第14話 ベルフェゴールの撃退


「あぁ~~~」


 放った魔法はベルフェゴールの腕に当たり、みるみる内にザイト兄さんの腕に戻っていくのがわかった。


「成功か?」

「もう許さない」


 俺たちがベルフェゴールを見ていると、先程までの余裕は無くなり、ものすごい血相でこちらを見て来ていた。


 そして、俺たちに向かって、先程使ってきた緑色の風を放ってきた。俺はみんなの前に立ち、シルフの力でそれを受け流そうとしたが、腹部の激痛でうまくかき消すことが出来ず、腕と足に当たってしまった。


 すると、腹部同様、徐々にだが緑色に変色していった。俺はすぐさま、予知を使い、自分がどれぐらい良きれるのかを見る。


(後、三分ってところか)


 後三分で、ベルフェゴールを殺せるのか。いや、殺すんだ。後少しの人生なんだ。だったらできることをやって死にたい。その時、ベルフェゴールが俺に向かって言った。


「お前さえ殺せれば私は!」

「死ぬなら道ずれだ」


 そう言って、シェルと一緒にベルフェゴールめがけて先程の魔法を使う。だが、それを避けられてしまい、俺たちに攻撃を仕掛けてくる。


「く!」


 ギルドマスターがその攻撃をもろに受けてしまい、剣を地面に落とす。その瞬間を見逃さず、俺とシェルを斬り殺そうとしてきた。


「リアム、シーちゃん!」


 リアが叫んだ瞬間、あたり一面光輝いてベルフェゴールの攻撃が弾き飛ばされた。


(これは......?)


 俺とシェルはベルフェゴールが怯んでいる一瞬を見逃さず、ベルフェゴールめがけて魔法を放った。


「あ、あぁぁぁぁぁ」


 すると、ベルフェゴールの姿が消えて、ザイト兄さんの姿に戻った。


「リアム!」

「......。後一分ってところか」

「大丈夫。大丈夫だからそんなこと言わないで」


 シェルは泣きながら俺に向かって治癒魔法を使った。だが、案の定治るはずもなく、首元まで緑色になっていった。


「シェル、最後の頼みだ。この魔法をこの街に使おう」

「......。うん」


 俺はシルフの風魔法とティターニアの聖魔法、そしてティターニアの加護を受けたシェルの聖魔法を空に目掛けて放った。


 すると、あたり一面、真っ暗であった空が青空に変わっていくのが分かった。


「これで、街の住民は治ったはずだよ」

「で、でもリアムが!」

「二人とも今までありがとう」


 俺がそう言って目をつぶった。するとシェルとリアが泣きながら言っていた。


「死なないでよ......」

「私がベルフェゴールの誘いに乗っていれば」


(それは違うよ。リアは間違っていない)


 俺の命のためにリアの人生を棒に振る必要なんて無い。それにリアはお父さんを助けるんだろ? そう思いながら、もう死ぬんだと思った瞬間、ティターニアが話しかけてきた。


{リアム、また話しましょうね}

{え?}

{この力を使ったら、もうエルフの国に私はいないでしょう。ですが、リアムが私を助けてくれることを願っています。だからあなたはここで死んでいい存在じゃない}


 すると、俺の周りが光出して、体中に緑色になっていた現象が徐々に無くなっていくのが感じた。

(え?)


{ティターニア?}

{ティターニア!}


 何度話しかけても、声が聞こえない。


「クソ!」


 俺は地面を叩きつけた。ティターニアはエルフの国でしか話せないと言っていたが、多分それは本当ではない。それはうすうす感じていた。だが、今使った力で、本当にティターニアがいた気配が全て消え去ってしまった。


「リアム?」

「あぁ......。もう大丈夫だ」


 すると、シェルとリアが俺に抱き着いてきた。


「心配させないでよ!」

「本当ですよ.....」

「ごめん......」


 その後、二人は数分間俺の胸で泣いていた。そして泣き止んだところで、言われる。


「もう大丈夫ってことかな?」

「多分な。でも一旦周りを見回そう」

 

 そう、死ぬと思った直前、街全体に魔法を放ったのだから、疫病にかかっている人は治っているはず。だけど、まだ見てみなくちゃ分からない。


「わかったわ」

「はい」

 

 その時、ギルドマスターが驚いた表情で俺を見てきながら言った。


「ちょっとまて、リアム今何をした?」

「......。古代文字を解読して、授けられた力です」


 すると、ギルドマスターは驚いた表情をしていた。


「そ、そうか。その話は後で聞かせてもらうからな」

「はい」


 まあ、流石にこの光景を見られてしまった以上、隠し通すことなんてできないよな。それにギルドマスターがいなかったら俺たちは確実に死んでいた。その時ふと思った。この場にいる誰かが欠けていたらと......。そう思った瞬間、ゾッとした。


「まあ無事で何よりだ。じゃあリアムが言う通り、住民の安全を確認しに行こう」

「はい」


 俺はザイト兄さんを持ち上げようとした時、目を覚ました。


「リ、リアムか?」

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