004.ファーストキスは何の味?!
お母さまがお城に旅立ってから3日が過ぎた。
顔のヒリヒリも治ったし、僕は普通のご飯も食べれるようになっている。
本当に薬草から薬が作れるなんて凄いと思う。
ただ、物凄く臭いんだよね……
そして今、僕はリハビリを兼ねて、鬼ごっこをしている。
といっても相手は人間ではない。
「あれ~~おかしいな……確かにこっちに曲がったはずなんだけれど……」
僕が寝泊まりしている部屋に迷い込んできた生き物と、追いかけっこしてたのだけれど。
そいつが部屋から逃げ出したので、現在は廊下を捜索中だ。
僕と同じ真っ白な毛をしていて、ネズミを長くしたような生き物。
「あっ、居た!まてーーーー」
すばしっこいそいつは、あっという間に角を曲がって見えなくなってしまう。
僕も急いで後を追って角を曲がる……
「キャッ……」
「あっ……」
ドスン、チュ
またやってしまった。
ネズミもどきを抱きかかえたアメリアさんと、その……出会い頭にチュっと……
ワザとじゃないよ。絶対に!
だって僕が角を曲がった時に、ちょうどアメリアさんが立ち上がっちゃうんだもん……
「「…………」」
まずい、唇を手で押さえたアメリアさんの金色の瞳に涙が溢れてきた。
もうこうなると、僕には謝る事しか出来ない。
「ご、ごめんさい」
腰を90度に曲げて、僕は頭を下げた。
「ど、どうしてくれるのよ……ファーストキスなのに……もう、婚約するしかないじゃない……」
「えっえええ!!!いや、僕も初めてなんですけど……なんで婚約になるのですか?!」
さすがにそんな漫画みたいな話を聞いたことがない。
「なんで……なんでそんなことが言えるのよ……ひどい、ひどすぎるわ……エエェーーーン」
「えっ、ちょっと、えっ、まってよ。そんなに泣かなくっても……」
(あわわわ、どうしよ。まずいよ。女の子を泣かせちゃったよ……)
僕がアタフタしていると、Dr.ベルトンが
「どうしたんだい。アメリア君」
「先生ーーーーこいつが私の唇を奪ったんですーーーーー!!エエェーーーン!!初めてだったのにーーー」
「それは本当かい?アキル君」
「いや、アキラです……あっ、そうじゃなくて……急いで角を曲がったら、その偶然に唇と唇がふれてしまいまして……その僕はまだ12歳ですし…………ごめんなさい……」
僕が話し終えるまで、じっと見つめてくるベルトン先生の真剣な眼差しに負けて。
僕はまた謝ってしまった。
外国では謝ったら負けと誰かが言ってたけれど、異世界ではどうなのだろう?
「いいかい。アキル君。君が暮らしてた世界ではどうだか知らないけど。ここでは婚約者としかキスをしてはいけないんだよ。それにアメリア君は12歳だけど立派に働いているよ」
「えっ、この世界では12歳で大人なのですか?」
「いや、大人になるのは15歳だ。でも12歳になったら学校に行かない子供は、働くことが出来るんだよ」
「そうなんですね……知りませんでした……僕はどうしたらいいのでしょう?」
「婚約すれば、いいんじゃないかな?」
(いや、先生。それはあまりにも軽すぎませんか?)
とても、そんなことが言える空気じゃないけえれど……
せめてお友達からと言いたいところだけど……どうやら、この世界では通じないみたい……
「あの~……アメリアさんは僕なんかでいいのでしょうか?他の人と見た目が違いますし……」
アメリアさんは、先生が言ってた通り、とても美人だった。
赤い髪がキラキラと輝いていて、そして大きな金色の瞳は、いつも僕の事を真っ直ぐに見てくれている。
大抵の人は僕の真っ白な髪の毛と赤い目を見ると驚いて目を逸らしたり、面白がったりするのだけれど。
彼女は違った。
それに口では僕に対して冷たかったけれど、毎日欠かさずに薬を塗ってくれたし、ご飯も食べさせてくれた。
「仕方がないじゃない……ヒック……キスしてしまったんだから……それに……あなたの白い髪の毛も、それに赤い目だって、とても綺麗よ。もっと自信を持ちなさい!」
泣き止んだ彼女がようやく微笑んでくれた。
「ありがとう。アメリアさん……その……良く判らない事ばかりですけど、よろしくお願いします」
僕は手を差し出してから、頭を下げた。
これが正しいプロポーズの仕方かは分からないけれど、これしか思いつかない。
「こ、こちらこそ、よろしく……その~~お願いします。アキラ様……」
初めて彼女に名前を呼んでもらえた。
まさか、お母さまが居ないところで、しかも12歳で婚約することに成るとは思わなかったけれど。
別にいいよね?
それにしても、女の子の手って小さくってとても柔らかいんだね。
「フェレット君も、よろしくね。あっ痛っ!」
どうやらネズミもどきには、嫌われてしまったようです。
指先から赤い血が~……
「あっ、こら。ビアンコ!も~私の大切なアモーレになんてことするの~~、もう~チュ~~」
えっ、アメリアさんが、僕の指から出た血を吸い出してくれているよ。
(あわわわ、何で?)
「よし、これで大丈夫。ばい菌が入ったら大変だから……あっ勘違いしないでよね。あくまでも治療なんだから……それにまだ婚約しただけなんだからね……」
僕はびっくりして眺めていたら、また上目遣いで睨まれてしまった。
でも今度は、照れ臭そうに笑っているから、きっと平気なんだよね?
それにしても結婚と婚約って、何が違うのだろう?
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