第2話 水浴び


 竜人国ドラゴノウスを出て数日が経ち、俺たちは森の中にいた。


「ねぇリアム、本当に告発しちゃっていいの?」

「いいんだ」

「でも......」


 ミシェルに続くようにアメリアも言った。


「そうですよ。本当にいいのですか......?」

「いいんだ。今回のことは俺個人の気持ちで何とかしちゃいけないから」

「そ、そうですが......」

「そうよ」


 二人は俯きながら俺に言ってきた。二人が俺に何を伝えたいのかはわかる。家族がやってはいけないことをした。それを報告するって言うことは、家族がどうなるのかなんて分かり切っていること。


 それでも、二人は家族を大切にしろって言いたいのだろう。


(俺だって救えるなら救ってもいいと思ってたさ)


 縁を切られたって、家族は家族だ。だから救えるなら救いたいさ。でも、ロードリック家はやってはいけないことをした。そんな人たちを救える程俺もお人好しではない。


「心配してくれてありがとな。でも俺にはミシェルやアメリア、それに竜人族ドラゴニュートの人たちだっている。もう大丈夫だよ」

「「うん」」


 そう、俺はもう一人じゃない。いつも行動してくれる仲間がいる。そして俺を力を信用してくれる人たちだっているんだ。


 そう思いながら人族の国---アーデレスへ向かった。



 アーデレスまで残り数日で着くというところで、近くに湖が見えた。するとミシェルが言った。


「ちょっと湖に寄らない?」

「いいですね!」

「あ、うん」


 湖か......。湖に行くのなんてティターニアと会った時以来だな。


(それにしてもなんで湖なんだ?)


 そう思いながらも、湖付近に着くと、ミシェルが俺に言う。


「先にリアムが水浴びしていいよ。その後私たちが水浴びするから」

「あ、はい」


(そう言うことか)


 道中湖なんて見つけることなんてなかったからわからなかったけど、みんな水浴びぐらいしたいよな。いつもは、軽く水魔法で布を濡らして体をふいていたけど、それじゃ体は綺麗にならないしな。


 二人と別れて湖に入ると、案の定さっぱりする感じがした。


(やっぱり水って重要だよな)


 汗をかいたままいると、体がベトベトして嫌になるし、どの種族だって水を飲まなくちゃ生きていけない。


(ふぅ~)


 湖に入りながらあたり一面を見る。


(きれいだな)


 エルフの国へ行った時も思ったけど、自然を目の当たりにしていると、心が安らいでいく気がした。


(たまにはこういう日もいいよな)


 そして、俺が湖から出てミシェルたちの元へ着くと、二人はなぜか顔を赤くしていた。


「どうしたの? 熱でもある?」


 二人は首と手を横に振りながら否定して


「私たちも湖に行ってくるね!」

「了解」


 そして二人が湖に向かった。


(......)


 何をすればいいのかわからず、あたり一面を見ていると、ふと二人のことを思い出してしまう。


「なんであんなにかわいい子が俺と一緒に居てくれるんだろう?」


 ミシェルとアメリアは、古代文字の解読をしたいから俺と一緒に居てくれるのはわかる。でも、それ以上に何かあるのかなって考えてしまう。


 それこそ、俺が竜人族ドラゴニュートの長にとがめられそうになった時、二人は自分の身を顧みずにかばってくれた。 


(あの二人と一緒に居れるのも後どれぐらいなんだろうな)


 そう、結局は古代文字の解読が終わったら終わってしまう関係だと思うと少し悲しくなる。


 その時、湖の方向から悲鳴が聞こえて俺はすぐさま向かう。すると、二人の裸姿をみてしまい、お互い目が合う。


「「「あ......」」」


 俺はすぐさま、木の裏に隠れて謝る。


「ごめん!」

「......。後で話そうね?」

「はい......」


 ミシェルが低い声で俺に言って、俺は元の場所に戻った。


(それにしても悲鳴は何だったんだ?)


 そう思いながらもその後、ずっと二人の光景が頭から離れず、棒立ちをしていると、二人が戻ってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る