042.ルキ 王子様になる?!
「ふぁあ~~あっ、よく寝た」
「ふふふ、ルキ君も隅に置けないわね~~」
(ギクッ……)
寝起きだというのに、僕の背中に嫌な汗が伝っていく。
何故か隣のベットに、旅の占い師こと女神イーリスが寝ていた。
「そんなに幼い子と……。まぁどうしましょう。私、口が軽いから~~」
どうやら、僕の隣で寝ているメーテちゃんの事を言っているみたい。
昨日、美月さんを怒らせたばかりだというのに……
「そ、それだけは止めてください。僕は何もしてないのですから……。それで要求は何ですか?」
女神さまの芝居がかった口調から、本気では無い事は分かっている。
ただ、油断は禁物だった。
「あら、別にそんなつもりで言ったのではないけれど。でも、そうね~~パンケーキのクリーム乗せでも、ご馳走してもらおうかしら?」
「そういう事ですか。でしたらお姫様から、金貨4枚を預かっていますよ」
察しの良いマリア王女様から、僕は占い師さんの分として報酬を預かっている。
「あらあら、私の分はいらないのに……どうしましょう……」
どうやら、女神さまは地上に干渉してはいけないから、お金を使ってはいけないみたい。
「また無銭飲食をされては、困るからだと思いますよ。はい」
そもそもご飯を食べなければいいと思うんだよね。女神様なのだから。
それに僕達を見守るにしても、姿だって消せるだろうし。
「あっ、あと僕たちは黒曜石クラスに成ったので、これを着けてください」
「あら随分と不機嫌ね?もしかしてお姉さんと一緒に寝たいのかな~?」
女神様が流し目を使っているけれど、気にしない。
だって女神様は本当に綺麗過ぎて、なんだか女性として見る事が出来ないんだよね。
それに、僕の事をからかっているだけだし……
「それと鑑定阻害のネックレスも預かっていますけれど、どうしますか?」
「もちろん、貰うわよ。あ~今日は何を食べようかしら~~」
それに女神様だったら、人間から気が付かれらにようにするくらい簡単だと思うんだよね。
そもそも、今見えているステータスだって偽物だし……
「はぁ~、じゃ~僕は顔を洗ってきますね」
朝からどっと疲れた僕は、メーテちゃんを起こさないようにしながらベットを降りると、そのまま部屋を出た。
そう言えば、僕はこの世界に来てから、一度もお風呂に入っていないんだけど。
まったく体が臭くなっていなし、
自分の臭いは気が付かないものと聞いたこともあるけれど、多分、匂っていない。
だって、洋服から臭いがしないんだもん。
もしかしたらこれも、
井戸水で顔を洗ってから、アメリアさんに買ってもらった白い服に着替える。
こういう時に、魔法のカバンって便利だよね。
いちいち、タンスに取りに行く必要がないから。
それに服装が違うだけだというのに、なんだか新鮮な気分になれる。
ちょうどそこへサクラ師匠がやって来た。
「あっ、おはようございます。師匠」
「なかなか似合ってるでは無いか……。ルキ殿……。でも手加減はしないからな」
照れ臭そうに師匠が褒めてくれた。
なんだか今日はいい事が有りそうだ。
「はい。よろしくお願いします」
僕は一瞬で鎧を着込むと、そのままロングソードを構えた。
「今日は回避の練習をする。ここでは狭いから練習場に行くとしよう」
その瞬間、僕は嫌な気がしたのだけれど、想像以上にハードな訓練だった。
僕は攻撃をしてはダメで、ひたすら師匠が振る剣を避け続けるんだ。
師匠が修めている青龍派では、攻撃よりも回避が重要だと教えている。
ようは攻撃が当たらなければ、何時かは勝てるという事らしい。
それなのに、盾を使わない所が謎なのだけれどね。
もちろん、僕は弱いから盾も使うよ。
師匠の流れるような動作から繰り出される攻撃には切れ目が無い。
1、2回躱せたぐらいでは終わらない。
だから休憩できなくて、直ぐに疲れちゃう。
僕は重い金属鎧を着てるのだから当たり前だよね。
そして、一度でも態勢を崩してしまうと、次から次へと飛んでくる攻撃を、地面を転がって避けるしかなくなる。
当然、買って貰ったばかりの白い服が、泥だらけになってしまう。
(はぁ~後で
それでも僕はスキルの助けも有って、最後には立ったまま師匠の攻撃を躱すことが出来るまでに上達した。
師匠みたいに体だけで躱すのには限界があるけれど、盾も使えば何とかなると思う。
もしかしたらだけれど、師匠は手加減してるかもしれない。
「はぁ、はぁ、ありがとうございました」
「うむ。回避に専念すれば普通の攻撃なら躱せるでしょう。明日は攻撃の練習に移ります」
そして明日は、いよいよ攻撃を教えてもらえるらしい。
もしかしたら3日で卒業できるのかな?
