第11話 俺にとって大切な人
(か、可愛すぎるだろ......)
いつもと違う服装で、少しドキッとしてしまった。いや、違う。多分、お風呂上りであり、いつもより色気があったからだろう。
「あ、あんまりじろじろ見られると恥ずかしんだけど......」
「ごめん。つい可愛くて」
「あ、ありがとぅ......」
お互い、何とも言えない空気になってしまった。そして、ミシェルが手で顔を仰ぎながら言った。
「今日はごめんね? パパとママがいろいろと質問しちゃって」
「いいよ。本当に大切にされているんだね」
(いいな......)
質問してくるってことは、それだけ家族がミシェルのことを大切に思っているってこと。それと同時に、ものすごく羨ましいと思ってしまった。俺は家族に愛されたことがなかったのだから。
「あ、ごめん」
「違う違う! もう吹っ切れているから気にしないで!」
本当は吹っ切れているわけじゃない。吹っ切れるはずがない。俺だって家族に愛される生活を一度でも送って見たかった。でも、今言った発言は、そう言う意味を込めて言ったわけじゃない。だからわざと嘘をついた。
「ならよかった」
「それでどうしたの?」
お互い気まずい状況になって、空気が悪くなっていたので話題を変えた。ミシェルの実家とは言え、男の部屋に来るということは、それなりに重要な話があるのだと思う。すると、ミシェルが少し不安そうな顔をしながら言われた。
「もしかしてだけど、魔眼を使った時、何かしらの代償ってあったりする?」
「......」
無いとは言い切れなかった。予知を使った際、頭痛が起こること。今はこれしかないけど、もしかしたら他にも代償というものがあるのかもしれない。
「正直に言って」
「まあ、軽い頭痛だけだよ」
心配な点はあるけど、あくまでそれは予想であって、実際に怒っているわけではない。その予想を言って、明日支障を起こすわけにはいかない。
「嘘だよね?」
「え?」
ミシェルにそう言われて少しビクッとしてしまった。
(もしかしてバレてる?)
「軽い頭痛なはずないもん。何度か見たけど、いつも顔が真っ青になっていたし」
「あ~。まあそうだね。軽くはないね」
「それって、どっち? 未来を見る方?」
「まあそうだね」
流石と言うべきか、どちらの魔眼を使ったら頭痛が起きるのか、把握されていた。
「じゃあ未来を見る魔眼は使わなくていいよ。普通に探そう」
「でも......」
シルフを見つけた際だって、予知を使わなければ見つけることが出来なかっただろう。そう思うと、使わないって選択を決断することが出来なかった。
「でもじゃないよ。それにリアムはもっと自分を大切にして! 私たちができることで探せばいいじゃない!」
「そ、そうだね」
ミシェルの迫力に押されてしまった。こんなに怒ったミシェルを見たのは、多分初めてだと思う。だけど、それ以上に俺のために怒ってくれるミシェルに対して、ものすごく嬉しくも感じた。
「約束だからね! もし使ったら......。わかってるよね?」
「はい」
「このことは、アメリアにも伝えておくからね! おやすみ!」
そう言って、俺の部屋を出て行ってしまった。
「おやすみ、ミシェル。後、ありがとな」
本当にこんな俺のために怒ってくれてありがとう。俺を救ってくれてありがとう。ミシェルが居なかったら俺はどうなっていたかわからない。路頭に迷っていたかもしれない。もしかしたら、すでに死んでいたかもしれない。
だからこそ、ミシェルには感謝しても仕切れない。
(俺は、ミシェルのために頑張らなくちゃ)
そう決意した。一度は絶望の果てまで落ちた人生。それを救ってくれた人が目の前にいて、困っているなら助けてあげたい。
(本当に俺は恵まれているな)
そう思いながら就寝をした。
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