030.大脱出 人間梯子は危険が一杯!?

 僕たち6人は、大型魔獣討伐用の落とし穴から脱出を試みる事になった。

 しかも人間梯子を作って……


 「それじゃ~、ルキ君。頑張ってね」

 「は、はい……」


 魔法戦士Xの僕は、この中で一番力が強いから、一番下だ。


 壁際でしゃがんで、目の前にある壁に手を着く。


 そして王女様の太ももが後ろから、僕の肩に乗っかって来た。


 ムニュ~


 スカートがめくれて、とって柔らかい感触が、僕の肩だけでなくて、ほっぺたを挟み込んでくる。


 (本当にこんなことをしても良いのでしょうか……僕……)


 マリア王女様は、お母さまにそっくりだから、母親だと思えば……

 いや、お母さまはとっても若くて美人で優しいから……


 もしも、サクラ師匠にこの場面を見られたらと思うと、恐ろしくてしょうがない。

 きっとプルプルと震えながら、手に持った剣で、ザックリと……


 (ヒィーーー怖すぎる)


 「いいわよ。立ってちょうだい」


 僕は王女様に命じられるまま、立ち上がった。

 レベルが上がって筋力にも補正が掛かっているからか、僕は大人の人を肩車することに成功した。


 しかもまだまだ余裕がある。

 今の僕が騎馬戦をしたら、凄いんだろうな~。


 「あ~~ずるいわよ~~王女様……」

 「あら。だったら私がルキ君に抱き付いて、支えてあげても良いのよ~?」


 そう、アメリアさんの役目は、僕がフラフラと動かないように、横から支えることだ。


 「し、仕方がないんだから……もう~。ルキ様、変な所を触らないでくださいね……」


 真っ赤な顔をしたアメリアさんが、僕に抱き付いて来た。

 そもそも、僕は王女様の足を押さえているから、何も出来ないよ。


 それに……手で押さえるだけで良いのではないでしょうか。


 (アメリアさーーーん、胸を押し付けて来ないで~~)


 しかも彼女の甘い吐息が耳に掛かって来て、くすぐったいというか、変な気分に……


 そんなことを考えているうちに、美月さんが僕の肩を掴んで来た。

 次に上に乗るのは彼女の番だった。


 「ルキ君。上を見ないでくださいね……」

 「えっ、は、はい……」


 クラスのアイドルだった彼女は、質素なローブしか身に着けていない。

 しかも腰ひもが無い状態でだ。

 何しろ、水浴びをする時に着る白い服しか、持ってこれなかったのだから。


 それに多分、下着も……


 そんな美月さんの足が、剣を下げている皮ベルトに掛かった。


 「あっ……」

 「…………」


 僕は思わず声を出してしまった。

 一瞬だけ僕の背中に、彼女の膨らみが当たったんだ。


 微かに感じた柔らかくも張りのある感触に、僕の頭の中が真っ赤になる。


 「もう~ルキ様ったら。私という婚約者が居ながら」


 ムギュ~~


 「い、いや。だからあんまり、くっ付くと……」


 これ以上は危険だった。

 僕だって男の子なんだよ……


 <忍耐が発動しました>


 良く判らないけれど、僕は危機を乗り越えたみたい。


 そんなことをしているうちに、美月さんがよじ登って、王女様の肩の上に立ち上がった。

 いや、わざと見たのではないよ?。


 大丈夫かな~~って、心配して上に意識を持って行ったら、千里眼が……

 色々見えてしまったけれど、頑張って頭の中から消去している。


 「ルキフェル君。もう少し頑張ってね~~」


 <上級応援ハイ・エールの効果が発動しました>


 さすがにプラス30%は凄かった。

 フラフラとし始めた体が安定し。

 精神力も強化されて、雑念が消えていく。


 (あっ、メルさんも意外に胸が……)


 どうやら雑念が消えたのは、気のせいでした。


 ただ、メルさんの動きは凄かった。

 ミニスカートをひらひらとさせながら、ほっそりとした足で、ヒョイヒョイとよじ登って行く。

 まるでお猿さんみたいに。


 (ああ、今日はアヒルさんなんだね)


