014.冒険者ギルド!!


 鎧一式を武具職人のバイトスさんに預けた僕たちは、師匠の提案で冒険者ギルドにやって来た。

 冒険者ギルドと言えば、綺麗で優しい受付のお姉さんだよね。

 ちょっと楽しみだな~。


 僕の左腰にはバイトスさんに貰った、見た目は地味だけれど凄いロングソード。

 右の腰にはベルトン先生から貰った高価で少し派手な短剣ダガーが下がっている。

 だから少しは冒険者?らしく見えているのかな~なんてね。


 因みに短剣を右腰に付けたのは、とっさの時に右手で素早く握る事が出来るのと。

 右手が怪我した時に、左手でも持てるようにするためだ!

 と、師匠が言っていました。


 「何か用かい?こっちは忙しいんだ。さっさと用件を言いな」


 僕が物珍しさにキョロキョロとしていたら、カウンタの向うから強面こわおもてのオジサンが睨んできたよ……


 しかも上半身は裸で、カウボーイが着ているみたいな革製のベストを直に羽織っている。

 それに、腕とか胸の筋肉が盛り上がっていて凄すぎる。


 怖すぎて、もう帰りたいかも……


 「冒険者登録をしに来たのだけれど~。4人分お願い出来るかしら?」


 一番年上だからか、マリア王女が前に出て話をしてくれた。


 (助かった~、って、あれ?4人??)


 僕と師匠は分かるのだけれど、もしかしてお姫様とアメリアさんも登録するのかな……

 それはちょっと危険だと思うのだけれど……


 「ふっん、嬢ちゃん。冒険者はおままごとじゃないだ。さっさと家に帰ってメシ食って寝な」

 「あら~、久しぶりにお会いしたからかしら?随分と連れない態度を取るのね。ギルドマスタ~?」


 えっ、この人がここのギルドマスターなの?

 どう見ても山賊か殺し屋にしか見えないのだけれど……見た目で人を判断しちゃいけないんだね。


 うん。本当に勉強になりました。


 「げっ、もしや貴方様は……なぜこのような場所に……」


 (城に戻ったんじゃなかったのかよ……)


 と言う声が聞こえそうなほど、オジサンが汗をかいてるよ。

 あ~~あ、可愛そうに。

 そりゃ、そうだよね。

 自分の国の王女様がいきなり目の前に現れたら、誰だって焦るよね。


 「それで私たちは冒険者になれるのかしら?」

 「はぁ~、王様に怒られても俺は知りませんからね……。いいですよ。この羊皮紙に名前を書いて、水晶球に手を乗せてください。はぁ~何なんだよ、まったく……」


 と、いう事で僕たち四人は、ギルドマスターに渡された登録用の羊皮紙に名前を書いた。


 まず最初に師匠が、羊皮紙の上に乗せた水晶球に手を置く。


 ピカーーン


 水晶球の眩しい光が消えると、羊皮紙の上にステータスが印字されていた。


 名前:サクラ

 年齢:15

 職業:剣士ソード・マン

 LV:35

 技能:上級剣アドバンスド・ソード

etc


 へ~~師匠のレベルは35もあるのですか~。

 強いわけです。


 次に王女様。


 ピカーーン


 名前:マリア

 年齢:20

 職業:王女プリンセス

 LV:15

 技能:王女の命令プリンセス・オーダー

    王女の応援プリンセル・エール

    ダンス

etc


 王女様も意外とレベルが高いや。

 しかも本当に二十歳だし……、もしかしてお母さまも……


 続いてアメリアさん。


 ピカーーン


 名前:アメリア

 年齢:12

 職業:薬師ケミスト

 LV:5

 技能:調合

    投擲スロー

etc


 なんで薬師なのに投擲を覚えてるのだろう?


 そして僕。


 ピッ、ピッ、ピ、ピ、ピ、ピカーーン


 何故か壊れた様に点滅しているけれど……


 名前:ルキフェル

 年齢:12

 職業:魔法戦士マジック・ファイター

 LV:1

 技能:上級剣アドバンスド・ソード

    上級金属鎧アドバンスド・メタル・アーマー

    大神秘魔法ラージ・ルーン・マジック


 ふ~~Xって書かれていなかった。

 あとスキルも、全部マスタリーになっていない。

 セーーフ……でも、僕が一番レベルが低いのね……分っていたけれど、ちょっぴり悲しい……ピエン


 「オイ、坊主。ちょっと顔かせ」

 「えっ、えええ~~」

 「貴様なにを!」


 僕はいきなりギルドマスターに胸倉を掴まれて、持ち上げられてしまった。

 横で師匠が剣に手を掛けているけれど、それを王女様が止めている。

 さすがにギルドマスターと喧嘩はまずいよね。


 うわぁ、オジサンの両目が赤く光ったよ~~。


 (きゃ~~怖すぎる……)


 もしかして、ヴァンパイアーーー???


