010.初めての魔法!?
ルキフェルこと
しかし自分は逃げ遅れてしまい、凶悪なブレスに呑み込まれてしまった。
「アキ君~~」
「アキル殿~~」
(あぁ僕、死んでしまうのかな……)
紫色の煙りの向うから、王女様と師匠の声が聞こえるけれど、何も見えないや。
せっかく女神様のおかげで、目が見えるように成ったのにな~。
それに魔法戦士Xに成れたのに……
(うわぁあ~)
草だけじゃなくて地面までが溶けている!!
物凄く臭いんだけど……
(あれ?でも僕は溶けて無いみたい。なんで?)
<
(もっと早く教えてよ……)
「うわぁあ~落ちる~~~」
師匠が落ちて来る声が聞こえてきた。
(あ、それよりも助けないと。でも僕に出来るかな……)
サクラ師匠は細身だけれど、僕より背が高いんだよね。
お母さまよりは軽いと思うけれど……
<
(だから先に言ってよね~~)
「師匠!今行きます!!」
僕は師匠の声がする方へと、思いっきりジャンプした。
辺りを溶かし尽くす、紫色の煙から抜け出したところで。
ミニスカートを押さえながら落下してきた師匠を空中でキャッチして。
そのまま溶解ブレスの範囲外へと着地する。
「はぁ~~危なかった~~。師匠、お怪我は有りませんか?」
「ア、アキル殿……あわわわ、お、降ろしては貰えませんか?!」
耳まで赤くした師匠が僕を涙目で見上げている。
もしかして、トイレにでも行きたいのかな?
(あれ?もしかして、またやっちゃったのかな?)
僕は師匠をお姫様抱っこしてるのだけれど、背中に回した左手が小さな膨らみを掴んでいて、右手がミニスカートの中に入って太ももを直接触ってしまっていた。
しかも……
「え~~~」
僕の服が溶けてなくなっている……
お気に入りのパーカーがーーー!!
ということで、色々な意味で。
(ま、まずい……)
「す、す、すみませんでしたーーー師匠ーーーー!!」
「きゃーーーーー……」
(あっ、また投げちゃったよ~~)
僕の体は物凄く力持ちになっていた。
今なら重量上げで100キロぐらいは、軽く持ち上げることが出来るかもしれない。
「アキ君。危ないーー!!」
「えっ」
王女様の声に気が付いて後ろを振り返ると。
物凄い勢いでマンティコアのお尻から生えているサソリの尻尾が、僕目掛けて矢のように飛んで来ていた。
僕はもう無理だと思いながらも、諦めずに横に飛んだ。
股がスースーとして恥ずかしいけれど、今はそれどころではない。
色々な意味で体が羽のように軽い。
ズサ!
僕が立っていた場所に、サソリの尻尾が突き刺さる。
見る見るうちに地面が紫色になって溶けていく。
(うわぁ~~怖いよ……)
「テイヤーー!!」
そこへ剣を上段に構えた師匠が、空から降って来た。
スパン!
「グゴォーーーーー!!」
(凄い!尻尾を切っちゃった……)
マンティコアがあまりの劇痛に、地面でのたうち回っている。
それなのに地面に刺さったままのサソリの尻尾が、ウネウネと動き続けていて気持ちが悪い。
(あっ、チャンスだ)
僕も攻撃しないと。
(女神様が言っていた魔法って、何だったっけ?)
<
(ありがとう!天の声さん。ラージ・サンダー!!)
うわ、良く判らないけど心のなかで魔法の名前を叫んだら。
前に出した手首に赤色をしたリング状の魔法陣が出て来たよ。
「アキル殿!魔法が使えたのですか!?しかもその色は大魔法じゃないですか~~」
へ~魔法陣の色でランクが分かるんだね~
あっ、今度は掌の前に小さな魔法陣が描かれだした。
うん、これなら直ぐ終わりそうだね。
あれ?なんか視界の右下に赤いゲージが見えているけれど……、う~~ん、これだと1分は掛かりそうだ。
どっちが本当なのだろう?……って、小さな魔法陣の前に今度は中ぐらいの魔法陣を描き出したよ!?
「マンティコアが起き上がります。まだ時間がかかりますか?」
僕を守るようにして剣を構えた師匠が、僕の体を見ないようにして聞いてきた。
そして師匠が言った通りに、尻尾が切られた痛みから立ち直ったマンティコアが、四つ足に立ち上がっていく。
しかも切断されたはずのサソリの尻尾が、新しく生えているし……
(どんだけ生命力が強いのさ……)
「後、40秒ぐらかかるかもしれません……始めてだから分からないですけど……」
「サクラ、あなたはアキ君の魔法が発動するまで時間を稼いで」
「はい、姫様!」
「アキ君は発動のタイミングをサクラに教えてあげてね」
「はい!」
<特殊効果、
王女様も凄いんだね。
それにサクラ師匠の戦い方が凄まじい。
次々と繰り出されるマンティコアの、大木すらもへし折る前足での攻撃を流れるような動作でかわし。
そのまま攻撃に移って一撃を入れている。
ボスクラスの大型魔獣が相手だというのに、たったの一人で戦いを挑むその姿は、まさに本物の剣士だった。
しかしその細い身体から繰り出される攻撃では、トラックよりも大きな巨体を倒すには至らない。
ただ頑丈な身体に大きな切り傷が増えて行くだけだ。
そして苛立ったマンティコアの口が大きく開かれて、大気を吸い込み始めた。
三人に緊張が走ったその時。
少年が描き出した3つ目の、大きすぎる魔法陣が完成した。
先ほどまで晴れ渡っていた空は、鉛色の厚い雲に覆われ、我慢出来なくなった雷が雲間を渡って行く。
「師匠!!魔法が発動します。5、4、3、2、1」
声に反応したサクラ師匠が風のように退避するのを見送った僕の目と、マンティコアの目が合った。
(えっ)
ニヤリと笑ったマンティコアの顔が、落雷の向こうに消え。
暗闇に包み込まれた辺りを青白い光が染め上げ、鼓膜が破れそうな爆音が轟き、そして遅れてやってきた爆風が全てをなぎ倒していく。
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