第8話 異変


 ロードリック領へ向かっている道中、何度もモンスターと接敵したが、先鋭部隊の人たちがことごとく倒してくれたため、俺たちは馬車に乗っているだけで実家へ戻っていた。


「私達、何もしていないね」

「あぁ、そうだな。でもロードリック領についたら、必ず何かしらあると思うから、準備はしておこう」

「うん」

「はい」


 そう、故郷に戻ってから何が起こるかわからない。精鋭部隊がいるからって、気を緩めていいわけではない。


(それに......)


 魔眼を使ってザイト兄さんの未来が見えなかったのも少し引っ掛かる。いつものことなら、頭の中に光景が見えるはずだ。それなのに見えなかったということは......。それに、魔眼は確実に使えていたはずだ。なんせ、頭痛が起こったんだから。


 その後も特に何もなくロードリック領へ向かい、近く村に着いた時、一人の男の子が俺たちの元へやってきた。


「た、助けてください!」

「え?」


 俺は茫然としてしまったが、精鋭部隊たちは迅速に行動してくれて、あたり一面に警戒網を張ってくれていた。


「お母さんが!」

「「案内して」」


 俺とシェルがはもりながら、男の子に案内をさせてお母さんのところへ向かった。


(これは......)


 何が起きているんだ? 体の一部が緑色になっていて、息もしているのかわからない状態であった。


「状況を説明できる?」


泣きながら、説明をし始めた。


「お母さんがロードリック領から戻ってきて、数日経ったらこうなっていて」

「......」


 ロードリック領へ行ったらこうなっていたと言っていた。だとしたら、ロードリック領に問題があるのか? でも、ロードリック領に問題があるなら、時期は少し前になるが俺たちもこのような現象に陥っていてもおかしくない。


 そして、俺がこのような現象に陥っていない以上、ロードリック領に問題があるのかと思った。


「リアム......」

「あぁ。わかっている。まずはこの人を助けることからだ」


 俺は、すぐさまティターニアの力を女性に使う。すると、徐々にだが平常時の色合いに戻っていくのが分かった。


「それって、ティターニア様の?」

「あぁ。多分シェルも使えると思うよ」

「う、うん」

「多分、これは俺たちにしか助けられないと思う」


 そう、普通ならこういう現象に陥っても教会などが治してくれる。だが、この女性が治っていない以上、教会では治せないってこと。そして、教会が治せないっていうことは、ロードリック領にもこのような現象に陥っている人がたくさんいるってことだろう。


 運よくティターニアの力で治せたということは、俺かティターニアの力を授けられたシェルしか助けることはできない。


 すると、男の子が泣きながらお礼を言ってきた。


「本当にありがとうございます。お礼は......」

「お礼なんていいよ。それよりもお母さんと一緒に居てあげな」

「うん」


 そして俺たちはこの村を後にして、ロードリック領へ向かった。


(本当に何が起こっているんだ?)


 ザイト兄さんの未来が見えないこと、そしてこのような現象が起こっていること。それを考えるとロードリック領で何かしらが起こっているとしか考えられなかった。


(リックさんが言ったことじゃなければいいけど)


 そう、リックさんが言ったように魔族が絡んでいたら、確実に厄介なことになるのは目に見えている。



 村をでて二日後、やっとロードリック領についた。そして中に入ると、案の定村でみた女性の現象がそこら中で起こっていた。


(クソ)


 本当に何が起こっているんだ。そう思いながらあたり一面を歩いていると、後ろから話しかけられた。


「リアム!」

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