過去

その五人は、いつも遊ぶほど仲が良かった。

家が近所ということも相まってのことだろう。

その中でも彼女の才能は群を抜いていた。

魔法においても、体術においても。

村の人たちからは魔族を救うものだと揶揄されるほどに。


そんな彼女は、五人の中でもリーダーみたいな役だった。

何をするにも彼女が先頭で、何をするかもほとんど彼女が決めていた。


そんな彼女を、ブリクアートは少し苦手としていた。

もともと彼女とは一緒に遊んでおらず、四人で遊んでいた時はブリクアートがリーダーのような感じだった。


リーダーになりたいという性格のブリクアートにとって、彼女は羨む的であり、そして嫉妬の的であった。


そんな日々から数年ほどが経ち、ブリクアートたちも村の学校を後一年で卒業というところで、その村に異変が訪れた。


人間が攻めてきたのである。

その時、ブリクアート一家は数多の人間を殺したが、それでも人間の数は全く減らなかったのである。


村の人々が殺され、ブリクアート一家もそれは免れないと思ったそんな中、なぜかブリクアート一家は生かされた。

それは父の命乞いによるものだった。


魔族は約束と誇りを第一に守るという一族というのが、人間の中の見識だった。

それはあながち間違っておらず、父はその中の約束を他の魔族よりも大事と思っており、それはブリクアートにも受け継がれていた。

人間は裏切りの可能性が少なく、利用できると思いその命乞いに乗った。

その命乞いの内容は、妻と息子の命を必ず守るというものだった。

そのためにならば、どんな情報も吐くし、どんなことだってするとのことだった。


ブリクアートたちが村から去るとき、村の様子を見ると昨日まで話していた近所の人たちや長までもが地面に横たわっている死体になっていた。

そんな中、彼女たちの死体はなかった。

でもそんなことを疑問に思うほど、ブリクアートの精神状態に余裕はなかった。


===


最初の一週間は、ブリクアート一家に身の危険はなかった。

だが、村の情報など一通り吐き終えた一週間後、異変は起こった。

ブリクアートたちが入れられている牢屋に五人の人物が奇襲を仕掛けてきた。


いち早く気づいた父と母は攻防を繰り広げる。

その五人は全員、体術に長けていた。

人間世界でも、魔族世界でも、この世界の中ではかなり強い部類に入る技術だった。

例え手錠と足枷をされているとはいえ、魔族は人間との魔力量は桁違いで、その魔力によって身体能力を強化できる魔族に、人間に負ける要素などほぼなかった。

だが、そんな父母を凌ぐほどの技術を、持っていた。

まるで、彼女を彷彿とさせるような体術を。


先ず、父母は筋力で手錠を壊そうとしたが、さすがにそれは対策されているらしく頑強で壊れなかった。

こうなると、手錠有りで戦うしかない。


ブリクアートも目を覚まし、戦いに参加しようとするが

「邪魔だ」

と父に一瞥されながら拒否されてしまった。

父に三人、母に二人が付く構図が出来上がっている。


結果は、父母たちの惨敗だった。

最後、父が自爆をしたため壁が壊れ、足枷が外れたためブリクアートは逃げることに成功した。


ブリクアートは夜道を走りながら決心した。

裏切った人間を、村を全滅させた人間を、いつか全滅させると。

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