第17話 ザイト兄さん視点2


 目を覚ますと体中が悲鳴を上げていた。そして目の前には、弟であるリアムが立っていた。その顔を見て、俺はつい話しかけてしまった。


「リアムか」


 すると、驚いた表情で俺を見てきた。そして、リアムに軽く、俺が何をしてしまったかの状況を説明してもらった。それを聞いた時、俺は絶望した。


(俺は何をしてしまったんだ......)


 今まで、民のため、街のために魔法や剣術を勉強してきた。それはすべて街がよりよくなるためにやってきたことだ。なのに今、周りを見てみるとあたり一面が瓦礫とかしていた。


(俺はこんなことしたかったわけじゃないのに)


 でも、今そんなことを言ってもしょうがない。もう俺は、街に絶大の被害を出してしまったのだから。


「クソ」


 そして、リアムに言われた通り、街に入り込んでいるモンスターを探して倒し始めた。戦っている最中、モンスターの攻撃を何度も受けた。


(これも俺のせいなんだよな......)


 そう思うと、モンスターに攻撃を受けてもしょうがないとしか考えられなかった。そして、モンスターを倒していると、少しだが街に貢献できているとすら感じられた。


 その時、コボルトが親子に襲い掛かっているのを目撃して、俺はすぐさまモンスターを倒した。すると親子が泣きながら言った。


「ザイト様。ありがとうございます」

「......。早く安全なところへ」

「はい。本当にありがとうございます」


 そう言って親子はこの場を去っていった。


(......)


 いつもなら、民にお礼を言われたら嬉しいが、今回は全くそうは思えなかった。何なら、申し訳ない気持ちでいっぱいであった。だって、俺が今回の主犯なのだから。


 その後も、モンスターをことごとく倒したところで、なぜかアーデレスの精鋭部隊がこの街にいて驚いた。そして、その人たちが俺を見ると、一瞬驚いた表情になった後、睨みつけてきながら俺の目の前から去っていった。


(なんで睨まれるんだ?)


 少しそう思った。でも、今は誰でもいいから罵倒されたい。罵倒されれば、少しは気が楽になるから。俺が悪いのに、お礼を言われるなんておかしなことだ。


 そして、モンスターの気配がなくなったと感じた時、すでに日が暮れ始めていたので屋敷に戻った。



 屋敷に入ると、一気に体がだるくなってしまい、ソファーに横たわってしまった。すると一気に眠気が襲ってきて目をつぶってしまった。


 玄関から音がして、目を覚ますとそこにはリアムとエルフの女の子、そして魔族が目の前にいた。


(なんで魔族が?)


 ふとそう思ったが、今はそんなこと関係ない。俺はすぐさまリアムたちの元へ行き頭を下げて謝る。だが、リアムは俺に対して冷たい目を向けながら地下室へ行こうと言ってきた。


(地下室の存在を知っていたのか.....)


 いや、知っていてもおかしくないか。俺を倒して街を救ったってことは、この屋敷で情報を集めたに違いない。


 そしてリアムは俺に石板を見せてきて、これは古代文字だと言ってきた。


(やっぱりか)


 だが、次に言われた言葉で、俺が何をしてしまったのかを知った。禁断の魔族を解いた。それがどれだけやばいことか言葉を聞いただけでわかる。そして、それはベルフェゴールだということ。


 誰だってベルフェゴールと聞けばわかる。それほど危険な魔族だ。


(俺はそんな奴を......)


 そこから、リアムは俺が今後どうなるのかを説明されて、部屋に戻っていった。


(本当にありがとう。お前が居なければ俺は......)


 そして、もし叶うなら俺はリアムと......。そう淡い期待を持ちながら自室へ戻っていった。




 

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