第13話 ザイト兄さんを操っている魔族


 ザイト兄さんは俺の攻撃を避けて、殺しにかかってきた。その瞬間、シェルは俺もろとも風竜ハリケーンで飛ばした。


 そして、俺たち二人が空中に浮かんでいる時、シルフの力でザイト兄さんを吹き飛ばした。俺が地上に落ちる時、リアの守護プロテクトで守られてダメージが何一つなく、ザイト兄さんに目をやりながらそちらへ向かった。


「う......」


 案の定、少しだがダメージを与えられていた。


「ここしかない!」


 そう思い、ザイト兄さんに向かってシルフとサラマンダーの力を付与した剣で斬りかかった。だが、ザイト兄さんはなぜか目の色を変えて俺に話しかけてきた。


「リアム?」


 その瞬間、俺は攻撃を止めてしまった。それをザイト兄さんは見逃さず、俺の腹部を刺してきた。


「あ、あぁぁぁ~」

「リアム!」

「リ、リアムさん!」


 俺が悶絶しているところをザイト兄さんはとどめを刺すかのように首元目掛けて突き刺そうとしてくる。俺は、ギリギリのところで横に回転してその攻撃を避ける。


「はぁ......。はぁ......」


 その時、ザイト兄さんが俺ではなく、リアに向かって話しかけてきた。


「魔族か......。お前もこっちに来ないか?」

「え?」

「そしたらこいつは生かしてやる」


(え?)


 そう、ザイト兄さんは人族以外を劣等種として見ていた。それなのに仲間に勧誘するなんて、今までのザイト兄さんならありえるはずがなかった。


「お前は......。誰だ?」

「お前は黙っていろ」


 ザイト兄さんは、俺の腕に剣を刺して黙らせる。


「うあぁぁぁぁぁ」

「やめてください!」

「早く決めろ。お前が俺たちのところへ来るならこいつは見逃してやる。なぁ、鬼人族」

「......」


 すると、ザイト兄さんの周りに緑色の風が吹き、姿が一気に変わっていった。その時、俺たち全員は寒気を感じた。


(あってはいけない存在にあった)


 そう思った。すると、ザイト兄さんが言った。


「借りの身だから動きずらいな」

「え?」

「まあ、自己紹介ぐらいしようか。俺はベルフェゴールだ」

「ベルフェゴール......」


 聞いたことがある。疫病で万単位の人を殺したという逸話の魔族。そんな奴がなんでこんなところに......。


 その時、俺は誰かに担がれてベルフェゴールから距離をとれた。


「大丈夫か?」

「ギ、ギルドマスター」


 シェルはすぐさま、俺に治癒魔法を使って、腹部の傷がいえる。


「それよりもあれは何だ?」

「ベルフェゴールらしいです」

「なんでそんな奴が......」


 するとベルフェゴールが言った。


「あなた方には興味がありません。鬼人族の子よ、私とこないか?」

「行きません」

「そうか。なら死ね」


 そう言って、俺たちに向かって緑色の風を吹いてきた。俺はシルフの力でその風を上空に向かわせる。


「へぇ。お前、誰かと契約しているな」

「......」

「だったらまずはお前を殺す」


 すると、ベルフェゴールは俺の目の前に来て、腹部を触った。その瞬間、今まで感じた事の無い激痛が走った。


「これでお前は後十分もしないで死ぬだろう」

「なにをした......」

「そこらへんに転がっているゴミと一緒の疫病をかけただけだよ。まあ、お前にかけたのは瞬時に発症する疫病だがな」


 それを聞いた瞬間、ギルドマスターは俺の服を斬って腹部を見た。


「「「!!!」」」


 俺も恐る恐る腹部を見ると、緑色のクモの糸みたいな疫病が徐々に体をむしばんでいくのが分かった。


「後三人ですね」

「......」


 その時、声が聞こえた。


{リアム、ベルフェゴールには一つ弱点があります}

{ティターニアか}

{はい。手っ取り早く言いますが、ベルフェゴールには聖魔法が弱点です。そしてそれは私の魔法が有効でしょう}

{でも、俺は......}


 そう、すでに俺はベルフェゴールに疫病を植え付けられて、ほぼ動ける状況になっていなかった。


{シルフとサラマンダーの力を借りなさい}

{......。わかった}


 すると、サラマンダーとシルフが言う。


{俺が疫病を食い止める。だからシルフとティターニア様の力であいつを倒せ}

{わ、分かった}


 すると、腹部が燃え上がるような感覚になり、少しだが疫病の進行が遅くなっているのが分かった。そして、俺はシェルに肩を借りて言う。


「シェル、力を貸してくれ」

「わ、分かったわ。でもどうすればいいの?」

「俺と一緒にティターニアの魔法を使ってほしい」

「う、うん」


 だが案の定、この会話はベルフェゴールにも聞かれていたので、睨みつけられながら言われる。


「そんなことさせるとでも?」


 そう言って、俺目掛けて攻撃を仕掛けてきた。だが、それをギルドマスターが受け止めてくれていた。


「時間は俺が稼ぐ! 早くやってくれ」

「わかりました」


 俺たちは、ベルフェゴールめがけて魔法を放った。

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