第10話 エルフの国

 アメリアさんが仲間になって、パーティ内も賑やかになった。最初こそ、アメリアさんが俺たちに対して気を使ってきていたけど、それも時間が過ぎる事に打ち解けていけた。


「それにしてもリアムくんも大変だったね」

「はい。規模は違いますけど、お互い追放された身ですからね」


 二人で話ながらしんみりとしたところでミシェルが大声で話しかけてきた。


「見えてきたよ。あれがエルフの国!」

「「あれが......」」


 イメージしていた通りの雰囲気であった。それにしても、ミシェルが居なければエルフの国にたどり着くことが出来なかった。


 奥が見えないほどの森林に加えて、森の中は霧で分かりづらくなっている。そしてエルフの国に近づくと幻影魔法が使われているのが分かった。


 馬車がエルフの国の関所にたどり着いたところで、二人の男性が俺たちを見るや、一礼をしてきた。


「「おかえりなさいませミルシェ様」」

「うん! この二人は私の客人だから粗相のないように伝えておいて。私はお父様のところに向かうから」

「「はい。分かりました」」


 馬車を走らせながら街並みを見て、どれだけ人族と違う生活をしているのかが実感できた。すべてが木造の家で、大樹の上や、自然豊かな場所に家が建っていたりしていた。


「それにしても、ミシェルって本当に王族なんだね」

「え? 信じてなかったの?」

「違うよ! 門番の人たちの反応を見て、より実感したって言うかね」

「あ~」


 あの光景を見るまで、王族だと頭の中ではわかっていても、理解をしていなかった。でも、馬車を走らせている最中、ミシェルを見るや住民たち全員が一礼をしていたので、本当に王族だと実感した。


 そこから、数分走らせたところで、馬車が止まった。目の前にある家を見て圧巻する。


(これが、ミシェルの家......)


 山脈に滝が流れているところに大きな建築物。


「す、すごいね」

「そう? 別に普通だと思うけど」


(いやいや、普通じゃないから!)


 そう思いながら、アメリアの方を向くと、驚きはしていたが俺とは違い

、平然としていた。


「じゃあ中に入ろっか!」


 ミシェルに言われるがまま中に入ると、数人の使用人が驚いた顔をしながら道案内をしてくれた。その際、俺とアメリアのことを少しばかり異様な目で見られた気がした。


 そして、大きな部屋に入ると、ミシェルと顔がそっくりな男性と女性が座っていた。そして、女性の方が話し始める。


「おかえりミーちゃん」

「ただいまお母さま、お父さま」

「あぁ。それで後ろにいる二人は誰だ?」


 ミシェルのお父さんが、俺の事を少し睨みつけながら言った。


「この二人は、今一緒にパーティを組んでいる人なの! 人族の男性がリアムで、木人族の女性がアメリア」

「今の人族は眼の色が違うのか」

「それは違うよ。リアムが魔眼持ちなだけ」


 二人は俺の事を驚いた表情をしながらじろじろと見てきた。そして、ミシェルのお父さんが咳ばらいを挟んで言う。


「それで、鬼人族の子がいるって言うけど、この子の立場がわかっているのか?」

「うん。でも私となすべきことが一緒だったからパーティを組んだんだ」

「そうか。ならいいが、きちんと結果を出さなくちゃ国民たちは認めてくれないぞ。それは人族であるリアムくんも一緒だ」


 すると、ミシェルは少し笑みを浮かべながら俺を一瞬見て、二人に言った。


「リアムは古代文字を解読したよ」

「「え?」」

「まあ、驚くよね」


 ミシェルのお父さんがこちらに寄ってきて肩を持たれる。


「本当か!?」

「あ、はい。一応は解読しました」

「それで結果は何だった?」

「リアム、見せてあげれば?」


 ミシェルに言われるがまま、手の甲に魔力を込める。


{あまり人に見られたくないから、最低限の人にしてね}

{わかった}


「ミシェルのお父さんとお母さん以外はこの場から出て行ってもらえませんか? そうでなければお見せすることはできません」

「......。わかった。全員下がれ」


 ミシェルのお父さんの命令で全員が下がったところで、シルフを見せた。


「「!!」」

「リアム~。何をすればいいの?」

「う~ん。わからないけど、何もしなくていいんじゃないかな?」


 すると、二人が驚きながらも言った。


「「精霊様......」」

「うん! よろしくね?」


 そこから、ミシェルのお父さんに質問攻めを受けた後、部屋に案内された。そして夕食を取っている時、ミシェルとはどのような関係なのか。それ以外にも様々な質問をされた。昼とは違う圧がすごかったけど、ミシェルがカバーを入れて一息付けた。


(ナイス!)


 最後にエルフの国のどこに古代文字があるのかを聞く。


「どこに古代文字があるのですか?」

「ここから数キロ離れた湖の近くにある祠にある。ミシェルが場所を知っているから、明日にでも行ってみると良い」

「ありがとうございます」


 夕食も終わり、部屋に戻り一息ついている時、部屋にノックされた。


「リアムいる?」

「ミシェル?」

「うん。今話せる?」

「あぁ」


 俺はミシェルを部屋の中にいれた。

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