018.ボーナスステージ?!


 僕たちの前に現れたのは、2体の巨大なオークだった。


 どれぐらい巨大かと言うと、背の高さは家の屋根より高くて5mぐらいで。

 さっき倒した普通のオークが2mぐらいだから、身長が倍以上もある。

 しかも皮膚の色が緑ではなくて、金色と銀色をしていてピカピカ輝いている。


 どうして金属で出来ている体が動くのかと不思議でならない。

 それに金属だから、きっと重いよね?

 地面に足跡がくっきりと残っているから、相当な重さだと思う。

 10トンぐらいかな?

 まったく、想像がつかないけれど。


 「これは凄い幸運ですわ」

 「ふふん、ラッキーカラーの効果ね」


 目を輝かせて喜んでいるマリア王女の横で、占い師が踏ん反り返っている。


 (えっ、何がいいのだろう?)


 確かに僕の腕に巻かれた布と、同じ色をしているけれど……

 どう見ても普通のオークより強い敵が出現したというのに、二人供喜んでいる。


 「噂には聞いてましたが、この目で見るのは初めてです」


 歴戦の剣士である師匠が初めてという魔物の正体は!?


 「両方とも激レアモンスターよ!金色をしているのがゴールドモンスターで、銀色をしているのがシルバーモンスターよ!!」

 「…………それは見れば分かるような~~ははは~~」


 メルさんがとて詳しそうに説明してくれたけれど、見たまんまで良く分かない……というか全く分からない!!


 少年が困っているようなので、私が説明しよう!


 金色をしているゴールドモンスターを倒すと沢山の金銀財宝をドロップし、銀色のシルバーモンスターを倒すと大量の経験値をゲットすることが出来るのだ~~!!

 まさにそれが同時に現れるなど、ボーナスステージと呼ばずになんと言う!!

 ただしどちらも癖のあるモンスターなので、倒すのは困難だぞ~~。

 諸君の健闘を祈る!


 (あの~~たびたび出て来てますが、どちら様ですか?)


 ではまた来週~~!


 (あっ、逃げた……)


 ということで気分を取り直して。

 僕たちは今、有名なRPGに出てきそうなモンスターと対峙している。

 まぁ、説明を聞かなくても、何となく想像は付いていたけれどね。

 お菓子の当たり券じゃなくて良かったよ。


 取り敢えず、この2体を倒すことが出来れば、生活だけでなく、冒険も楽になると言う事らしい。


 「噂ではゴールドモンスターは体力が異常に高く、シルバーモンスターは防御力が高すぎて殆どダメージが入らないそうです。しかもシルバーには魔法攻撃が無効らしい」


 それもこれも倒せればの話みたい。

 師匠が大事な所をちゃんと捕捉してくれた。

 あの謎のナレーターさんよりも、よっぽど助かる情報だと思う。


 「それじゃー、メーテちゃんとルキ君はゴールドオークを攻撃してね。残りのみんなはシルバーオークに向って、何でもいいから攻撃してちょうだい」


 王女様を疑っているわけではないけれど……


 「えっ、でも王女さま……、敵の攻撃が当たったら、まずいのではないですか?」」

 「ふふふ、あんなに遅い動きなら、私でも避けられるわよ?」


 マリア王女の言う通り、2体の激レアモンスターはカメよりも遅かった。

 家すら踏み潰す力を持っていても、避ける事さえ出来れば問題はない。

 と言う事らしい。


 踏まれたら、おせんべいになりそうだけれどね……


 「ルキお兄ちゃん。やりまちょ~……」

 「うん、そうだね」


 「&$%$#$%…………ファイアー・ボール」


 <ファイアー・ボールを習得しました>


 詠唱の早いメーティスの放った火の玉が、金色の巨体にぶつかって、ド派手に爆発する。


 ボカーーーーン!!


 直撃を受けたゴールド・オークがバランスを崩して、地面にゆっくりと倒れて行く。


 ズスッーーーーン!!!


 ちょうどお腹の部分が大きくへこんでいる。


 「凄いや。僕も負けられない!ラージ・サンダー!!」


 僕もようやく完成したラージ・サンダーをお見舞いした。

 敵が倒れているから外すことはない!


 ピカピカピカ

 バリバリバリーー!!

 ドゴゴゴーーーーーーーン!!!


