第12話 兄さんとの戦闘
「ザイト兄さん......」
「リアム、リアム!」
「どうしたんだよザイト兄さん!」
「......」
なぜか、話がかみ合わずこちらをずっと睨んできていた。そして、一瞬にして目の前から消え去った。
(え?)
そう思った瞬間には、腹部に激痛が走っていた。
「う......」
一旦、この場から距離を取って、シェルとリアの元へ後退した。
「リアム大丈夫?」
「大丈夫ですか?」
「あぁ」
(それにしてもどうなっているんだ?)
目の前にいたザイト兄さんが一瞬で俺のもとへきて、殴りかかってきた。今までのザイト兄さんならそんなことできるはずがなかった。あの人は、剣術や魔法にはたけていたが、ここまで俊敏に動けるはずがない。そして、目の前にいるザイト兄さんに目をやる。
(ザイト兄さん......)
はっきり言って、今のザイト兄さんは人間なのかすらわからない。なんせ、全身緑色の人間なんて存在しないし、腕などが少しだが変形してきていた。かろうじて、身内だから目元や口元などがザイト兄さんだとわかるぐらいであった。
「お前さえいなければ」
先ほどから、ずっと俺の事を睨みつけながら、ぶつぶつと何かを言っていた。
「ザイト兄さん話を聞いてくれ」
「ああああああああああああああ」
俺が問いかけた瞬間、ザイト兄さんは叫びだして、こちらへ走って来た。俺はすぐさま、シルフの力を借りて体を軽くする。そして、ザイト兄さんの剣を受け流した。
「死ね! 死ね!」
「兄さん......」
目の前にしているザイト兄さんは、俺が知っているザイト兄さんとは違うと確信した。先程までは体は変わっても、精神は今までだと思っていた。だが、目の前にしているザイト兄さんは俺を殺すことしか考えていない。あまつさえ、俺の声が届いていないようにすら感じた。
シェルたちはどんな対応をしていいかわからず立ち止まっていたため、俺が指示を出した。
「二人とも、ザイト兄さんを倒そう」
「「え?」」
「今の兄さんは兄さんじゃない。だったら」
「でも!」
シェルが言っていることはわかる。家族を殺す判断をして本当にいいのか。そう言いたいのだろう。だが、誰かに操られているようにしか感じられないザイト兄さんを見ていることが俺にはできなかった。だったら、早く楽にしてやりたい。俺がどんな十字架を背負ったとしても。それが家族の役目であると思うから。
「いいんだ。だから頼む」
「......。わかったわ」
「わかりました」
すると、シェルはすぐさま風魔法を使ってザイト兄さんに攻撃を仕掛けた。だが、ザイト兄さんはその攻撃を難なくかわして、シェルに攻撃を仕掛けた。
俺がシェルたちの方向に向かっている時、シェルに向かってリアが
{シルフ}
{わかってるよ}
いつも以上の力を借りて、一瞬にして二人の目の前にたどり着き、ザイト兄さんの剣と俺の剣がぶつかり合う。そして、三人で一旦距離を取って言った。
「二人とも、三人で連携しよう。そうじゃなくちゃザイト兄さんは倒せない」
「「わかった」」
そう、今のザイト兄さんはワイバーンより強い。もしかしたらエルフの国であった魔族に匹敵するかもしれない。それなのに俺たちがバラバラで戦ったところで勝てるわけがない。
「俺が前衛を張るから、二人はカバーを頼む」
俺が二人に言うと、頷いて戦闘態勢に入った。
{シルフ、サラマンダー、頼む}
{わかったよ}
{あぁ}
そして、俺が持っている剣に風と火を付与して、ザイト兄さんに斬りかかる。だが、ザイト兄さんはギリギリのところでかわして、俺の首元を狙って攻撃をしてきた。
その瞬間、シェルの
ザイト兄さんはシェルの攻撃すらかわして、一旦俺たちから距離をとった。
「ねぇ、これじゃ......」
「わかっている」
そう、このままじゃ確実に負ける。俺たちも魔力に限度はある。だが、今のザイト兄さんにそのような雰囲気はなかった。
(どこかで勝負を仕掛けなければ)
俺がどこかしらで、ザイト兄さんに攻撃を与えなければ勝てない。でも、先程の攻撃をかわされてしまった以上、俺の速度にはついてこれるということ。あの攻撃が一番威力があり、一番早かったのにそれをかわされた以上、何かしらの案を考えなければいけない。
(どうする......。どうする?)
ザイト兄さんと剣を合わせている時も考えているとが、案の定少しずつ俺は攻撃を受け始めていた。
その時、ふと思いつく。
「リア!
「わ、分かった」
そう言って、俺たちの周りを安全な状態にした時、作戦を説明する。
「でも、それって」
「あぁ。でもこのままじゃ負ける。だったらやるしかない」
「......。わかったわ」
「わかりました」
話が終わった瞬間、ザイト兄さんが
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