第4話 ワイバーン討伐


 兄さんと話した後、すぐさま街を出ようとしたが、後ろから数人がつけてきているのを感じた。


(クソ!)


 兄さんと会ったからとは思っていたが、もう、俺たちがいることをわかっている奴はいるってことか......。


 俺は頭痛を顧みずに魔眼を使い、未来を見る。そして一つだけ安全に通れる道を見つけて、その道を通って行った。


(本当にギルドマスターには感謝しても仕切れないな)


 こうして、故郷である街を後にした。


(やっとか撒いたか......)


 魔眼を使って未来を見ることは、精々少し先の未来。だから、予知で見た中で一番安全なルートを通ってきても、それが確実に安全なルートとは限らなかった。今回もどれぐらい追いかけられたかわからなかったが、やっと刺客の気配が消えた気がした。


「本当にリアムの家族って......」

「あぁ。本当に悪い」

「リアムは悪くないよ。逆にリアムは......」

「......」


 ミシェルはそう言いかけながら、哀れみな目でこちらを見てきた。


(まあそう感じるよな)


 普通、家族に殺されそうになることなんてありえないことだ。


「それで、結局、これからどうするの?」

「そうですね。まずは竜人族ドラゴニュートの国に向かった方がいいんじゃないですか?」

「あぁ。古代文字の解読が最優先だろうな」


 逃げることに専念しすぎて、本来の目的があいまいになって来ていたので、全員でもう一度確認をした。


「古代文字を解読した後は?」

「......」


 はっきり言って竜人族ドラゴニュートの国に言った後のことなんて考えていなかった。いや、考えられなかった。なんせ、本当はもう少し母国にいる予定だった。


 それに、もうあの街には戻ることが出来ない。俺たちにとって最も危険な場所になってしまったのだから。


(本当にごめん)


 二人には、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。今回の騒動の原因は、俺である。俺さえいなければもっと安全に進めていたのは確かだ。


 俺が俯きながら考えていると、アメリアが肩を軽く叩きながら言った。


「今後のことはその時、考えよ?」

「アメリアの言う通り、その時になったら考えればいいね! その場で決める冒険もいいしね」

「あ、あぁ」


 二人の言う通り、その場で考える冒険もいいかもしれないな。



 数日が経ち、竜人族ドラゴニュートの国へ向かっている途中で、一匹の大きなドラゴンを目撃した。


「「「!?!?」」」


 馬車を止めて、ドラゴンの様子を見る。


(あれがドラゴン......)


 こんな場所に存在しているのか。そう思いながら、ドラゴンが上空から消え去っていくまで目を話すことが出来なかった。


(よかった......)


 はっきり言って、ドラゴンがこちらに攻撃を仕掛けて来た時点で、俺たちはひとたまりも無く死ぬだろう。それにしても、本当に竜人族ドラゴニュートの国に近づいているんだな。


 安直ではあるけど、ドラゴンが生息しているってことは、竜人族ドラゴニュートの国へ近づいているって証拠だと思う。その時、ミシェルが肩を叩いてきた。


「さっきのがドラゴンなんだよね」

「そうだと思う。俺も初めて見たけど」

「もう、ドラゴンなんて見たくないな」

「あぁ」


 もう一度見て、今みたいに見逃してくれるとも限らない。


 そこから、馬車を少し走らせた時、ドラゴンらしき存在をまた見つけてしまった。


(またかよ......)


 そう思いながら、良く見つめると先程のドラゴンと比べてものすごく小さいのが分かった。


(ワイバーンか?)


 ドラゴンの中で一番弱いとされているワイバーン。だけど、弱いと言ってもドラゴンの中での話であり、冒険者ギルドではBランクモンスターに指定されている。


 すると、こちらに気付いて攻撃を仕掛けてきた。


「ミシェル! アメリア!」

「「わかっている」」


 俺たちはすぐさま戦闘態勢に入って、ワイバーン討伐を始めた。


 いつも通り、俺が前衛、ミシェルが中衛、アメリアが後衛、の構成で戦い始める。


 シルフの力を借りて、体を軽くしてもらいつつ剣に風魔法を付与してワイバーンに斬りかかる。だが、それを見切っていたかのようにワイバーンは上空に逃げ去っていった。


(クソ!)


 そして、ワイバーンが俺の方へ向かってきた時、アメリアが守護プロテクトを張ってくれてワイバーンの攻撃を防ぐことが出来た。


(流石だな)


 ワイバーンが怯んでいるのを見逃さずにミシェルが風切エア・カッターを使ってワイバーンの翼の一部を斬り落とす。


「グギャァァァァァァ」


 ワイバーンが地上に落ちてきたとき、俺は、風魔法を付与している剣でワイバーンの首に目掛けて斬りかかる。すると、あっさりと斬り落とすことが出来た。


「はぁ、はぁ......」

「やったんだよね?」

「そうだと思いますよ」


 もう一度、ワイバーンが死んでいることを確認して、一息つく。


(やっぱりすごいな)


 シルフの力がすごいことはわかっていた。だけど、ワイバーンの首すらすんなりと斬れるとは思ってもいなかった。


(この力があって、尚魔族に勝てなかったってことだよな)


 ここまで強力な魔法があるのに、魔族に封印されてしまったってこと。そう思うと、今後のことが不安で仕方がなかった。


 そして俺たちは、あたり一面で少し休憩を取ろうとした時、大人と子供の竜人族ドラゴニュートと遭遇する。


「え? あ、大丈夫ですか?」

「あ、は「おい! 何をやっている!」」


 突然聞こえた声のする方向を向くと、竜人族ドラゴニュートの精鋭たちが、血相を変えてこちらに向かってきていた。

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