 そして美月さんの肩に乗ったと思た瞬間に、軽くジャンプして穴の淵に手を掛けて、そのまま外に出てしまった。


 「えええ!!」


 まさに軽業だった。


 空中で一回転した時に、靴の踵の部分がパンツが引っかかって、ズレてしまったけれど、言わないであげようと思う。


 そして近くの木にロープを括り付けた彼女が戻って来た。

 慌ててパンツを上げているところが、何とも彼女らしい。


 ただロープを結ぶ手際の良さから、只者じゃない事が分かる。

 もしかしたら、人間梯子を作らなくっても、彼女なら外に出られたのかもしれない。


 「はい。いいですよ~。まずは美月さんから、昇ってきてくださ~い」


 何時もの緊張感の無い声が、上から降って来た。


 「は、はい」


 それに緊張した澄んだ声で応え。

 ロープを手で掴んで、壁に足を掛けている美月さんの姿が千里眼で見える。

 足を大きく開いたせいで、ローブが持ち上がり……


 (あっ、まずい)


 見てはいけないところを、もう一度、思いっきり見てしまった。

 しかも明るかったから……


 僕は慌てて下を向いて、無心になる。


 本当に千里眼は危険だと思う瞬間だった。


 街に戻ったら、美月さんには色々と買ってあげたいと思う、12歳の昼下がりです。


 そして次々とロープを伝って、仲間が地上に上がって行く。


 「ルキ君。ごめんね。先に行くわ……」

 「は、はい。どうぞ……」


 ようやく王女様の太ももが、僕から離れて行く。


 (この温もりを、僕は一生忘れないと思う)


 いや、何言ってるのだろう僕……

 体が軽くなった僕は、目の前に揺れているロープを掴んだ。


 「キャッ」


 王女様の悲鳴に思わず上を向いてしまう。

 どうやら、足を滑らせてしまったみたい。


 (あっ、また見ちゃった……)


 今日は淡いピンク色でした。


 「あっ、ダメよ。ルキ様!も~~私のは見ないでくださいね……」


 僕の目を手で塞いでいるアメリアさんの声が後ろから聞こえる。

 なんだか恥ずかしそうにしているけれど、何かを期待しているように聞こえるのは僕だけだろうか。


 「いいわよ~。アメリアちゃ~ん」

 「はぁ~~、登るからね。絶対に、ぜーーーったいに上を見ないでよね……。あっ、でも落ちてきたら受け止めてよね……」


 (ええっ、見ていたら出来るかもしれないけれど……、僕はどうしたらいいの~?)


 ただ、アメリアさんもレベルが上がったからか、意外なほどスムーズに昇って行く。

 いや、落ちて来たら危ないから、チラチラと見ているだけだよ。


 だから、彼女の色は教えてあげない。


 「ああ~~見たでしょ~!!」

 「えっ、ちょっとだけだよ……ごめんなさい……」


 「あの~ルキお兄ちゃん……」


 そう、下に残っているのは僕と、メーテちゃんの二人だけになった。

 あとカーバンクル君の卵が入っているリュック。


 という事で、レベルが上がって力持ちに成った僕が、メーテちゃんを背負い。

 そのメーテちゃんがカーバンクル君を背負うという事になった。


 どうやら、8歳の子供をオンブする分には、アメリアさんは怒らないみたい。

 僕は緊張してるのだけれどね。


 それでもレベルとエールのおかげで、驚くほど簡単にロープを登る事が出来ている。

 メーテちゃんが軽いからかもしれないけどね。


 それにしても、どうして女の子の身体って柔らかいのだろう……


 「ふ~~無事に登る事が出来ました」

 「ありがとう。お兄ちゃん」


 メーテちゃんが、お礼と一緒にカーバンクル君を返してくれた。


 「いえ、どういたしまして」


 メーテちゃんの頭をナデナデしていると、本当の妹みたいに思えてくる。


 「もうルキ様ったら……私も頑張ったのに」

 「はいはい。ヨシヨシ」


 「全員、無事なようね。ルキ君も頑張ったわ」

 「はい。お姫様」


 今度は、僕がマリア王女様に頭を撫でてもらえた。

 なんだか、お母さまに褒めてもらえたみたいで、懐かしく思う。


 「みなさん。凄いですね……。あの~……改めてよろしくお願いします」


 美月さんが改まって、頭を下げている。

 彼女が何に感動しているのか、僕には分からないけれど、仲間が増えたことを嬉しく思う。


 という事で、僕達は大量のキノコと、狼のお肉と毛皮を持って、村に帰る事になった。

 犬が好きな僕としては、狼のお肉を食べたくないのだけれど、村で食べたお肉って何のお肉だったのだろう……

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