第2話 俺たちの噂


 屋敷に戻った後、俺たち全員が疲れ切って就寝してしまった。そして翌朝、王室でカイル様に言われる。


「古代文字の情報だが、竜人族ドラゴニュートの国にあると聞いたことがあるから、次はそこに向かってみたらどうだ?」

竜人族ドラゴニュートですか......」


 竜人族ドラゴニュートと聞いてあまり良い噂は聞かない。なんせ、どの種族とも交友関係を結ばない国だから。それに国がある場所は、確か元居た街から一ヶ月程離れた場所。ここから正反対の場所であった。


「あぁ。でも行くだろう?」

「そうですね」


 交友関係を結ばない国だからって行かないわけにはいかない。古代文字のありかは、多いわけじゃない。それに、現状知りえている場所はここしかない。


「後、リアムくんにはミシェルの専属護衛をしてもらいたい」

「え?」


 カイル様が言ったことに対して、ミシェル本人も驚いていた。


(専属護衛?)


 なんだそれ? 聞いたことないぞ? それに俺でいいのか? 俺とミシェルとでは種族が違う。それに俺は他種族から見たら劣等種である。


「無理か?」

「いえ、無理ではないですけど、本当に俺でいいのですか?」

「あぁ。ティターニア様と契約している人が娘の護衛をしてくれるなら願ってもない事だ」

「そ、そうですか」


 まあ、国王がそう言うならいいけどさ。そう思いながらミシェルの方を向くと、顔を赤くしながらチラチラとこちらを見て来ていたので、俺は軽い笑顔を向けた。


「では決定だな。後は......。これに関しては私の方でやっておこう」


(??)


 その時、ニヤッとしながらミシェルに言った。


「ミシェル。きちんと捕まえるんだぞ?」

「お、お父様!!」

「ははは!! じゃあ楽しみながら頼んだぞ!」


 二人の光景を見ながら、俺たちはこの場を後にした。そこから、エルフの国で、必要物資を集めて、最後にティターニアへ会いに行った。


 今回は、みんなに見える姿で現れて話しかけてくれた。


「もう行くのですね」

「「「はい」」」

「気を付けてください。そして、私を救ってください」

「あぁ」


 ティターニアに言われるまでも無く、助けるよ。それが俺がなすべきことであるのだから。


「ミシェル、少しこっちにきてください」

「え?」


 ミシェルは言われるがまま、ティターニアのもとに向かうと、ミシェルが徐々に光出した。


(え?)


 何が起きているんだ? 


「これで、ミシェルにも少しばかり私の力を授けました。湖に入ってくれた時、私と波長が合っていましたからね。まあ私の子孫なので当たり前ですが」

「あ、ありがとうございます」

「えぇ。後......」


 ティターニアがミシェルに何かを言うと、顔を真っ赤にしながら俺の方を見てきた。


(??)


 そして、ミシェルがこちらに戻ってきて手で顔を仰ぎながら言った。


「さ、早く行こ」

「あ、うん」


 俺とアメリアは何なのかよくわからないまま、ミシェルの後をついて行った。


{またな}

{はい}



 馬車の中に入り、街に戻り始めた。その道中、色々と噂を聞くことが出来たが、何一つとして古代文字の情報は流れてこなかった。そして一つ、俺たちに関係している噂を耳にする。


『古代文字を発見した奴がいるらしい。それに、エルフの国では古代文字が解読されたらしいぞ!』


(これ、俺たちのことだよな?)


 古代文字を発見したって言うのは、多分シルフの時のことだろう。そして、エルフの国って言うのは、まあ紛れもなく俺たちだよな。


(それにしても、早くないか?)


 そう、まだエルフの国を出て、二週間程しか経っていないのに、もうこんなところまで情報が流れていることに驚く。それは、ミシェルとアメリアも思っていたようだった。


「これ、私たちのことだよね?」

「そうだな」

「なんかすごいことになっていますね」


 アメリアの言う通り、こんな大事になっているとは思いもしなかった。だが、ミシェルは現状を予想していたような雰囲気で言った。


「古代文字自体発見するのが難しのに、解読したなんて聞いたら誰だって話すって」

「そうなのか?」


 ここ最近で二回も古代文字を見ていたから、親近感しかわいていなかった。


「そうよ! それに今まで古代文字を解読した人なんていないんだからね!」

「え?」


 それを聞いて俺は驚く。


「逆に考えてみてよ。魔族が古代文字を封印の道具にしていたのって、解読できた人が居ないからってことじゃない」

「あ~。言われてみれば」

「でしょ!」


 ミシェルの言う通り、魔族が封印の道具として古代文字を使っているってことは、魔族以外は現状解読できる人が居ないということなのかもしれない。


(ってことは、俺......)


 そこで少し悪寒が走った。もし、俺が古代文字を解読できると魔族に知りわたったら。それを考えるだけで少し恐怖すら感じた。



 道中何も無く街に着いた。


(やることだけやって、刺客が来る前に早く出よう)


 街を歩いていると、案の定俺たちの噂でもちきりであった。


「まず、アメリアの冒険者登録と、パーティに入れよっか」


 そう言って、冒険者ギルドへ向かい始めた。

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