脱出
ブリクアートは、一通り作戦を説明し終え、窓の外を眺めた。
作戦の内容はいたって簡単で、ブリクアートが僕を脇に抱え走りだし、僕が門を壊すだけという作戦だ。
「じゃっ、そろそろ行くか」
ブリクアートはそう言って、俺を脇に抱えて立ち上がった。
まさか高校生にもなって誰かに抱えられることがあるとは思わなかった。
寝室の木の窓を外側に開け、ブリクアートと、脇に抱えられている僕は外に出た。
外は路地裏のようなところで、薄暗かったが、右を向いたら大通りが見えた。
ブリクアートはそこに向かって走っていく。
そして大通りに出たところで、角から手刀が飛んできた。
ブリクアートの喉元に一直線だったが、ブリクアートはそれに気づかないかのように突っ込む。
手刀は、何かに弾かれた。
大通りを走っていく。
人とは思えない速度で。
後ろを振り向くと、フードを被ったクリントンがこれまた追いかけている。
カンッ、と何かが飛んできて、それが弾かれるような音が聞こえた。
チッとクリントンが舌打ちするような声が、聞こえたような気がした。
次々と、何か分からないが、とりあえず鋭利なものが飛んでくるが、何回も弾かれる音を聞いた。
その時、誰にも見えていなクリントンの顔が、悪いことを思いついた子供の用に、ニヤッと口元緩めた。
ドカンッと、僕の後ろが爆発する。
その爆発は横にまで広がっていき、ついには通行人や住宅地を破壊していく。
僕らの周りに爆発し、カリントンの周りで爆発する。
「ふざけんなよ。くそが」
ブリクアートがため息交じりに悪態をつき、舌打ちをした。
「キャッ」
「アァァァアァァァ!」
と通行人から悲鳴が聞こえる。
「なんで僕にはわざわざ攻撃を当てずに、周りをわざわざ爆発させてるんだ?」
僕は疑問に思ったことを尋ねる。
「俺がやったってことにしたいんだろうな。突然現れた敵国の賊が我が国の街の安全を脅かした...ってな」
「僕らのイメージを下げるのが目的か」
ブリクアートが張っているバリアのせいで、攻撃が通りにくいと気づいたゆえの行動だろうか。
でも、ブリクアートが爆発を止めないあたり、爆発を止める力はないらしい。
一段と、スピードが上がった。
「そろそろ門につくぞ。準備しろよ」
僕のわき腹がそろそろ痛みなどで限界を迎えそうな頃、ブリクアートから声がかかった。
とりあえず、前に手を出し門を壊す準備する。
痛い、吐きそう。そんな気持ちを抱きながらも集中する。
「3、2、1で発動しろよ」
「わ、分かった」
俺はいったん目を瞑る」
「3」
一つ、深呼吸し、呼吸を整えた。
「2」
目を開けた。
「1」
目の前に大きな泥岩を発生させる。
「0だ!」
手を大きく振りかぶり、思いっきり泥岩を投げる動作をすると、すごい勢いで泥岩が飛んでいった。
半秒ほどの時間の後、バンッと門が壊れる音が聞こえ、目を閉じる。顔などに木の片などが飛んでくる。痛い。
痛みが無くなり、目を開けると、目の前には壁が見えなかった。
とりあえず外に出れたのだろう。
ブリクアートはある程度の距離を取りたいのか、まだ走っている。
そんなブリクアートに僕はすごい勢いで声をかける。
「痛い痛い痛い痛い。死ぬ死ぬ死ぬ死ぬわき腹死ぬって!骨折れる折れる」
俺はじたばたと暴れ、そんな僕の声を聞いてか、スピードを落として、ドスンッと地面に落とされた。
わき腹を抱えながら、ぜー、はーと息を吐いていた。
わき腹死んでまう。
「そんな痛がるほどじゃないだろ。捕まるよりましだろ?」
「マシだけど、痛いって。力加減知らないのか?」
「落とされるよりマシだろ? 」
「マシだけどさぁ。僕カバンじゃないんだからもうちょっと優しくしてくれよ」
「丈夫な革鞄だと信じてるぜ」
「人間を革鞄とか言うな」
後ろを振り返ると、ついてくる影はなかった。
振り切った...というわけではなく、恐らく、僕らの悪名を振りまく下準備が整ったから満足なんだろう。
「そろそろ帰るか」
「そうだね」
「踏んだり蹴ったりだったな」
「最悪だよ。わき腹死にそうだし」
ブリクアートは俺の手に手を重ね、そして目を瞑る。
その瞬間、視界が真っ白に染まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます