第8話 その日
僕たちは熱い日差しから逃げるように山に入っていった。
急な斜面を踏ん張りながら登り、少し上を向くと葉と木の隙間から入り込む日で目を貫いてくる。
さっき隼也に聞くとみんなで警察にお願いしてみたらしい。必死にお願いしたら割とあっさりおっけーを出してくれたとか。
みんなは前を歩いていく警察に負けんぞとばかりに速く足を動かしている。
少し後ろからついて行ってるのは僕と岡野。
辺りを見渡しながら歩いていると少し奥にも似たような警察が何人かポチポチと動いていた。
俺は一応辺りを見渡す振りをしながらみんなについて行った。
立ち止まって土を掘る。犬と一緒にその作業をしている隼也達を見て何となくこいつらも気づいているんじゃないかと思えた。
結局意味もなく無くなっていく時間と労力。
だんだん体力が底をついてきたのか少し休憩と蓮翔が休んだり息を切らしながら歩く委員長。警察の人も少し疲れた表情をしていた。
みんなが疲れきって少し座っていると鼻をすすると音が耳に入り込んできた。
聞こえる方に目をやると目に雫を浮かべて下唇を噛んでいる女の子がいた。
――岡野さんだ。
小さな身体がぷるぷると震え、その振動で溜め込んでいた雫が頬をつたって落ち葉に落ちる。
結局君もだった。みんなと少し違ったのはもうこの世にあの子の命はないと区切りをつけていた事。それは悲しくない訳ではなくて悲しすぎて絶望していただけ。花恋ちゃんの母親と同じだ。
岡野さんが泣き始めるとみんな連鎖したかのようにどんどん雫を流していく。
警察の人が悲しそうな顔をして一人一人優しく撫でていく。
夏の夕暮れ時、僕の大好きな女の子を探すためにみんなしにものぐるいで探した。
「ねぇ、何処にいるの?!?!」
「早く出てきてよ!!!!!」
「お願いだから出てきて!!!!!」
そんなみんなの願いを聞こうとはしないのか、太陽は役目を終えるように空を真っ赤に染め上げて月と入れ替わりで落ちていく。
僕もみんなと一緒に山や森の中を探しにいった。茂みの中や道路に止まっている車の中…。
真っ赤に染まった空は少しの小さな時間で一瞬のうちにして夜へと移し変えてしまった。
月が照らし、見つめる中もみんなは探した。もうライトなしでは歩けるとは思えない程暗くなったところで捜査は終了した。
目を腫れぼったくしながらまだ泣き続けるみんな。警察の人達が最後まで送り届けた。
そしてそんな中でも、
花恋ちゃんはみんなの前に姿を表さなかった――。
◇◇◇
今日は定時に仕事が終わり私はいつもより早く帰路に着いた。
聖司の学校の子が行方不明になってあたふたしている中、家に一人にしておくのは親として本当に可哀想なことをしている。
「ただいまぁー!」と玄関を開けて中に入ると上から物音がした。
聖司何かやってるのかしら?そう思いながら靴を脱いでいるといつもより少し大きい足音で階段から聖司が降りて来た。
「ただいま聖司。こんな時にごめんね…。さっ早くごはんに…」
そう言いかけた時私の目の前にいたのは一人息子の聖司、ではなかった…。
「あなたは…誰?」
「勝手に上がり込んで申し訳ありません。私はこういう者です――」
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