 強烈な青白い閃光と物凄い衝撃と爆風で、前が見えなくなる。


 「「「「キャーーーー」」」」


 黄色い悲鳴が聞こえて来るけれど、土煙のおかげで何も見えない。


 (ふ~~助かった~~)


 そして煙が晴れると……


 「ええええ~~~~」


 金色の巨大オークが、何事も無かったように立ち上がっていた。


 「ルキお兄ちゃん。金属には雷が効かないでしゅよ?」

 「は、はい。勉強になります。お師匠さま……」


 という事で気分を取り直して、僕は覚えたばかりのファイアー・ボールを放つ。


 「ラージ・ファイアー・ボール!!!」


 ヒュ~~~~

 ドッカカカカーーーーン!!!!

 ボフーーーーー


 (あれ?なんでラージ?)


 自分で言っておいて何だけれど、僕が詠唱するとラージになるみたい。

 そして大魔法に成っている分だけ、火の玉の大きさも威力も桁違いだった。

 あと、レベルアップしたことで、詠唱速度も大分早くなっている。


 「凄いででしゅ……お兄ちゃん……でも、いつ覚えたんでしゅか?」

 「んーーーーさっき?」


 みんなのスカートがヒラヒラして、色とりどりの布が見えてる。

 でもみんなはバラバラになったゴールド・オークに驚いて、スカートを抑えるのを忘れているみたい。

 何気にメルさんのパンツが小さいんだよね……


 そしてキラキラと輝く光となって消えた巨体の後には、金塊とか赤い宝石などが山積みとなり。

 その頂上には、一際大きな金色の魔石が突き刺さっている。


 (本当に金銀財宝なんだ……)


 「わ、私達もルキフェル殿に負けてられないな。いくぞ!」


 師匠が風のように滑らかな動きで、シルバーオークに駆け寄って行く。


 「秘儀!疾風乱れ切り!!」


 師匠の小さな身体が風に乗って、巨人の全身を滅多切りにしている。

 あまりにも早すぎて、何回切ったのかも分からない。


 <必殺技、疾風乱れ切りを習得しました>


 (えええっ、これも覚えちゃっていいのーーー)


 どう見ても師匠の汗と涙の結晶といえる秘儀を、一度見ただけで覚えてしまうのはまずいんじゃなかろうか……


 しかし、それでもシルバー・オークは倒れなかった。

 それどころか銀色の体に薄っすらと線が残っているだけだ。


 「くっ、秘儀をもってしても仕留められないとは……」

 「ようやく私の出番のようね」


 ドスン、ドスン


 前に出たアメリアを威嚇するように、シルバーオークが前に歩き出した。

 それなのに、アメリアは余裕の表情で立っている。


 「いっくわよ~~」


 赤い色のツインテールをなびかせて、少女が両手を素早く交差させる。


 シュッ、シュッ、シュッ……


 幾筋もの銀色の細い閃光が銀色の体にぶつかって甲高い音を立てる。


 キン、キン、キン、キン、キン……


 (あれってメスなのかな?)


 そのまま一回転してから、もう一度両手を振って、銀色の閃光を放つ。

 回るたびにプリーツスカートがふわりと開いて綺麗なのだけれど、ちょっと目のやりどころに困る……


 しかしアメリアさんの攻撃は止まらず、次々とメスが放たれ。

 シルバーオークの硬すぎるボディーに小さな傷を付けては、銀色のメスが音を立てて地面に落ちていく。


 「はぁ、はぁ、これで最後よ!」


 スパン、スパン


 そして今度は両手から放たれた、2本の注射器が、シルバー・オークの両目に突き刺さった。


 グオーーーーーーーーー


 ピキピキピキピキ……

 ガラガラガラガラ…………


 ひび割れた巨大な彫像が、轟音と共に崩れ落ちて行く。


 パラララッタラ~~

 <レベルが14に上がりました>

 パラララッタラ~~

 <レベルが15に上がりました>


 (あっ、また始まったよ)


 …………


 パラララッタラ~~

 <レベルが18に上がりました>


 (うわ~~2回戦っただけなのに……)


 ここに来るまではLV1だったというのに、あっという間にLV18に……


 あっ、師匠がこっそりと涙を流しているよ。

 レベルが上がって嬉しいのかな?

 それともアメリアさんに負けて悔しいのかな?


 きっとあれだよね?

 シルバー・モンスターは防御力だけが異常に高いけれど、HPはとても少なくて。

 どんな攻撃でもダメージが1だけ入るみたいなやつ。


 何しろアメリアさんは、一度の攻撃で8本のメスを投げいてたからね~。

 それにしてもあの注射器には何が入っていたのだろう……


 それとアメリアさんんは僕と同じレベル18になって、魔法のお師匠様のメーテちゃんは、なんとレベル23に!

 大分、みんなに追いついて来たけれど、レベルが高くなると上がりにくくなるみたいだ。


 でも、これからは僕でもちゃんと戦えるよね?

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