016.緊急依頼発生!?


 という事で、運命の出会いを果たした僕たちは、冒険者ギルドに戻って来た。

 目ざとく僕を発見した、メルさんが駆け寄って来る。


 「あっ、ルキフェル君。おかえり~」

 「あ、メルさん。ボタンを直したのですね」


 「きゃ、気づいてたのなら、早く言ってよ……」

 「あはは、そうですね。あ、この子も登録をお願いします」

 「あ、メーティスです。よろしくお願いしましゅ」


 この子は僕以上の恥ずかしがり屋さんみたいで、顔を真っ赤にして小さな声を出して頭を下げている。


 名前:メーティス

 年齢:8

 職業:魔法使い

 レベル:20

 スキル:中神秘魔法


 なんと、この子は大賢者の弟子だった。

 何でも卒業試験の旅に出ているらしい。


 そして僕と同じく仲間を探してたのだけれど、子供だからと相手にされなかったそうだ。


 「あら、まだ8歳なの。でもレベルは高いしぃ~……ご両親の許可は有るのかな?」

 「私は捨て子だったので……」


 「あ、ゴメンね。私もだから、一緒に頑張ろうね」

 「はい……よろしくお願いしましゅ」


 やっぱり、あのギルドマスターは、メルさんの実のお兄さんではないのかもしれない。


 「あっ、ルキ君~~どこ行ってたのよ~~。心配したんだから~」


 ムギューー


 まるで一週間以上も離れていた恋人のように、王女様が僕に抱き着いて来た。

 お母さまに似ているからか、それとも胸が小さいからか、意外と恥ずかしくない。


 それにしても、この王女様は大人だというのに、外でもぬいぐるみを抱えている。

 真っ白でカワイイ人形なのだけれど、なんだか不思議な感じがする。


 「あ、マリア王女様。ちょうど良かった。この子も仲間にしてもらえますか?」

 「はじめまして。メーティスでしゅ。あの~お兄ちゃんに危ないところを助けてもらいました。まだまだ未熟者ですが、よろしくお願いしましゅ」


 小さいのにメーティスちゃんは、僕よりもしっかりしていた。


 「あら、ルキ君も隅に置けないわね~~。やるじゃない。どれどれ、まぁ!この年で凄いしゃないの~。しかも可愛いし合格よ」


 (良かった)


 でも可愛い事が関係あるのかな?


 そして僕たち6人は、受付嬢のメルさんの説明を受けて、正式にパーティーとして登録された。


 そう、気が付いた人もいるかもしれないけれど、メーティスちゃん以外にも新しい仲間が1人だけ増えている。

 今も顔が見えないようにとフードを深くかぶり、王女様の後ろに隠れるようにして立っているけれど。


 「ところ王女様。こちらの旅の占い師さんは?」

 「あ~無銭飲食で捕まって、荷物持ちでも何でもするからと言って泣きついて来たのよ~」

 「お~~ほほほ。何を言ってるのかしら?私とルキ君は運命の赤~~い糸で結ばれているのよ~~」


 破れかぶれになった占い師が、フードを外して僕の腕に抱き着いて来た。

 意外と胸があるんだよね……とっても柔らかいし……


 「戯れ言はいいから、早くルキフェル殿から離れろ。まったく。誰がお金を払ってると思っているのだ……」


 と、言うことで冒険者登録を済ませていた女神様も仲間に加わった。


 名前:イレーナ(偽名)

 年齢:秘密

 職業:占い師

 レベル:24

 スキル:占星術


 何んだか中途半端にレベルが高いのですけれど……

 女神さまは、意外と見栄っ張りなのかな?


 因みにパーティー名だけれど、皆のバラバラの意見を最年少のメーティスちゃんがまとめてくれて、”運命の導き”に決まった。

 あとリーダーは僕に成りそうだったけれど、恥ずかしすぎるので一番年上のマリア王女に成ってもらった。

 サクラ師匠も賛成してくれたし良かったと思う。


 そしてこの人数では、流石に診療所に泊まる訳にもいかず……

 今夜の宿代を稼ぐための仕事を探していた僕たちのもとに、緊急の依頼が舞い込んできた。


 「た、助けてれ~……村が、村がオークの群れに襲われてーーー!!」


 依頼人は街はずれにある小さな村から逃げて来た村人だった。

 受付嬢のメルさんが詳しい話を聞いているところに、何食わぬ顔をしてギルドマスターのオジサンがやって来た。

 ご飯を食べたばかりなのか、爪楊枝を咥えている。


 「おう、どうした?騒がしーじゃねーーか?」

 「あっ、お兄ちゃん。丁度良かった。実はこれこれしかじかで困ってるのよ~」


 実は王女様が開いた選抜試験のせいで、他の冒険者が動けなくなってしまい。

 依頼を引き受けることが出来る人が居ないのだ。

 しかも勝ち残った最後の1人までが、師匠にコテンパンにやられてしまったらしい。


 「ふ~ん、そういう事なら、こいつらに責任を取って貰わねーーといけねーーよな~~?」

 「えぇええーーーでも、ルキフェル君達は、今日、冒険者になったばかりよ?」


 メルさんが驚くのも無理はない訳で。

 僕たちはまだ一番階級が低い、大理石マーブルクラスの冒険者だ。

 だから、全員が首から大理石の付いたネックレスを下げている。


 一応、階級の順番を上げておくと、


 大理石マーブル黒曜石オブシディアン瑠璃ラピスラズリ水晶クリスタル→トパーズ→サファイア→ルビー→ダイヤモンド


 となる。

 今回のオーク退治は、普通だったら水晶クリスタル以上の冒険者が受ける難易度らしい。

 一つ下の瑠璃ラピスラズリの場合は、最低でも3パーティーで挑むことになる。


 そして僕たちは断る事が出来ずに、メルさんが操る馬車に乗って、ピンチに陥っている村に向かうのだった。

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