第12話 祠
翌朝、ミシェルとアメリアと共に古代文字があるとされている祠に向かい始めた。なぜかミシェルは笑顔になりながら歩いていたので、つい質問してしまう。
「なんでそんなに楽しそうなの?」
「だって三人で初めてこなすクエストだよ! それも私の知っている場所で! 楽しみに決まっているじゃない!」
「そ、そっか」
俺にはよくわからないけど、そう言うもんなのかな? まあ、三人でこなす初めてのクエストって言うのは少し嬉しいけどさ。
「リアムさんって、どんな風に古代文字が解読されているのですか?」
「え? どんな風って言われてもね......。ただ魔眼を使っているとしか」
「そうではなくて、どのような感じに見えるのかなって思いまして」
「あ~。なんか魔眼を使ったら、文字が化けて読めるようになるんだ」
そう、魔眼を使ってない状況だと、みんなが見えている古代文字そのままだけど、魔眼を使うと古代文字がなぜか読めるようになっていた。
「そうなんですね。魔眼を持っていない私からしたら、想像できませんけどすごいですね」
「あはは。まあ俺の実力ってわけじゃないけどね」
「「それは違(うよ、いますよ)!!」」
「え?」
だって、俺が今まで努力をして身に付けたわけじゃないから、実力とは言えないんじゃないか?
「リアムが使えるってことは、実力ってことだと思うよ」
「そうですよ!」
「あ~。そうなのかな」
まあ二人が、そう言うならそうなのかもしれない。でも、俺の中での実力って言うのは、死に物狂いで努力してやっと身に付けた技などを実力って認識していたから。
「まあ、いいや。それよりも、見えてきたよ。あそこが湖だよ!」
「「きれい......」」
まず、頭に浮かび上がってきたのは、率直にきれいだった。俺が住んでいた街の近くにあった湖は、汚染されていたりして透明とはいいがたい湖だった。まあ、少し離れた場所にはきれいな湖もあった。
だけど、目の前で見ている湖はそう言う次元のレベルではなかった。浸透している水。そして奥の方には木などが生えていたが、それをもきれいと思わせるほどの美しさ。
「でしょ~。私も子供の頃はよくここに来たんだ!」
「え? 祠の近くに? 危なくないの?」
「祠って言っても、モンスターが出るわけじゃないから、危なくないよ」
「そうなんだ......」
それを聞いて少し安心した。モンスターが出たら、どうやって戦うかなども考えていたから。
もう少し湖を眺めていると、少し眼が熱くなった。
「うぅ」
「?? リアム、もしかして」
「つ、使ってないよ!?」
「そう、ならいいけど」
ミシェルがジト目でこちらを見てきたから、瞬時に言い訳をしてしまった。
(それにしても今のは何だったんだ?)
今までこんなこと起きたことがなかった。それこそ、眼に魔力を込めた時でさえ、こんな現象が起きたことがなかった。
「まあ、祠に入ろっか」
「「うん、はい」」
ミシェルに続くように祠の中に入って行った。
(イメージとは違うな)
シルフが居た時のダンジョンは、外装は汚かったが、内装は綺麗であった。それに比べて、今来ている祠は、外装は綺麗であったけど、内装はお世辞にも綺麗とは言えなかった。
そう思いながらも徐々に進んでいくと、一つの銅像を見つけた。その銅像には、ツルなどが付いていて、何とも言えなかったが、銅像自体は美しいと感じた。
「この像がティターニア様だよ」
「「え?」」
ミシェルに言われたのを、アメリアと二人で驚く。
(これがティターニア様?)
だったら、なんで手入れなどをしていないんだろう? 流石にエルフの国の近くにあるんだから、誰かしらが手入れをしていてもおかしくはないはずなのに。
「まあ驚くのも無理ないよね。外は手入れしてあったのに中は誰も手入れしていないんだもんね」
「そうですね」
やっぱり外装は手入れがしてあったからあんなに綺麗であったのか。
「この場所ってね、神聖な場所になっているから内部に入れる人って限られている。だから内部を手入れする人が居ないんだ。あまり中に入っちゃいけないことになっているしね」
「俺たちが入ってもよかったのか?」
「それは大丈夫。私がその役目の人であるから」
「......。そうなんだ」
役目って言うのは、前に言っていた古代文字の解読ってやつだよな。
その後も、三人で内部を探索しながら全員でおかしな点などが無いかを確認し始めた。すると、ミシェルが険しい顔をしながら言った。
「ここって誰か触った?」
「俺は触ってないけど」
「私もです」
「......」
ミシェルが指さしたところを見ると、誰かが触った痕跡が残っていた。
(誰なんだろう?)
その後も、何カ所か誰かしらに触られた痕跡が残っていたのを確認できた。そして、徐々に奥へ進むにつれてその痕跡が大きくなっていったのが分かった。そして、誰かしらに話しかけられた。
「あれ? こんな場所に入る人が居るなんて珍しいですね」
「「「え?」」」
三人で目の前を凝視すると、一体の魔族が出てきた。
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