第9話 ロードリック領


「ギルドマスター?」

「あぁ。それよりもなんでここにいるんだ?」

「あ、それは......」


 実家に罰を与えてるために来たなんて言われたら、ギルドマスターだって反応に困ってしまうと思った。なんせ、家族を罰すると言っているのだから。


「まあいい。それよりも今この街で起きている現象をどうにかできないか?」

「え?」

「高ランク冒険者たちに話をもっていったが、状況が分からない状態なんだ。もしかしたらリアムなら何とかなるかと思ってだな」

「まあ俺もこの街を救いに来ましたので」


 そう、実家に罰を与えるために来たとは言え、助けないというわけじゃない。元はと言えば俺の実家が納めていたところなんだから。それに、助けられるなら助けたいに決まっているじゃないか。


「でも、現状神父とかも治せない状況だ。それをどうするか......」

「それは任せてください。ですが、まずは実家に行かなければ」

「そうか。まあお互い何かしらの情報が出たら連絡し合おう」

「はい」


 話が終わった瞬間、ギルドマスターはこの場から走り去っていった。


(じゃあ行くか)


 俺は深呼吸をして、実家へ向かった。



 家の目の前に着くと、そこには人一人としていない雰囲気が出ていた。


(あれ?)


 普通なら、誰かしらがこの場に来るはずだ。それなのに今は兵士の一人もいないし、あまつさえ人の気配すらしな買った。


「ねぇ、どう言うこと?」

「わからない」

「普通、誰かしらいるよね?」

「あぁ」


 やはりシェルも感じ取っているようであった。それにアメリアも首を傾げながら疑問そうな顔をしていた。


「まあ中に入ろうか」

「「うん(はい)」」


 俺が先に入ると、シェルやリア、そしてアーデレスの精鋭部隊の人たちがそれに続くように中へ入って行った。


(懐かしいな)


 あまり良い印象が無くてもこの家のことを懐かしいと思えてしまう。だがそれと同時に、実家を追放された記憶。そして、兄や父に罵倒されたこと。それらを思い出してしまった。


(もっと他の方法があったんじゃないか?)


 そう思うと少し後悔をする。俺が父さんや兄さんともっと対話をしていれば。オッドアイであるこの眼が魔眼だともっと早く知っていれば。それ以外にも考えるだけで山ほど家族と話すやり方はあった。


(まあ、もうそれも遅いのか......)


 そう、もうこんな悲惨な状況になってしまった。竜人族ドラゴニュートに迷惑をかけて、ロードリック領もこんな状態だ。かもしれないと思う時期はとっくに過ぎているんだ。


「皆さん、二階に応接室がありますので、まずそこへ向かいましょう」


 全員が頷いたので、俺は応接室に案内をした。ここならもしかしたら、まだ誰かがいるかもしれない。そうじゃなくても、何かしらの手掛かりがあるかもしれない。


 そして、応接室に入ると、案の定そこには誰もいなかった。


(......)


「皆さん、ここで何か手掛かりがあるかもしれませんので、探してみてください。俺は他の場所を探してきます」

「私もついて行くわ」

「私もです」


 俺は頷き、シェルとリアを連れて他の場所を探しに行く。まずキッチンに行ったが、そこには何も無く、次に俺の部屋へ向かった。


「何もないけど、ここは何の部屋なの?」

「俺の部屋だったんだ」

「そ、そう」


 すると、二人は少し悲しそうな表情をした。そりゃあ俺だって悲しいさ。俺がここにいたってことが無くなっているんだから。


 そして、父の部屋に入ると、そこには一枚の紙が置いてあった。


【ザイト、これはお前の失敗だ。俺はこの場所を立つ】


(え?)

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