第15話 街の状況
「ザイト兄さんなのか?」
突然話しかけられて驚いてしまい、つい質問してしまった。すると、ザイト兄さんは頭を地面にこすりつけて謝ってきた。
「本当に済まない」
「......」
何に対して謝っているのかわからなかったが、ここで「いいよ」なんて言えるはずがなかった。実家を追放したことに対してなのか、ベルフェゴールのことなのか、それとも刺客を出して来たことなのかわからないが、どれをとっても許せることじゃなかった。
実家を追放されたとき、シェルがいなければ確実に立ち直れなかっただろう。そして、ベルフェゴールの件も、実家を追放していなければこうはならなかったと思う。そして一番許せないことは、俺たちに刺客を仕向けたことだ。
俺だけが死ぬならまだいいが、シェルやリアまで危険な目にあった。そして一番の被害は、
「今は街の人たちのことが優先しなくちゃだから」
「俺は、俺は何をすればいいんだ」
「......。それぐらい自分で考えなよ。まあ思いつかないなら、モンスターが街にいるらからそれの退治でもしていれば?」
「あぁ、分かった」
なぜか俯きになりながら、この場を去っていった。すると、シェルとリアがはなしかけてくる。
「リアムのお兄さん、ずいぶん変わったね」
「あぁそうだな」
「私はわからないのですが、そうなのですか?」
キョトンとした顔で、リアは俺たちに尋ねてきた。
「そうよ。前にあった時なんて、私に対して劣等種は黙っていろとか言ってきたのよ?」
「そ、それは......」
「だから少しは変わってくれてよかったわ」
「まあ、今はそんなことより街の住民が疫病にかかっていないか確かめに行こう」
俺が言ったのに対して、二人は頷きながら歩き始めた。
★
広場に着くと、先程までぐったりとしていた住民たちの顔色が良くなっているのが分かった。そして、体を見回すが緑色になっているところが無くなっていた。
(よかった)
まずは、住民たちは魔法がきいていたってことだもんな。なら、他の場所にいる人たちもここにいる人たちと変わらないのだろうと思った。
そのまま、あたりを歩いていると、路地裏の隅っこにゴブリンが数体現れて、住民に襲い掛かろうとしていた。
俺はすぐさま、数体のゴブリンを斬り倒した。そして、シェルは
「「おぉ~~!!」」
「「ありがとうございます」」
「あ、はい」
今まで、この街の住民に頼られたことがなかったので、対応が分からず、少し照れてしまった。その後も、俺たちのもとに住民たちが来て、次々とお礼を言ってきた。すると、少し遠い場所から受付嬢がこちらへ走ってきた。
「リアムさん! ご無事でよかったです」
「はい」
「それで、急用ですが、現在街中にモンスターが現れています。一応は冒険者とアーデレスの人たちがモンスターを倒してくれていますが、街の中にもモンスターが潜んでいる可能性があるため、リアムさんや他の冒険者を見かけたらこのことを話しておいてくれませんか?」
「わかりました」
すると受付嬢は走ってこの場を去っていってしまった。
(受付嬢も大変なんだな)
ギルドの受付をしていればいいだけでなく、街の危機管理などもしなければいけないのか。そう思ったのと同時に、色々な人にこの街は支えられているんだなと感じた。
受付嬢がいたおかげで、モンスターの対応が早まっているに違いないし、住民が横たわっている時も、神父さんなどが歩き回って診療していた。そして、アーデレスの精鋭部隊の人たちがいなければ、この街はすでにモンスターに侵略されていたかもしれない。
(本当にいろいろな人に助けられている)
最初は、俺一人で何とかしようと思っていた。だが、結局俺一人ならベルフェゴールを退治することはできなかったし、街の住民を助けることだってできなかった。
「本当にありがとう」
「え? いきなりどうしたの?」
ボソッと言った言葉をシェルに聞かれていて、ものすごく恥ずかしくなった。
「いや、なんでもないよ。それよりも、治っていない人が居るかもしれないから」
「そうね」
そこから、数時間で町全体を歩いて、重症患者らしき人物がいないことを確認したところで、精鋭部隊の人たちと出会った。
「モンスターは追い払ったが、そっちはどうだ?」
「こちらも主犯は倒しました」
すると、精鋭部隊の人が真剣な顔をしていった。
「そうか。だが、俺たちが来たことはこんなことじゃないことはわかっているよな?」
「はい。本当にありがとうございます」
そう、この人たちがロードリック領に来たのは、今回の件のためではない。実家を罰則するためだ。
「あぁ。だから、今週中にでもきちんと話がしたいから、場をきちんと設けてくれ」
「わかりました」
そして、夜になり、シェルとリアを連れて実家へ戻った。
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