第3話 戻って来い


 ギルド内に入ると、今まで感じなかった異様な空気間を感じた。


(??)


 何が起きているんだ? 入った瞬間、先程まで冒険者たちが騒いでいたのに、一瞬にして静まってしまった。


「え?」

「やっぱりミシェルもそう思ったよな」

「ど、どう言うことですか?」


 俺とミシェルはギルドの空気間がおかしなことに気付いたが、アメリアはギルド自体初めてだったのでその空気間を理解することが出来ないでいた。


「何かがおかしい」

「そうね」


 あたり一面を観察しながら受付嬢のところに向かったところで、ギルドマスターが出てきてくれた。


「よかった......。リアムたち、こっちに来てくれ」

「え? あ、はい」


 ギルドマスターに言われるがまま、来賓室に入った。すると、ギルドマスターの顔が少し怖い雰囲気が感じ取れた。


「どうなっているんですか?」

「感じたか。単刀直入に言う。早くこの街から出て行った方がいい」

「え?」


 そう言われて、前回の刺客を思い出させる発言をされた。でも、普通に考えて、俺たちがこの街に入ったのは今日なのに刺客を出むかせれるはずがない。


 それはミシェルもわかっていたようで、立ち上がって何かを言おうとした。その時、ギルドマスターが真剣な顔で言う。


「まあ話を聞け」

「はい」


 ミシェルを座ったのを確認してから話の続きが始まる。

 

「この前、お前たちが古代文字のありかを発見しただろ? それが今回の要因だ」

「要因って......?」

「簡単に言えば、ロードリック家が動いた」

「......」


(実家が動いた?)


 なんで......。古代文字がこの街から発見しされたら逆に喜ばしいことだろ。それなのになんで動き始めるんだ?


「普通なら古代文字を発見されたら喜ぶはずだ。だがな、お前たちが。いや、お前が見つけたのが悪かった」

「俺が悪い?」

「あぁ。俺も軽率であったが、古代文字を発見した人物としてお前たちの名前を挙げた。そしたらどうなると思う?」


 どうなるって言われても、そんなのわからないだろ。


「結論から言えば、実家を追放した奴が世間で有名になったってことだ。そして何んで、そんな優秀な奴を追放したんだってロードリック家が叩かれ始めた」

「......」


(そう言うことか)


「それで、この街に一つ、噂が流れた。リアムとその仲間たちを暗殺したら報奨金が流れると。それに加えてロードリック家の後ろ盾もつくとな」

「そんなのおかしいじゃない!」

「そうですよ! 私たちは何も悪いことをしていないのに!」


 そうだ。俺たちは何一つ悪いことをしていない。結局は実家を追放されたのは父さんが決めたことであり、俺のせいにはならない。そして、追放するときにはすでに俺が冒険者としてやっていることも知っていながら辞めろとは言われなかった。


 結果として、古代文字を発見したわけだが、それも世界から見たらいい方向に進んでいる。何一つとして俺たちが悪いことをしたわけじゃない。


 でも、真実は時に悪くもなる。それが今回だ。だからこそ、俺たちを殺そうとしているんだろう。


「あぁ。俺もわかっている。でもな、ロードリック家が動き出した以上、俺一人では庇いきれない。だからお前たちはいち早くこの街から出て行ってほしい。だから、これが俺ができる最大限のことだ。お前たちには死んでほしくないからな」

「......。分かりました。ですが、アメリアを俺たちのパーティ登録だけしておいてもらえませんか?」


 今後のことを考えたら、絶対にアメリアは冒険者になっておいた方がいい。身分証明書にもなるし、パーティのランクが上がるにつ入れて、今なっていなかったら俺たちと差が開いてしまうから。


「わかった。今日中にでも頼むぞ。俺も冒険者や他の奴らを止められて一日だ」

「ありがとうございます」


 俺たちはギルドマスターに言われた通りに竜人族ドラゴニュートの国にすぐさま向かおうとした。


その時、ザイト兄さんが俺たちの目の前に現れた。


「よぉリアム」

「ザイト兄さん......」


 ギルドマスターから聞いていた通りなら、兄さんは俺の事を恨んでいるはず。それなのに、今目の前にいる姿にそんな面影は一ミリも感じられなかった。


「まず、古代文字の発見おめでとう」

「あ、ありがとう」


 すると、先程の雰囲気とは一変して、横にある壁を殴りつけた。


「お前が古代文字を見つけたせいで俺たちがどうなっているか知っているか?」

「そんなの私たちには関係ないじゃない! あなたたちがリアムを追放したのが悪いじゃない!」

「まああんたが言うのも一理ある。だからよ、リアム。実家に戻ってこないか?」

「え?」


(実家に戻って来いだって?)


 今更言われてももう遅いよ。もっと......。もっと早くその言葉が聞きたかった。もう俺はやるべきことを見つけたのだから。


「俺が親父には進言してやる。だから戻って来い。まだ間に合う」

「そ、それは無理だよ。俺にはやるべきことがあるから」

「あぁ? 本当にいいのか? お前たちの今の立場、わかっているよな?」

「......。それでもごめん」


 今どういう立場に置かれているかなんてわかっている。それでも、もう戻るつもりなんて無い。


「そうか。この選択を後悔するなよ。次会う時は......」


 俺を睨みながらザイト兄さんはそう言ってこの場を去っていった。

 


 この時、ザイト兄さんが禁術に手をかけようとしていたのをまだ俺たちは気づきもしなかった。そして、父さんがこれから何をしようとしているのかも。

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