第12話 竜人国との条約
突然、国王に言われたことで頭がパニックになってしまった。俺は横を向き、ミシェルとアメリアに目を向けると、二人も状況が整理できていないようであった。
「ん? 聞こえなかったか?」
「いえ、聞こえました。ですがなぜ私なんですか? 私個人ではなく、国単位で条約を結べばいいと思いますけど」
「あぁ。それも考えたさ。でも今回の一件で人族と条約を結ぶつもりはなくなった。だからリアムくんだけでも結ぼうと思ってね」
「そ、そうですか」
俺の実家のせいで人族は
「それでリアムくんよ。どうかな?」
「ぜひ、条約を結ばせていただきたいです」
「よかった。では順序が逆になってしまったが、条約の内容を説明しよう」
そこから淡々と国王が条約の内容を説明し始めた。内容として、リアムたちが危険な状況になったら
それ以外にも、細かい内容はあったが、特に問題がなかったので承諾する。そして、用意されていた書類にサインをして条約が結ばれた。
「今日からリアムと我が国は条約を結んだ。皆もリアムたちに力を貸してあげてほしい」
王室にいる人達の反応はまちまちであった。モールト王子のように嬉しそうにしている人もいれば、騎士たちのように不安がっている人たちもいた。
すると、国王が驚くような行動をした。
「皆も不安だとは思うが、今後の未来のために頼む」
ここにいる全員に頭を下げた。それを見た全員が驚いた表情になった。国王が頭を下げるということがどれだけのことか。それは俺たちが思っているよりも重いこと。
そして、不安そうにしていた人たち全員の表情が変わって、宰相が言った。
「国王様、お顔を上げてください。皆、国王様がここまでして断る人なんていません」
「本当に皆の者、ありがとう。そして今後も宜しく頼む」
こうして俺たちと
★
条約が結ばれてから数日が経ち、俺は城下町に出て街の復旧に勤めていた。
「リアムさん、先日は本当にありがとうございました」
「いえ、本当に無事でよかったです」
ここ数日間、城下町に出ていると、助けた人たちにお礼ばかり言われる。
(嬉しいんだけど、何とも言えないよな)
そう、助けたのは事実だが、結局は俺のせいでこの国が危険な目にあってしまった。それを考えると心が痛く感じた。
そして、アメリアが話しかけてきた。
「リアムさん、この後はどうするのですか?」
「う~ん、そうだね。まだ決めていないけど、実家のことを人族の国王に報告しようと思う」
「え? でもそれって」
「あぁ、わかっている。俺の身が危険になることぐらい。でも条約を結んだ以上、最低限やるべきことはやらなくちゃいけない」
血縁者であるからとか関係ない。今回起こったことは、報告しなくてはいけない内容だ。黙っていていいわけがない。
「わかりました。私はリアムさんについて行きます」
「そう言ってくれると助かるよ」
するとアメリアが顔を赤くしながら俯いていた。
(どうしたんだろう?)
こんな平穏な環境を俺は守りたい。だから危険な目に合うからついてくるななんてもう言わない。俺は、この力でミシェルやアメリアたち全員を救うんだから。
二人で話しているところにミシェルもやってきて、アメリアの耳元に何かを言った。すると、アメリアも顔を赤くしながら頷いていた。
(??)
「どうしたの?」
「なんでもないよ~」
「は、はぃ......」
そして、俺たちは人族の王宮に向かうのであった。
★
この時、ロードリック家がどんな立ち位置にいて兄が今後、世界を危険にさらす過ちをするのかまだ分かりもしなかった。
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