城侵入

「よし、OKだ」

ブリクアートはそう言うと、廊下にずっと張り巡らされている赤い絨毯が続いている階段を降りていく。僕もそれに続くように階段を降りていった。

そして踊り場で止まり、進んで行きそして踊り場で止まるを三回繰り返して四回目

ブリクアートが階段の踊り場付近で身を屈めて止まった。僕もそれに連動するように身を屈め止まる。


「兵士が居すぎなんだよな。一体なんでこんなに居るんだよ」

ブリクアートが苛立たし気にそう呟いた。

階段から身を隠して、目元だけ顔を出して先を確認すると、そこには二人ほど兵士が歩いていて、そして新たに違うところからまた兵士がやってきたり、去ってきたりしている。

僕は目元を隠した。


「多分、僕がいきなり居なくなったから警戒してるんでしょうね」

僕はブリクアートにしか聞こえないほどの小さな声でそう言う。

「なるほど...多分お前が誘拐か何かされたと考えてるんだろうな」


僕たち、召喚された人たちはもともとの潜在能力は高いと聞いている。他国がそれを誘拐して自分たちの軍に入れるためじゃないかと踏んで、また敵が来るんじゃないかと警戒しているのだろか。真実は違うのに。


「なぁ、その翔太を飛ばした奴の部屋って階段沿いにあるんだったよな?」

ブリクアートが僕にしか聞こえないぐらいの小さな声でそう質問する。

「そうだね、このこの階段を降りた時の横の部屋がそうだよ」

僕はそう答えた。

「そうか」


ブリクアートは黙って数秒ほど考えるような仕草をした後、意を決したように小さく呟いた。

「これしかないか」

と。

「何をするの?」

僕は疑問に思って尋ねると、ブリクアートはすぐに答えてくれる。

「飛ぶんだよ。いや、落ちるって言った方が正しいかもしれないけどな」

ブリクアートがそう言ったとき、僕は彼が考えていたことが分かった。

「もしかしてここから飛ぶの?」

「そう、飛んで、張り付く。壁なら張りついて少し集中して時間かければ音を立てないように部屋の壁を壊せるからな」

「無理だよ。ここ何階だと思ってるの?絶対ミスって死ぬって!」

「しょうがないだろ。兵士が居すぎてこれ以外の方法がないんだよ。騒ぎにはしたくないしさ」

僕は「はぁ」と誰にも聞こえないぐらいの小さなため息をゆっくりと吐いた。


「じゃあやるぞ」

ブリクアートはそう言って、僕の方へと顔を向けた。その時、僕が心配そうな顔をしていたかどうかは僕にはわからないが、たぶんしていたのだろう。そんな僕を励ますような言葉をかける。

「大丈夫だ。できるかぎり俺が魔法でカバーするし、心配するな」

その言葉に励まされてか、僕も気合を入れて壁の前に立った。


壁が音もたてずに横幅一メートル分ほど切り取られて落ちていく。そして壁が落ちていく瞬間を眺めていると、切り取られた壁がいきなり城の壁に張り付くようにピタッとくっついた。僕が驚愕しているとブリクアートが声をかけてくる。

「こうやって壁くっつけることができんだ。翔太をくっつけるなんて造作もねぇよ」

僕は今まで、ブリクアートに対して、あんまり優しいイメージを持っていなかったが、それを見直す時が来たかもしれないと、心の中で思った。


ブリクアートがジャンプして飛び降りて、そして壁に張り付く。僕は作戦を聞いたときは壁の小さな凸凹にしがみつくのかと思っていたが、そうでなはなく、魔法で張り付いているのだろう。

ブリクアートが右手でこっちにこいと手を振ってジャスチャーしてくる。

僕は一度、深呼吸をして、ジャンプした。

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