なぁ~んてね。(テヘ)
「頑張ってるわねって……泥だらけじゃない。サクラ。午後の事は伝えてないの?」
「はっ、つい熱が入ってしまいまして……も、も、申し訳ありません」
実は最後の方には、サクラも本気で攻撃を繰り出していた。
しかしそれすらも、急成長を遂げたルキフェルは、ギリギリであるにせよ躱していたのだった。
「はぁ~剣以外の事にも、もう少し気を配ってくれるといいのだけど……」
姫様が練習場に顔を出したのだけれど、どうやら僕に用があるみたい。
「どうかしたんですか?姫様」
「実はルキ君に一緒に行ってもらいたいところがあって」
「ぼ、僕とですか?!」
「そうよ。部屋に洋服を置いておいたから、体を洗ってからそれに着替えてね」
(も、もしかして今日もデートですか???)
昨日はアメリアさんと美月さんの二人とお買い物をしたのだけれど。
今日はお母さまにそっくりな、マリア王女様とお出かけをすることになった。
僕は急いでお昼ご飯を食べると、大きな桶を持って部屋に戻った。
中にはお湯が入ってるから結構重い。
そう言えば、朝ご飯を食べていなかったかも……
筋力作りにはちょうどいいのだけれど、どうせなら創造魔法でシャワーを出せばよかったかなと。
ちょっぴり、いや、かなり後悔している。
でも、MPは大事だからという事で、今のうちに満タンになったMPを左手に移動しておく。
両手にMPが溜まっている状態は、初めてかも知れない。
僕は念入りに体を洗うと、ベットの上を見た。
そこには、鮮やかな色をした青い服が置かれている。
「格好いい……」
広げてみたのだけれど、まさに騎士が着る服って感じだった。
騎士服と言うのかな?銀色の飾りが付いていて、とってもお洒落。
お洒落過ぎて、貴族にしか見えないかもしれない。
しかも僕の体にジャストフィット。
「ルキ君。どう?着替えた?」
ノックもせずに姫様が入って来た。
「うわっ、ひ、姫様?!」
女の人が突然入って来た事にも驚いたのだけれど、それよりもマリア王女様の姿に驚いた。
ピンク色の髪は綺麗に結い上げられて、金糸やパールが使われた髪飾りを付けている。
ドレスは髪の気よりも薄いピンク色をしていて、まさに舞踏会で着るのような華やかな物なのだけれど……胸が……
そう、お母様よりも大きなオッパイがとっても強調されていて、目のやりどころに困る。
「あら、似合うじゃない」
「あっ、はい。とても高そうですけれど……」
時間も忘れて、僕はマリア王女様、本来の姿に見惚れていた。
普段も綺麗なのだけれど、まるで別人のように美しい。
それにお母さまの面影が重なって……
「気にしないで。私からのプレゼントだから」
「えっ、こんなに高価な物をいただいてもよろしいのでしょうか?」
「いいの、いいの。それよりも、その上から鎧を着てちょうだいね」
「は、はい……」
よく見ると、このお洒落な騎士服は、
厚手の生地で出来ていて、薄っすらと綿が入っている。
「サクラ。手伝ってあげなさい」
「はっ!」
別人のようになった姫様に驚き過ぎて気が付かなったけれど、サクラ師匠も着替えていた。
こちらは、どちらかというと男性のような紺色の服を着ている。
着物と洋服が混ざったような、まさに剣士といった感じ。
僕は師匠に手伝ってもらって、フルプレート・アーマーを装備した。
しかも騎士服が擦れて傷つかないようにと、革製のカバーを鎧の下に着ている。
このカバーは良くて出来ていて、機能性だけでなくデザインも格好いい。
(あっ、洋服の上に、このカバーを着るだけでもいいかも)
さすがに普段から、この騎士服を着る気にはならないけれど。
この革製のカバーさえ有れば、洋服の上から鎧を着ても問題はなさそうだ。
洋服の上から、モコモコした
「これでよしと」
最後に姫様が、空色のマントを肩から掛けてくれた。
「なかなか立派ですよ。ルキフェル殿」
「そうよね。どこからどう見ても立派な騎士にしか見えないわ」
「そうですか?何だか照れ臭いです……」
「あっ、そうだ。ルキ君、悪いけど。これを預かってもれらえるかしら?大事な物だから無くさないでね」
手渡されたのは、姫様のトレードマークの羊のぬいぐるみだった。
「いいですよ。このベルトには沢山入るみたいですから」
よく見ると立派な角と、羽根までが生えている。
(これって魔物なのかな~?)
気が付くと、僕の部屋にみんなが集まっていた。
「まぁ~ルキ様。素敵ですわ~~」
「ルキお兄ちゃん。カッコいいでしゅ!」
「ほんと……王子様みたい」
しかも憧れの美月さんまでが、頬を赤くして僕に見とれている。
ちょっと、いや、かなり嬉しいかも……
「えっえぇぇ、みんな褒めすぎだよ……」
(嬉しいけれど、照れるな~~~♪)
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