアさえも、これで叩けば一撃で殺せるかもしれない。
しかし、普通の魔物相手に使うには大袈裟すぎる武器といえる。
「姫様、どうしましょうか?」
どこまでも無欲な少年は、パーティーのリーダーである王女に尋ねた。
魔石と武器以外にも、巨大なライオンの毛皮や、象牙のように大きな牙、さらには蝙蝠の羽根までがドロップしている。
「もちろん、全部、ルキ君の物よ。それよりも兵士達を治してもらえるかしら?」
マンティコアとの戦闘に集中するあまり、彼は周りが見えなくなっていた。
しかも絶望的な戦いに勝利したことで、今は気分が高揚している。
ただ、マリア王女が言う通り、今は重傷を負った兵士の治療が最優先だった。
「あっ、すみません。直ぐに!ラージ・サンクチュアリ」
ルキフェルは右手を空に向かってあげると、急いで
敵を消滅させるために使い果たしたはずのMPは、レベルアップにより全快回復している。
しかもレベルが上がり効果範囲が広がったことで、巨大な魔法陣がすっぽりと敷地を包み込んだ。
キラキラと輝きながら舞い落ちる金色の羽根が、地面に横たわている兵士達に舞い落ちる。
そして、その内の一枚が、怪しく輝く巨大な魔石へも舞い降りた。
ピィカッーーーーー!
まばゆい光に包まれ、ルキフェル一行は何も見えなくった。
そして光が収まると、そこには小首をかしげた子犬が立っていた。
「クゥ~~?」
金色のフサフサとしたタテガミ、背中からは小さな蝙蝠の羽根が生え、尻尾はサソリの形。
「まぁ、可愛い……モフモフしてる~~」
ぬいぐるみ好きの王女が、謎の生物に駆け寄り抱き上げて頬ずりしている。
「あれ~って……マンティコアですよね?」
「お、おう。多分な……」
先ほどまで死闘を繰り広げていたルキフェルは青ざめ、さしものギルドマスターまでが引いている。
超回復を持っていたマンティコアは、神聖魔法の効果でベビー・マンティコア(LV1)として生まれ変わったのだった。
因みにLVだけでなく記憶も失っているため、敵の情報を聞き出すことは出来ない。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
残務処理をギルドマスターに丸投げした一行は、馬車に乗って街に帰還した。
馬車の音を聞きつけて、冒険者ギルドから4人の少女が元気よく飛び出してくる。
「ルキお兄ちゃ~~ん。お帰りでシュ~~」
「うわぁ、メーテちゃん。ただいま……」
馬車から降りた僕は、胸に飛び込んで来た、メーテちゃんの小さな体を受けとめた。
本当は嬉しいのだけれど、セレーネーさんとアメリアさんの前では、デレデレしてはいけない!
これ大事。
「大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」
「う、うん。もう治したけれど……」
セレーネーさんこと美月さんに言われて気が付いたのだけれど、僕が着ているフルプレート・アーマーはボロボロだった。
盾を装備していた左側は原型をとどめているけれど、右側は鎧の下に着ていた洋服までが溶けてしまっている。
もう使えそうもない……
「本当にも~心配してたんだからね!!でも良かった……無事で……」
「あれ?……何で知っているの?」
どうも、アメリアさんが涙目になっているところを見ると、僕がマンティコアと戦ったことを知っているみたいだった。
しかも、みんなの前だというのに、控えめに抱き付いて来ているし。
(何でだろう?)
「ちゃ~んと、お兄ちゃんから連絡が来てるわよ」
冒険者ギルドで受付嬢をしているメルさんの手に、見たことが無い魔道具が握られていた。
もしかしたら、魔法の携帯電話なのかもしれない。
「そうなんですか……。実はマンティコアに襲われてしまいまして……」
「ほらほら、立ち話も何だからマスターの家に行くわよ」
そう、僕達は今日からギルドマスターの家に住むことに成っている。
領主代行になったギルドマスターが留守の間だけだけれどね。
「はい。お兄ちゃんから聞いてますよ~。メルがご案内しま~~す」
そしてメルさんとも、一緒に暮らすことに成るのだった。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
ギルドマスターの家は、冒険者ギルドのすぐそばに建っている。
木造だけれど、3階建ての立派な家だ。
1階にはリビングとキッチン、それにお風呂までがある。
2階には客間が3部屋も有って、その内の2つを姫様とサクラさん、それとセレーネさんとアメリアさんのそれぞれが使う。
3階にはギルドマスターの部屋と、メルさんの部屋がある。
一番小さなメーテちゃんは、メルさんと一緒に寝るらしい。
「それじゃ~ルキフェル君は、お兄ちゃんのお部屋を使ってね」
「はい!」
(もしかしたら、魔獣とか飼っていないよね?)
ゴクリ……
ちょっと怖かったけれど、僕はギルドマスターの部屋のドアを開けた。
「えっ…………」
蜘蛛の巣がはったお化け屋敷みたいな部屋を想像していたのだけれど、床はピカピカに磨き上げられていてチリ一つなく。
しかも、テーブルや机、棚にまでお花が飾ってある。
開け放たれている窓から、甘い香りと共に風が舞い込んできた。
『うわぁ~男の子だ~~』
『あっ、カーバンクルまで居る~~』
「キュルキュル~~」
いつの間にか僕の肩に乗っていたカーバンクルのライル君が、僕より先に部屋の中に飛び込んでいく。
嬉しそうに鳴いているところを見ると気に入ってくれたみたい。
しかも花の妖精さんかな?
黄色い光がフワフワと飛んでいる。
「みんな。よろしく。僕はルキフェル」
『ルキフェル?』
『ふふ、女の子みたいな顔してる~~』
僕の周りをライル君と一緒になって、小さな妖精たちが飛んでいる。
「どう?驚いたでしょ?」
「うわぁ~お花畑みたいでしゅ……」
後ろから、メルさんが話しかけて来た。
それに隣に居るメーテちゃんも、僕と同じ感想みたい。
「うん。ここ、本当にギルドマスターの部屋なんですよね?」
どちらかというと、女の子の部屋のようだ。
あの厳つい顔からは、まったく想像が出来ない。
「ふふふ、実はお兄ちゃん。お花が大好きなのよ。街にある花壇もお兄ちゃんが面倒を見ているのよ?」
そう、この街の要所には、花壇が設置されていて。
色とりどりの花が咲き乱れ、とても心を和ませてくれる。
僕がこの街の事が好きになったのは、そのおかげかもしれない。
「えええ~~!そうなのですか……。あっ、じゃ~明日からは、僕が花壇の面倒をみますね!」
実は僕もお花が大好きだ。
学校では園芸クラブに入っていたぐらいに。
王女様の話しでは、今頃ギルドマスターは大忙しらしい。
村の復興とか、兵士の再教育とかとかとか。
(僕は子供で、本当に良かった~)
そしてその日の夜は豪華な料理を囲んで、僕と王女様が話すマンティコアとの戦いで盛り上がるのだった。
そう言えば、あのネズミ顔をした元領主はどうなったのかな~~?
==========================================
『1部.冒険のはじまり~マンティコア討伐編』は、ここまでとなります。
楽しんでいただけたでしょうか?
もしも、ルキフェルを早くお母さまに会わせたあげてーー!とか、
美月ちゃんとの恋の行方は~~?とか、
今日のメルちゃんのパンツの柄は~?とか、
気になった方は、是非とも★や♡での応援をお願いします。
勿論、感想やレビューもお待ちしております。
また、ここからは書き溜まったら投稿するという、不定期連載になりますので、ブックマークもお忘れなく♪
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます