第4話「すれ違い」(前編)
「ねぇ、知ってる?」
そんな話し声が遠くから聞こえた。
「○○ってさ」
よく聞こえないけれど悪口らしい。
こんな日に限って悪口とは呑気だね。
朝からずっと文化祭の準備で忙しくこの2日間、逃げ出したくなる毎日だった。
全身ぐったりしていて見る影もないぐらいに疲れ果てている私に声をかけてくれたのはまた涼ちゃんだ。
「本当に大丈夫?」
涼ちゃんは前より回復していたがその顔には疲れの色が見えた。
だよねぇ…。
私は心の中でそう呟いた。
「うん、大丈夫」
またしても平然を装い、私は駆け足でダンボールに入った装飾品の残りを倉庫へと片付けに足を運ばせた。
「先輩?」
何処からか聞き覚えのある声が聞こえ振り返ると同時に、声が上がった。
「会いたかったです!」
真っ直ぐと私の目を見据える彼女の目は純粋でキラキラと光っていた。
「藍莉…ちゃん?」
状況が掴めず途切れ途切れの声になってしまったがそんな事気にしないかのように藍莉ちゃんが駆け寄ってくる。
「忙しかったんですか?」
「うん」
「やはり3年生も気合い入れてますね!」
「そうだね」
3年…その言葉を聞いてピクっと自分の肩が反応した。
3年生と言えば卒業…大学を目指すか、就職の時期なんだ。そして、恒例の進路相談が待っている。
これじゃ…。
これじゃ、確定で藍莉ちゃんに会えない。
この学校を卒業したら会えなくなるのかな。
考え事をしていたからか、藍莉ちゃんがまた名を呼ぶ。
「先輩…?」
今度は不安げにそう口にした。
「ううん、なんでもない」
まるで自分に語りかけるようにそう答えると胸がスっと軽くなる。
そうだ、考えすぎだよね。きっと。
私はそう思う事にして考えるのを辞めた。
ーENDー
後輩ちゃんが愛らしい 梨。 @Yuzunasi
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