第4話 アーデレス


 俺が暮らしている街と違いすぎて呆然としてしまった。人の多さ、服装に建築物まで何から何まで違かった。


「早く王宮に行こ」


 ミシェルにそう言われるのに対して、俺とリアは頷いて王宮に向かった。幸い、アーデレスに王宮らしき場所は一つしかなかったので、そこへ一直線で向かう。


(それにしてもすごい)


 言葉では表せない程、王宮は綺麗であった。


「俺もこんなところで暮らしてみたかったな」

「「え?」」


 二人は、俺の言葉に驚いた表情でこちらを見てきた。


「だって、こんなきれいな場所で暮らしてみたいと思うじゃん?」

「私はそう思わないな」

「私もです」

「え、なんで?」


 だって、街が発展していて、技術も最先端だと思う。そんな場所で暮らしていたら人生が楽しそうだと思うじゃないか。


「どの国であっても、良いことと悪いことはありますよ?」

「そうよ」

「例えば?」

「ついてきてください」


 リアに言われるがまま、ついて行くと路地裏にたどり着いた。


(!?)


「おねいちゃんたち、ご飯くれない?」

「ごめんなさい。ご飯はもっていないの。でもお金なら上げるわ」


 そう言って、子供たちに少量だがお金を渡してこの場を去った。


(あれは貧民の人たちだよな......)


「これを見てもリアムさんは暮らしたいと思いますか?」

「いや......」

「どの種族の国だって発展している国に暮らしたいという人は一定数います。ですが、物価が高かったり、貧民の精度がきちんとしていなくてあのような人達ができるのです」

「そ、そうだよな」


 俺が結局見ていたのは表面上な街並みなだけで、裏側を見ていなかったって言うことか。もっと俺の知らないやばいところがあるのだろう。


 そう言う面で、リアやシェルは王族である立場上知っていたって言うことか。


(俺も元貴族なのに何も知らなかった)


 少しふがいないと思った。実家から街の情勢などを聞かされていなかったとは言え、自分から調べようとしなかったことがはずかしい。


「まあ、少し酷な現実を見せてしまいましたね。ごめんなさい」

「いいんだ。俺もこういう事態が知れてよかったよ」

「じゃあ王宮に行きましょうか」

「あぁ」


 あの光景が頭から離れないまま、王宮の目の前にたどり着くと、近衛兵たちが俺たちの前に立って妨害してきた。


「本日はどのようなご用件ですか?」

「国王と会いたい。重要な情報があります」

「見ず知らずの人物を中にいれることはできません。おかえりください」


 まあわかっていたことだが、突っぱねられてしまったため、シェルが言う。


「エルフの第一王女、ミシェルです。中に入れてください」


 その時、近衛兵たちは怪訝そうな顔をして俺たちを見てきた。


「証拠はありますか?」

「これでどうかしら?」


 そう言って、シェルはエルフの紋章を見せた。すると、おじいさんの近衛兵が血相を変えて言った。


「来賓室でお待ちください。国王様にお伝えいたします」


 言われるがまま近衛兵の人に来賓室へ案内してもらった。


(すごいな)


 やっぱり、王族ってだけあり、人族でも紋章を見て知っている人はいるってことか。


 来賓室に入るとシェルが言う。


「やっぱり人族は種族差別があるんだね」

「そうですね」

「あぁ」


 シェルがエルフと言った時、近衛兵たちの表情が強張っていたし、街に入った時もシェルに対して嫌そうな表情をしていた。


(はぁ。こんなことならシェルにもフードを被せておけばよかった)


 そうしていれば、リアのように不快な思いをしなかったかもしれない。そう思いながらも、来賓室で十分ほど待っていると、先程の近衛兵のおじさんが中に入ってきた。


「国王様が王室でお待ちしております。ついてきてください」

「わかりました」


 そして、俺たちは王室の中に入って行った。

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