再会

僕がジャンプしてすぐ、僕の上昇は終わり、重力に従って下降にへと動きは変わっていく。

臓器が一瞬フワッと浮いて、不愉快な浮遊感に失われる。


落ちていく瞬間は、なぜか時間が遅く過ぎていくように感じた。

ゆっくりと落ちていく、そんな感覚。

でも、ゆっくり落ちて行っているとしても、着実と目的の場所には近づいて行って、だんだんブリクアートに近づいていく。


身体の向きを壁の方に向け、そして

50センチ


40センチ


30セン


20センチ


10センチ

とブリクアートに近づいていき、そして手と靴の裏を壁にくっつけると、まるで瞬間接着剤が塗られたかのように、ピタッ、と僕の身体が白い壁にくっついた。

でも壁は少し凸凹しているので手に少しの痛みが走った。                                         


でもその手の痛みより、無事に張り付けれたという安心感の方が勝った。

助かったと、一息つくと横から「良かったな」と声が掛けられた。

僕は無言で、うん、と頷いて返事をした。


そして張り付いて間もないが、本当に大事なのはこれからだった。

ブリクアートが目を瞑り、横から風を浴びながら数十秒が経つと壁がいきなり消え、僕とブリクアートは前のめりになりながら部屋に入り込んだ。


部屋の中に入ると、中には一度見たことなる人物が椅子に座りながらこちらを見つめて笑っていた。

「久しぶりね。ブリクアート」

僕の横に立っているブリクアートは驚いたような目で女を見つめていた。

「生きてたのか...カリントン」

お互いの名前を呼びあっているということは、どちらも見知った顔ということなのだろう。

そして女...カリントンは次に僕を見る。

「運よく生き残れて良かったわね」

そしてニコリと微笑んだ。


カリントンはブリクアートに手招きをし、ブリクアートは近づいていく。

そしてカリントンはブリクアートに耳打ちをした。

ブリクアートは小さな声で何か、怒るように言い、反論したが、カリントンは諭すように話す。


僕は口出しするわけにもいかず、後ろから風を受けながらその光景を見ていると、ブリクアートは呆れたように顔を振り、こちらに向かってくる。

そして僕の横に立ってからもう一度、カリントンに話しかけた。


「もう一度言うぞカリントン。俺は約束は絶対に守る主義なんだ。人間やお前のようなやつとは分かり合えんな」

「そう、残念ね。じゃあ無理やり殺すわ」


カリントンがそう言った瞬間、首元からパキンッと何かが弾けるような音が聞こえた。

僕が何が起こったか分からず戸惑っていると、首元に何かあることに気が付いた。

透明な、ガラスのようなもので、どこかで見たことがあった。魔法で作るバリアというものだ。


「下がれ。死ぬぞ」

ブリクアートは焦った口調で僕にそう告げる。

そう言われても、前には僕の命を狙っているのであろうカリントンという女。後ろは高さ何十メートルもあるところから落ちて死ぬしかないだろう。


僕がオチオチとどうするか迷っていると、ブリクアートが話しかけてくれる。

「大丈夫だよ。浮こうとすれば浮けるし、最大限魔法援助してやるから簡単だよ」

ビシュと隣で音がして、隣を見るとブリクアートが頬に傷を作っていて血を垂らしていた。


「浮こうとすれば浮けるって...無理な話だよ」

僕がそんな弱音を吐いていると、隣になっていたブリクアートの右手を横方向に薙ぎ払うように振り、僕の身体は空中へと放り出される。


「え...」

と口から息が漏れ、そして内臓が浮いている浮遊感を味わいながら落ちて行く。

浮く感覚だ。浮こうとすればいいんだ。それだけでいいんだ。と頭の中で考える。冷静であろうとする思考とは真反対に心臓がバクバクと高鳴っている。


そしてもう土が踏み固められた地面まで十メートルを切ったか切ってないかというところで、いきなり浮遊感が無くなり、そして地面との距離が変わらなくなった。

下を確認すると本当に浮いているのが確認できた。


上を見ると火花が散っているのが確認できる。まだ戦闘中なのだろう。

横を確認すると、大きいガラスが確認できて、中の様子が見える。

見たことのある大きな玉座。真ん中に敷かれている赤いカーペット。

そして大きいドアの横に居る兵士に、玉座に座っている王。

そのガラス越しに見える部屋の中にいる人物全員の視線を感じる。


一瞬、焦りからか思考が止まったがすぐさま思考を開始し、顔をばらしてはいけないかと思い両手で顔を隠した。これでばれずに済んだのだろうか。


その時、上から横になった人が降ってくる。その人と僕の距離はだんだん近くになっていく。

そして僕と接触するとなった瞬間、その人物は僕を腕で抱きかかえるようにし、そして僕とブリクアートは地面に落ちて行く。

地面に着く、思った瞬間フワッと浮き、怪我をすることなく事なきを得る。

「逃げるぞ」

頬と筋肉質の腕から濁った血を流しながらブリクアートはそう叫ぶ。

上からはもう一人振ってきていた。カリントンだろう。


僕たちは急いで立ち上がり、走っていった。

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