第3話 精霊との契約
驚きながらも目の前にいる精霊を見つめると、話しかけられた。
{君が僕を呼んだの?}
「え?」
{だから君が僕を呼んだの?}
俺が目の前にいる精霊を呼んだ? いや、そんなことあり得ない。だって、魔眼を使ってみただけなんだから。それに呼ぶってあれだろ? 召喚魔法とかだろ? 俺、召喚魔法を使うことができないし......。
「いや、呼んでいないと思いますよ」
{この文字読める?}
そう言われて、先程見ていなかった文字を見る。
【文字を解読したら精霊が現れる】
(え?)
すると、首を傾げながら尋ねてきた。
{読めた?}
「あ、はい」
{だったら君が呼んだってことだね}
「......」
(精霊に言われて、最悪な事態が頭によぎった)
もし、解読してはいけない精霊であったら? もし、俺に害がある精霊だったら?
そうだった場合、俺やここにいるエルフらしき女性は......。
{それにしても人間がこの文字を読めるなんて珍しいね}
「......」
先ほどからほんわかとした雰囲気でしゃべってくれてはいる。だけど、先程頭によぎったを考えてしまい、少し恐怖すら感じていた。
その時、エルフらしき女性が話しかけてきた。
「ねぇ、さっきから誰と話しているの?」
「え? 見えないの?」
すると首を傾げながら尋ねてくる。
「何か?」
「......」
それを聞いて俺は、シルフの方を向く。
{文字を解読した人にしか僕は見えないよ。まあ他の方法で見ることはできるけどね}
「......」
するとなぜか頷きながら言った。
{......。そう言うことね。隣にいるエルフ。この子がいるってことは君も......。ねぇ、僕と契約しない?}
「え? 契約?」
{うん! 僕と契約しようよ}
{契約してお互いなんのメリットがあるの?}
契約と聞いてすぐさまそう思った。契約して、俺に害が及ぶなら契約なんてしなくていい。でも、もし......。
{そりゃあ僕の力を君が使えるようになるんだよ!}
「じゃあシフルは?」
{僕は、まあ暇つぶしかな}
(暇つぶしね......)
「へ~。俺に害とか無いの?」
{無いよ。それに君は僕たちと契約する運命だと思うけどな}
僕たちと? シルフ以外にも居るのか? ふとそう思ったが、今そんなことを考えている余裕はなかった。
「そう......。じゃあお願いしようかな」
シルフの力が使えるようになって、尚且つ俺に害が無いなら契約したほうがいいよな。
{よかった! じゃあ始めるよ!}
シルフがそう言うと、あたり一面に大きな風が起こった。
「え、え? 何が起きているの?」
エルフの女性がそう言うが、俺もわからず返答ができなかった。そして風が収まると、手の甲に魔方陣ができていた。すると耳元に囁かれる。
{これで契約完了だよ! 今日から宜しくねリアム}
{え? 俺の名前教えたっけ?}
{契約したら契約者の情報が分かるからね。まあ僕の過去はまだ見れないと思うけど}
それって、俺にとってデメリットじゃないか! 実家を追放されたことなんか、一番知られたくないのに!
{シフル、俺の過去は誰にも言わないでくれ}
{うん。わかってるよ。それよりも、この子にも僕の姿を見せてあげる?}
シルフに言われて、俺が隣を見ると、何が起きているかわかっていない様子であったので、頷いた。
(それに、ここにこれたのはこの人のおかげでもあるからな)
すると、シルフが先程の大きさで目の前に現れた。シルフを見たエルフの女性は驚きながら言った。
「え?」
「初めまして! リアムと契約したシルフだよ。よろしくね!」
「シ、シルフ!?」
そう言った途端、驚きながら後ずさっていった。
「うん! 信じられない?」
「いえ、それよりも私も自己紹介していませんでしたね。お初にお目にかかります。エルフ第三王女、ミシェル・スチュアートです。よろしくお願いいたします」
「よろしくね」
(え? 第三王女!?)
名前聞いていなかったことより、王族だってことに驚く。なんで王族がこんな場所に居るんだよ! 俺が驚きながらミシェルを見ていると、視線に気づいたのか、こちらを見てきながら言ってきた。
「ま、まさかあなたが......」
「??」
何を言っているんだ? その時、シルフがこの場から消えた。
(薄情者!)
「宜しくね。リアム」
「え、あ、うん。それよりも自己紹介しましたか?」
「シルフ様がさっき言ってたよ?」
「あ!」
そう言えば、ミシェル様が言う通りさっき言っていたな。
「後、さっきみたいに敬語じゃなくていいよ」
「で、でも......」
流石にそう言われても、「はい、分かりました」なんて言えないよ。
「じゃあ命令! 敬語禁止ね!」
「あ、うん」
「リアムは冒険者としてここに来たんだよね?」
「うん。ミシェルは違うの?」
こんな場所、冒険者以外に来る人なんていないと思うんだけどな。
「私は違うよ。それは後で話すね。まずは、リアムが受けた冒険者ギルドに向かおっか!」
「うん」
その後、軽くミシェルと雑談をした後、二人で街へ戻っていった。
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