第16話 兄との対話


 実家の中へ入ると、そこにはぐったりとしているザイト兄さんが座っていた。そして、俺たちを見るとすぐさま立ち上がり、頭を下げてきた。


「本当に申し訳なかった」

「......」

「今回、俺の不手際でこのような事態が起きてしまった。もしリアムたちが来てくれなかったらどうなっていたことか」

「そうよ! あなたがリアムを追放しなければ」

 

 シェルが言ったことに対して、ザイト兄さんは頭を下げたままであった。


「シェル、やめろ」

「でも......」

「もう終わったことだから」


 そう、実家を追放されたことなんてもう過ぎたことだ。そりゃあ、実家を追放されていなければこのような事態にはならなかったのかもしれない。でも、俺にも落ち度はあったはずだ。だからザイト兄さんを責める資格はない。


「本当にすまない」

「ザイト兄さん」


 俺が呼びかけると、頭を上げて俺の顔を見てきた。


「どうした?」

「今から真剣な話をしたいから、地下室へ行こう」

「あぁ」


 俺たちは、父さんの部屋に入ってから、地下室の中に入って、石板をザイト兄さんに見せる。


「今回の発端はこれだよね?」

「なんでそれを......」

「これ、古代文字なんだ。そして、ここにはこう記されている」


【禁断の魔族~~~。】


 俺が書かれている内容をすべて説明すると、ザイト兄さんは顔を青くしていた。


「......」

「ザイト兄さんは解いてはいけないのを解いてしまった。そう言うことなんだ」

「そ、そうなのか」

「そして、ザイト兄さんが操られてから、住民たちは疫病にかかって街が滅亡仕掛けた。そして多分、ベルフェゴールのせいで街にはモンスターがやってきた」


 そう、今回一番やってはいけなかったことは、ベルフェゴールを解き放ってはいけなかったこと。もし、これを解き放たなかったら、疫病になることは無かったし、モンスターたちが押し寄せてくることもなかったはずだ。


「ごめん」

「ザイト兄さんはこの場所をしっていたの?」

「あぁ。リアムを追放した後、父さんに連れられてここに来た」

「父さんはなんて?」


 今一番聞きたいのはこれだ。多分、今回の主犯は父さんだ。結局ザイト兄さんも利用されただけの身。だから責める気にはなれなかった。


「それが、あまり教えてくれなかったんだ。時期俺にも教えてくれるとは言っていたが」

「は?」


 それを信じろと? そんな話あるわけないだろ!


「信じてくれ!」

「だったら、俺たちに刺客を送ってきた理由は?」

「それは......。本当にごめん」

「謝ってほしいわけじゃないんだ。理由を教えてほしい」


 そう、今謝られたところで無意味だ。それよりも、なんで竜人国ドラゴノウスにまで攻め入ってきたのか。そしてシェルやリアにも襲ったのか。それが聞きたいんだ。


「最初はお前が古代文字を発見したことが憎たらしかった。なんで俺じゃなくてお前が功績を出すんだって。そこからお前に対しての嫉妬心で刺客を出した」

「それで竜人国ドラゴノウスにも?」


 すると、首を横に振って否定をしてきた。


「それは違う! 俺も知らなかったんだ。竜人族ドラゴニュートたちにも刺客を出していたなんて。俺だって国際問題にはしたくなかった」

「......。そっか」


 今のザイト兄さんが嘘をついているとも思えなかったので、頷いた。


「信じてくれるのか?」

「すべてを信じるわけじゃない。でも今のザイト兄さんが嘘をついているとも思えなかったから。それにあの紙を見たからな」


 そう、父さんが書いた紙を見なかったら、ここまで信用することは無かっただろう。


「あ、ありがとう」

「じゃあ、上に戻って今後の話をしよう」


 俺はそう言って、来賓室へ向かった。そこで、俺たちと向かい合わせてザイト兄さんが座り、話し始めた。


「今までの件、すべてを竜人族ドラゴニュートの長と、人族の国王に説明した」

「......」

「だから本当はアーデレスの精鋭部隊も今回の件のために来たわけでは無くて、ロードリック家を罰則するために来たんだ」

「そ、そうか」


 俺の話を聞くと、徐々にザイト兄さんの顔が青くなっていくのが分かった。でも、すぐに何か決心したかのような顔になった。


「だから、次期にザイト兄さんは罰せられると思う」

「わかった。いや、本当にありがとう」

「え? ありがとうって」


 ここでお礼を言われると思っていなくて、驚いてしまった。


「リアムが居なかったら、俺はまた逃げ出していたかもしれない。俺はもう逃げたくない。罪は罪として償いたい。だからありがとう」

「あ、あぁ。俺たちは寝るけど、ザイト兄さんも明日からできることを一緒にやろう」

「あぁ。本当にありがとう」


 話が終わり、俺たちが来賓室を出ようとした時、ザイト兄さんは涙を流しながら椅子に座っていた。


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