1.2章 実家の落ちぶれ

第1話 湖での休暇


 屋敷に戻り、ティターニアと契約したことをミシェルのお父さんたちに報告する。すると、驚いた顔をしながら言われた。


「ほ、本当か......」

「はい」


(まあ驚くよな)


 ミシェルに古代文字を解読してほしいと頼むぐらいだ。驚くに決まっている。どれぐらいティターニアが封印されていたかわからない。だけど、封印を解いたということは、エルフの国にとっての第一歩になったはずだ。


 真剣な顔をしながらミシェルのお父さんが咳ばらいをして言った。


「今回はありがとう。後、ミシェルのことで自己紹介がまだだったね。カイル・スチュアートだ。本当になんて言ってお礼をしていいか」

「お礼なんていいですよ! 俺がやりたくてやったまでですので」


 そう、これに関しては俺の意志で行ったことだ。ミシェルに頼まれたのがきっかけではあったけど、その後やりたいと思ったのは俺だ。だからこれは紛れもなく俺の意志である。


「そう言ってくれるとありがたい」

「パパ! でもこれで終わりじゃないの」

「え? 後、この場ではお父さんか国王と呼びなさい」


 すると、俯きながらミシェルが謝っていた。


「それで、終わりじゃないって言うのは?」

「うん。ティターニア様はここ以外にも封印されているの」


 ミシェルはそう言いながら、淡々と説明を始めた。それを聞くと、カイルさんを含んだ全員が驚いていた。


「じゃあ、封印がすべて解けたわけではないってことなのか」

「はい」


 周りの人たち全員が、先程の喜びとは一転して俯き始めていた。それを見て、俺も少し申し訳なくなる。


(最初に説明しておけばよかったな)


「まあ祠での封印が解けただけよかったよ」


 そう言った途端、何か思いついたかのような顔をして、周りにいる人たちをこの部屋から出した。そして俺たちに話し始めた。


「祠に行く際、湖は見たよね?」

「はい。見ましたけど」

「その湖なんだけど、ティターニア様の聖水とも言われているんだ。俺も良くはわからないけどね」


 ティターニアの聖水って......。なんか怖いな。


「湖に入ったものの中で選ばれた者のみが、ティターニア様の力を受けられると言われている。だから三人とも一回湖で休暇でも取ってきたら? 私もやらなくちゃいけないことがあるし」


 すると、ミシェルは飛び跳ねるように喜び始めた。


「だってさ! リアムにアメリア早く行こ!」

「あ、うん」


 俺とアメリアはミシェルに圧倒されながらこの場を後にした。



 ミシェルとアメリアは、湖に入る用の水着を選ぶから先に言ってろと言われたので、湖に一人でいた。


(は~。まずは着替えとくか)


 俺は、湖に入るために水着へ着替えてあたり一面をボーっと眺め始めた。


(本当に綺麗だな)


{でしょ?}

{え?}


 突然ティターニアに話しかけられて驚く。


{なんで来れるのって思ってるでしょ}

{そりゃあ} 

{私だって、祠付近なら少しの間でれるんだよ!}

{そうなんだ}


 てっきり、祠にしかいれないと思っていた。


(よかった)


 祠に一人でずっといるなんてティターニアであっても耐えきるのは至難だと思う。だからこそ、祠付近でも出れると聞いてホッとした。


{そう言うと、湖ってティターニアの聖水なの?}

{!?!? ち、違うよ? でも、あそこに入った人の中で、私と波長が合う人は、私の恩恵が少しは受けられるかもだけどね}

{そうなんだ}


 あれはあながち間違っていなかったってことか。すると、ティターニアが俺には聞き取れない声でしゃべっていた。


{ありがとね、リアム。あなたは私の恩人よ}

{え?}


 あまりにも声が小さすぎたので、聞き直してしまう。するとそっぽを向きながら指をさされた。


{何でもないよ~。それよりもあの子たちが来たわよ}


 ティターニアに言われた通り、ミシェルが俺に向かって手を振っていた。俺がミシェルに気を取られている時、ティターニアはこの場から消え去っていた。


「リアム遊ぼ~」

「あぁ」


 俺は上着を脱いで二人を待つと、なぜか二人はまじまじと俺を凝視していた。


「ど、どうしたの?」

「「な、なんでもない(よ、です)!」」

「あ、そうなんだ」


 そして二人も上着を脱いで、水着姿になった。


(あ......)


 二人から目が離せなかった。それほど綺麗であった。ミシェルは、上下白色で腰に小さなフリフリが付いていた。そしてアメリアは、上下薄水色で、下はスカートらしい水着姿であった。


 すると、ミシェルは、少し顔を赤くしながら言ってくる。


「な、なによ」

「あ、ごめん。二人とも似合っていて、ついね......」

「あ、ありがとぅ」

「ありがとうございますぅ」


 お互い、変な空気間になりながら湖で半日ほど休暇を取った。その時、木の陰からティターニアがこちらを見ていたのを誰も気づかなかった。

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