第18話 好奇心からくる願いの考察

「人を勝手に小説家志望にするな。……これは、もっと高尚なもんだ」


「ふーん。じゃあ、なにを書いているのか訊いてもいいかな?」


「冴えない高校男子が異世界転生でほのぼのスローライフを送る話」


「当たってるじゃん!」


「昨日、書店で手に取ったライトノベルがそんな内容だった」


「……そうかい。で、本当のところはどうなのさ」


「反省文」


 馬鹿にするように真壁はぷっと吹き出した。


「いやはや、独創性もなければ、探究心もない、おまけに根性なしのきみでも、それでも、一般的な思考は持ち合わせているというか、常識は心得ていると思っていたけれど……僕の勘違いだったんだね」


「言っとけ」


「でも、どんな罪を犯したのかは気になるところだね」


「どこの世界に反省文で罪が帳消しになるところがあるんだよ、俺は断じて罪を犯したわけではない。……前置きしておくが、反省の内容は言わないぞ」


 両手を挙げて「もう訊かないよ」と降参のポーズしてきた。


 別に言えないわけではないが、言わない方が自分に損がないと思うから言わないでおこう。


「それで、神さまの話に戻るけれど」


 それがさも当然かのように戻るな。


「わからないことがあるんだ」


「噂なんてそんなもんだろ」


「これがねえ、興味深いんだ」


 話を聞け、この思春期が。


 お前の好奇心は宇宙よりも膨大か。


 それこそ宇宙の研究でもしていればいい、一生探究し続けられるだろうよ。


「神さまに願いごとを伝えれば、願いを叶えてくれるらしいんだけれど、叶えてくれる願いと、叶えてくれない願いがあるそうなんだ」


「……微塵も信じていないが、あえて神さまの立場になって言わせてもらうと『全部を叶えるのは面倒』と思っても不思議じゃないだろ」


「その可能性もあるけれど……別の考え方もできるんだ」


「別の考え方?」


 訊き返すと、スクールバッグの中を漁り、年季の入ったメモ帳を取り出した。


「僕が聞いた限りの情報をまとめてみたんだ。神さまが叶えてくれた願いは『勉強が得意になりたい』『足が速くなりたい』『気になるあの子に告白されたい』の三つだ。対して、叶えてくれなかった願いは『大金持ちになりたい』『不治の病を治したい』の二つだった」


 えらく詳細に調べたもんだな。


「それで?」


「うん、この情報を元に考察すると、神さまは『ありえてはいけないレベルの願い』は叶えてくれないんだと思うんだ」


「俺目線、叶えてもらった願いも、お前の言う『ありえてはいけないレベルの願い』だと思うがな」


「……そこはまあ、神さまの裁量だろうね」


 根拠薄弱だな……正直、俺が言った『全部を叶えるのは面倒』という理由と大差ない。

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