 「チッ、そういう事か……でたらめだな……」


 ふ~~、よかった~~。

 裏に連れていかれて、ボコボコに殴られるのかと思ったよ。

 でも、何が分かったのかな~?


 「あわわわ……ちょ、お兄ちゃん。ダメだよ。子供をイジメちゃ。メッ!」

 「へいへい。ここではギルマスって呼べよな……ったく。後は頼んだぞ」


 僕を降ろしたギルドマスターが、奥に戻って行く。


 「ふ~~、まったくお兄ちゃんったら、本当に乱暴なんだから。ゴメンね。え~~と、君がルキフェル君で良いのかな?凄いね~~。魔法戦士だなんて初めて見たよ」


 ギルドマスターの妹さんが、僕達のステータスを見て驚いている。


 「は、はい。初めまして。え~っと」

 「あっ、ごめんなさい。私ったら、先に名乗らないとよね。私はメル。こう見えても冒険者ギルドの受付をしているのよ。今日はちょっと寝坊しちゃって……てへへ」


 明るい茶色の髪を二つ結びにした、可愛らしい女の子だ。

 本当にあの怖いギルドマスターの妹なのかな?


 「あっ、はい。メルさん。よろしくお願いします。ところで、あの~……洋服の上にブラジャーが……。あっ、いえ、そういうファッションならいいのですよ」

 「キャーーーー先に言ってヨーーー!!!」


 バタバタバタ


 ドテ


 慌てて奥に逃げようとしたメルさんが、躓いて思いっきり転んでしまった。


 (あっ、豚さんのパンツだ……)


 かなり、おっちょこちょいな子みたいだけれど、この先、大丈夫なのかな?

 まだ冒険者の説明も受けてないのだけれど……

 というか、そろそろお昼なのに寝坊って……


 「エライわ。ルキ君。君は勇気が有るのね~」

 「ルキフェル殿……そういうのは、さりげなく小声で教えてあげた方が……」

 「はぁ~ルキ様に、もう少しデリカシーが有ればね~。ま、そういうところも可愛いんだけど」


 「はい。ごめんなさい……」


 (はぁ~~、早く男の人が仲間にならないかな……)


 という事で、折角、冒険者になったからという事で、お姫様の提案で仲間を募集することになった。

 確かに最終目標は邪欲竜ファフニールを倒すことだから、仲間は多い方がいいよね。

 出来れば男の人でお願いします!


 「私達の仲間になりたい人は、ここに並んで欲しい!」


 うわ、いきなり師匠が、大声で募集を始めてしまったよ。

 掲示板を眺めたり、お酒を飲んでいる人達の目が、一斉にこっちを向いた。

 しかもみんな目つきが悪いし……

 でも、ギルドマスター程じゃないけれどね。


 「おお、綺麗じゃん」

 「俺はこっちの赤毛の娘がいいな」

 「ヒュ~~。女だけじゃ、ゴブリンに襲われたら大変だよ~?俺のパーティに入らな~い?」


 …………


 うわぁ~凄い勢いで冒険者が集まって来たよ。

 ていうか、ここにいた人、全員が並んじゃった……


 でも、絶対に目的が違うよね?

 確かに3人共綺麗だけれどさ……


 「よし!いいだろう。と言っても雑魚に要が無いからな。これから選抜試験を行う!」


 それにしても師匠は凄い!

 大勢の男達に囲まれていても平然としている。


 「お~~!やってやるぜーー!!」

 「へっ、オメーには無理だ。餓鬼は引っ込んでろ」

 「くそジジーこそ、すっ込んでろ!」


 あっ、大変。

 喧嘩が始まっちゃったよ。


 若者とベテランから始まっ喧嘩が、見るみるうちにうちに広がって乱闘騒ぎに発展する。

 このまま行ったら流血騒ぎに……。


 カンカンカンカン


 フライパンとオタマを持ったメルさんが、騒ぎを聞きつけてやって来た。


 「はぁ~~い。皆さん。お静かに~~。殴り合いなら裏でやってくださ~~い。でないとお兄ちゃんに言うわよ?」


 シーーーン


 メルさんは小さな身体をしていて、とても可愛らしい子なのに、あっという間に取っ組み合いをしていた冒険者を黙らせた。

 ブラウスの下にブラジャーを着直したみたいだけれど、今度はボタンがズレているよ……メルさん。


 僕は後でこっそりと教えてあげようと思った。


 師匠と王女様を先頭に、ゾロゾロと冒険者達が裏口から出て行く。


 「あら?ルキ様は見に行かないのかしら?」

 「う~~ん、僕はあんまり暴力が好きじゃないから……」


 ゲームならいいけれど、本物の血を見るのはちょっとね……


 「面白そうだけどな~~。あっ、お腹が空いたでしょ。そこでご飯でも食べて待っててよ。はい。お金」

 「ありがとう。アメリアさん。今度、お返ししますね」


 「いいわよ。これくらい。じゃ、また後でね~~」


 と言う事で、僕は一人で冒険者ギルドの中に有るレストランに向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る