第10話 俺の知らない実家

 俺が棒立ちしていると、シェルが尋ねてくる。


「これって、リアムのお父さんが書いたんだよね?」

「あぁ」

「これって、もしかして」

「多分、兄も父に見限られたんだと思う」


 この文面を見る限り父はザイト兄さんを見限ってこの家を出て行ったんだと思う。


(でも、なんであんなに家のことを考えていた人が)


 そう、俺を追放した理由も、俺がオッドアイであり普通の人間とは違うからだった。そして、それが世間で公になったらロードリック家が地に落ちるという理由。


 それほどまで考えていた人が、兄を見捨てて実家から出るなんて。


「まずは他にも何かないか探してみよう」

「「えぇ」」


 そう言って、俺たちはこの部屋にあるものをしらみつぶしに探し始めた。そこから十分程度探したが、情報と言う情報が見つからなかった。


(クソ)


 最終手段であった、予知を使って兄の未来をもう一度見ようとする。だが、案の定ザイト兄さんの未来を見ることが出来ず、頭痛が起こる。


(うぅ......)


 本当に何が起こっているんだ? 父さんの文面を見る限り、ザイト兄さんがここにいるのは間違いない。あの人がこの領を見限るなんてしないはずだ。だが、屋敷にはいないし、未来を見ることもできない。


「どうなっているんだよ」


 ボソッと声が出てしまった。すると手の甲にある魔方陣が光出した。


{リアム、言うか迷ったがこの家には魔素が流れている}

{魔素って普通流れているんじゃないの?}

{そう言う意味じゃない。俺たちと同種の匂いだ}

{え?}


 同種の匂いってことは、精霊がいるってことなのか? 


{多分、俺たちと一緒で古代文字に封印された存在がここにいたってことだ}

{でも、古代文字って今のところ俺しか解読できないよな?}


 俺以外に古代文字の解読をできた人なんて聞いたことが無い。結果として、エルフや竜人族ドラゴニュート、人族は古代文字のありかは知っていたが解読までは至っていなかった。


{いや、そうとも言えない}

{それってどう言う意味?}

{簡単に言えば、運よく解読できてしまった可能性がある}

{......}


 その路線は考えていなかった。誰しも古代文字を見たら解読できないと思ってしまうだろう。そしてその次に思いつくのは、解読するために何をするかだ。その時に解読できてしまったってことか。


{そして、ここからが一番重要な話だが、ここにいた奴らは俺たちとは違う存在だ}

{は?}

{人族の奴も言っていたが、俺たち精霊は魔族を止めるために封印されたが、ここにいた奴は、多分違う。魔素が俺たちとは違うからな}

{......}


 サラマンダーがそう言うってことは、もしかしたらリックさんが言っていた制御できない魔族がここに存在していたってことか?


 その時、リアが言った。


「ねぇリアム。ここって地下室とかある?」

「え? ないけど」


 すると、父さんがいつも座っている椅子の下を指さして言う。


「でも、下から小さな風が流れているけど」

「ほ、本当だ」


 リアに指されている場所に手を当ててみると、そこには少しだが風が流れていた。俺は、その場所を叩いてみると、普通のタイルの場所とは違う音がした。


(!?)


 すぐさま、シルフの力を使って剣でタイルに向かって攻撃すると、タイルが壊れて階段が出てきた。


「こ、こんな場所に階段があるなんて」


 この十五年間、こんな場所があるなんて知らなかった。


「いってみよ?」

「そうだな」


 俺は、シェルを呼んで、地下に続く階段を下っていった。

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