第29話 暗中で見つけた秘策

「居場所を教えてくれないのであれば、こちらも出るとこ出ますよ」


「へえ、例えば?」


「小学校時代からの腐れ縁に真壁ってやつがいるんですよ。そいつに頼んで、『神宮に会いたい』と書いた嘆願書を祠に提出してもらいます」


「別にやってもいいけれど、叶えられないんだよねえ。だって、その真壁って子は、一つ目の条件をクリアできていないじゃない」


 一つ目の条件。


 それは確か、『嘆願者の心身の健康状態から、努力をしても、永久に叶わないものを叶える』――だったはず。


 くそ、これも神さまの言う通りだ。


 真壁は『健康そのもので、なんの努力もしていない』じゃないか。


 それなら!


「神宮のように条件を無視します」


「それも別にやっていいけれど、罰を下すわよ?」


「構いません」


「会えなくなったら本末転倒だと思うけれど」


「……いや……そうですね。じゃあ、俺はどうすれば……そうだ、単純に神宮が出してきた嘆願書を飲み込めば――」


「無駄ねえ。嘆願者、神宮ちゃんの現状を知らないでしょう? 把握ができていない以上は、願いを叶えちゃ駄目よ」


「……だったら、この状況を打破する方法を教えてくださいよ! 神さま……なんでしょう……」


「自分の頭で考えなさい」


 そう言い残すと、神さまの体が、幾つもの小さな光に包み込まれ――光は神さまとともに消滅した。


 暗礁に乗り上げた。


 神宮に再会できると思っていた。


 神宮と談笑できると思っていた。


 まだ、言ってない、なにも言ってない。


 神さまになってからの苦悩や、その中に生まれるやりがい――そんな些細なことを、なにも伝えられていない。


 見つけ出す算段がなにも浮かんでこない。


 絶望感で、体に力が入らない。


 悲壮感で、脳が働かない。


 それでも、神宮を――救い出したい。


 呆然と立ち尽くしていると、学ランのポケットから、放課後に書いた反省文がひらりと落ちた。


 俺は、反省文をすぐに拾うことはせず、眺めるようにしてじっと見つめた。


 それは、欠片も関係のない、ただの反省文のはずだった。


 内容は至ってシンプルなものだ――夜間に学校へ不法侵入。


 いつかは見つかってしまうと思っていたけれど、先日ついにバレてしまった。


 その時は、「学校に忘れ物をして」と酷い言い訳をしたが、当然に聞き入れてもらえるはずもなく、あえなく反省文を書かされることになった。


 いやしかし、その経験が生きるとは。


 不法侵入。


 これをうまく利用すれば。

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