レモン
Ley
レモン
多分、恐らく、普通より遅い体験をした。
それはなんというか現実味を帯びてなくて、帰路についた自分ですらまだしっくり来ない感覚だが、実際に現実につい20分前に行った事だった。
あ、来る。とは思った。
本当はそのまた3時間前ぐらいのカラオケ店の中でも思ったけどそれは杞憂だった。
杞憂だった、なんて書くとあたかも起こって欲しく無かった様だけれど実際問題冷静に考えて、あまり自分にとっては好ましくない行為で、そこらは自分自身が普通ではないということの一例だった。
普通では無いと言ったとてまあ日常生活に支障は無いし、個人差で片付けられる。
だから特にそれを相手にわざわざ言ったことは無いし言う必要もなかった。
興味はあった。
知的好奇心なのか、ただその方面に対して少しだけ興味を抱く人々が行う趣味を持ち合わせているからなのかまでは分からない。
だから好ましくないとはいえ興味というのと天秤にかけた時に興味の方に全く傾くソレにはさてして文句などはなかったのだ。
話は元に戻すが、何か何となく来ると本能が理解したところまではハッキリと覚えている。
優に5年も前の、自分が幼かったと判断を下さざるを得ない過去の記憶では、その行為は今回のそれより一段階は下で。
いや、もしかしたら普通の感覚では同じなのかもしれない。
ただ少なくとも私にとってはレベル分けされる関係性の中で別の場所に位置しているものだった。
本当に、全く本当に怒られそうな事なのだが、過去に多分書いたように私は自分からアクションを起こす諸々の行為は好きだ。
限度はあるが。
受動的な性格なくせして自分からは、なんて馬鹿げてるし怒られても致し方ないとは思っている。
ちなみに逆は、嫌いだ。
言い方は酷く悪い自覚がある。
でも嫌いだ。
だから今現在自分が受動的に行わされた関係を飛び越えた行為にそこまでの不快感を持っていない理由を未だ掴めていない。
来ると理解した時、ほんの少し、僅かだけ世界は遅くなった。
それは恐らくは美化された記憶だがそのように感じた。
そして本当に顔は傾けられるものなのだと判り、目を見開いたところまではしかと脳裏に焼き付いてる。
昼食に食べた、多すぎて半分でおなかいっぱいになったパンケーキよりも、何故か知らないが自分の周りの人間は私よりも格段謎に柔らかい皮膚を勝手に腕周りに携えて私のおもちゃと化しているそれよりも、よっぽど、遥かに、そうだった。
やはり、ふわふわと現実感が無いと形容する他なくて、もしかしたらパンケーキの生地をスフレの方に変えてたらまた違った感想だったのかもしれない。
後は、少し湿気ていたと感じたのは自分が化粧っ気がなくて乾燥肌なだけだ。
断じて文学的な意図はない。
冷静に、ここまで分析したとて、これ以上の感想もいつもなら込み上げる不快感も無かった。
直前に食べた限定のチョコ風味のフラペチーノの味はただひたすらにフラペチーノの味で。
それが視界の右端で溶けているのを何となく認識したがそれが味覚として現れることもなかった。
18の受験の夏、私は一つだけ柔らかさを知った。
レモン Ley @Ley0421
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