牢屋

駆け寄ってきた兵士たちに僕はあっけなく捕まった。背中をまず剣の柄でどつかれて倒れ、そして倒れたところを数人の兵士が僕の背中に馬乗りになり即座に僕の両手を後ろに縛った。僕は無理やり立たされ、どこかへ連れていかれた。


僕が連れていかれたのは、小さく薄暗く、鉄格子がある部屋だった。いうなれば牢屋だ。想像していた牢屋と全く同じ構造だった。

僕は入る前に、背中に結ばれている手の縄を一旦ほどき、僕の手を前に持ってきてから、鉄の手錠を僕にかけた。


「入れ」

とここまで僕を連れてきた兵士たちが冷たい声で言い放った。

僕はそれに素直に従い、開いてあるドアのをくぐって牢屋の中にへと入った。

牢屋の中は何もなく、石畳の上に置いてあるトイレと洗面台のみだった。

ピシャッとドアが勢いよく閉まる音が牢屋の中に響いた。


僕は腕を枕にするように寝転がり、小さく呟いた。

「なんでこんなことになってしまうんだよ...」と


「起きろ!」

という大きな声によって、僕は目を覚ました。どうやら横になっていたら寝ていたらしい。腕を枕にしていたせいで、右腕がとてもしびれていた。


だが、そんな僕の状況は全く気にしないように、兵士は威圧的な態度を取り、顔にはいら立ちを浮かばしていた。

僕はそんな威圧的な雰囲気に気おされながらも立ち上がり、開かれたドアをくぐった。


「ついてい来い」

と兵士は僕の手錠を掴みながら案内する。


そして乱暴に連れてこられた場所は、ランタンが一つしか置かれていない、またも薄暗い部屋だった。その部屋にはトイレも洗面台もなく、代わりに椅子が一つとクローゼットのような置物が置かれていた。


「座れ」

と兵士が冷たい声で僕に指示する。

僕は言われた通り、何も抵抗することなく椅子に座った。

兵士の口が開く。


「どうしていきなり王の部屋に現れた!答えよ」

どさっきまでの冷たい声とは打って変わって、怒気を孕んだ大きな声で僕に尋ねてくる。

「僕だってわかりません。ただ、いきなり飛ばされて...」

その瞬間、右頬に激痛が走った。首がもげるんじゃないかと思うほどの感覚を味わう。


一瞬理解できなかったが、兵士のこぶしを見たことで理解した。

殴られたのだ。

「私は嘘が聞きたいわけではない。真実のみを、知りたいのだ!答えよスパイ」

「今の話が本当だとしたら?」

「そんなわけない。それに、お前がスパイだっていう証拠もあるんだぞ!」


兵士はそう言うとクローