第2話 魔眼の開花


 ダンジョンの内装は、思っていたよりも綺麗であった。壁や床が崩壊寸前であるのをイメージしていた。だがこのダンジョンは、手入れでもされていると思わせる壁に、奇妙な模様をしている床。


(これがダンジョンなのか?)


 少し疑問に感じた。本などで読むダンジョンにはモンスターが出てくると記されていた。だけど今のところ、モンスターの居る気配はしない。


 あたり一面を見ながらダンジョン探索をしていると、あっという間に行き止まりになってしまった。


(え?)


 まだ歩いて十分も経っていない。それなのに、もう終わりなのか? そこでやっと理解した。このダンジョンがなんで、低ランク冒険者が受けられるクエストなのかが。


 普通ダンジョン探索とは、高ランクの冒険者が受けるクエストであった。なのにこのクエストだけは俺みたいな低ランク冒険者でも受けることができた。


 多分だけど、前は高ランク冒険者たちにクエスト依頼が行っていたが、何も収穫が無く、モンスターも出てこない結果に終わったため、低ランク冒険者でも受けられるクエストまで降格したのだろう。


(高ランク冒険者が見つけられないのに、俺なんかが見つけられるわけないじゃんか......)


 そうは思いながらも、来たからには最低限ダンジョン探索しなければならないという使命感から、ダンジョン内を見回し始めた。


 そこから数十分経った時、ダンジョン入り口で見かけたエルフらしき女性と再会した。お互いハッとした顔で目が合う。そしてつい、話かけてしまった。


「あなたもダンジョン探索ですか?」


 すると、女性は話しかけられたのに驚きながらも頷きながら、返事をしてくれた。


「そう言うってことはあなたもですよね?」

「はい。このダンジョン何もないですね」

「そうですね」

「......」


 ここで話が終わってしまい、お互いの空気が悪くなったところで女性が話しかけてきた。


「左右の眼の色が違いますけど、何か意味はあるのですか?」

「いえ、特に何もないですよ」


 この人が言う通り、何か意味のある眼であったらよかったのにな......。すると、疑う雰囲気を出しながら俺に近寄ってきて眼を見てきた。

 

「本当ですか?」

「そ、そうですけど」

「へ~。じゃあ眼に魔力を込めてみてください」

「え?」


 魔力を眼に込める? なんでそんなことをしなければいけないんだ?


「私の知り合いで、眼に魔力を込めたら力が発揮されるというの現象が起きたことがあったのですよ」

「......」


 俺は、この女性に言われた通り両目に魔力を込めた。すると頭の中で、俺とこの女性が壁に手を当てている光景が見えた。


(え?)


 どう言うことだ? そう思った瞬間、頭に激痛が走り、しゃがみこんでしまう。


「だ、大丈夫ですか?」

「はい......」


 そこから数分経って、やっと激痛が無くなった。


(それにしてもあれは何だったんだ?)


 あんな光景、今まで見たことなかった。俺は、先程見た景色を説明した。


「やっぱり魔眼ってことですよね?」

「ま、魔眼?」


(なんだそれは?)


「はい、人族にはあまり知られていませんが、ごく一部の人は、眼にある一定の力を持っていることです」

「......」


 それを聞いて俺は驚いた。そして、驚いたのと同時に悔やんだ。もっと早く気づいていれば、実家を追放されなくて済んだと思ったから。


「じゃあその光景のところを探しましょうか」

「はい」


 俺の記憶をたどりながら二人で、ダンジョン内にある壁を探索し始めた。どれぐらいの時間がたっただろうか。そう思うほど夢中になりながら壁と睨めっこをしていた。そしてやっとあの景色の壁を発見した。


 一見、普通の壁だけど、床の模様があたり一面と少しばかし変わっていたのが見て分かった。


「ここですね」


 俺が女性に言うと、先程までの絶望した雰囲気から一変、ワクワクしているような雰囲気に変わったことが分かった。


 そして、俺とエルフの女性で壁一面を触り始めると、一カ所だけ、空洞になっている場所を見つけた。


(幻影魔法か?)


 触って見なくちゃ分からない程、正確な魔法であった。空洞に手を突っ込むと、小さなボタンがあり、それを押す。すると、床が変形して行って、階段が出来上がった。


「「!!」」


 お互い目を見開きながら驚いた。階段を下りてみるとよくわからない文字が書かれていた。その時、この女性が言った。


「やっと見つけた!」

「え?」

「そうね。あなたには説明するわ。目の前にあるのは、古代文字なの。だけど、私には解読できないわ。でもやっと、やっと前に進めるようになったわ」


(古代文字!?)


 そんなのが存在するなんて......。驚きを隠せなかった。最後の言葉が引っ掛かり、ふと質問してしまう。


「なんで探しているの?」

「それは、言えないわ。あなたが私に力を貸してくれるなら話は変わるけど。でもありがとう」

「あ、うん」


 先ほどは右目で予知ができた。だったら左眼なら違うことが起きるかもと思い、もう一度、眼に魔力を込めた。すると、古代文字の内容が頭の中に入ってきた。


【風の精霊、シルフの住処】


(え?)


 シルフの住処? そう思った瞬間、あたり一面に風が吹き始め、目の前に片腕サイズの小さな精霊が現れた。

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