第2話「帰り道」
「せんぱーい…」
後輩ちゃんが何やら猫撫で声で話しかけてくる …。
「ん?何?」
心配したような表情で返すと、
「今日も一緒に帰りません?」
と、くねくねして恥ずかしさを紛らわしている後輩ちゃんがいた。
こういう藍莉ちゃんは意地悪したくなる。
「嫌だ」
そうやって一言で断ると目を見開いて少し悲しそうな表情をした後に、「じゃぁ、いいです。別の人と帰るんで」とか言ってそっぽを向いてしまった。
「ごめん、ごめん。冗談だよ?」
私が笑いながら謝ると後輩ちゃんは何かを思いついたのか私の事をじーっと見つめてこう言った。
「先輩。自分、ほんとに別の人と帰るんですけど」
これは完全なる後輩ちゃんの嘘だ。
なぜなら私に意地悪したいこの後輩ちゃんだから。
「そうなの?じゃぁ、私は涼ちゃんと帰ろうかな。」
そう言うと、またムスッとした顔をして私の方へ近寄ってくる。
「なんであの人と帰るんですか」
苛立っている後輩ちゃんが私に質問攻めしてくる。
「あの人とはどういう関係なんですか?親友ですか?」
そうやって私を問い詰めた後輩ちゃんは大きくため息をついた。
これは本気かもしれない。
「…先輩の事、好きなのに。」
周りの音で藍莉ちゃんが何を言ったのか聞こえなかった。
「何か言った?」
「いえ。なんでも」
「そう?それじゃぁ、涼ちゃんの所に…」
「なんでそうなるんですか!?」
びっくりした顔と眉を寄せた顔で可愛いお顔が台無しになった。
勿論、そうさせたのは私なんだけどね。
「…ふふ」
少し笑いが漏れて、藍莉ちゃんにまた怒られる。
「何が面白いんですか!」って。
「はいはーい、じゃ帰るよ。」
真面目な顔をしたら藍莉ちゃんも真面目な顔をして私を見つめる。
何が面白かったのか分からなかったが何故か2人で笑いあう。
その日の帰り道は私にとって新鮮だった。
後輩ちゃんがさりげなく手を繋いだので握ってみたら可愛らしく頬を赤らめたから「なんで照れてるの?」と尋ねたところ下を向いてしまったりと今日は一段と藍莉ちゃんが可愛く見えて仕方がない。
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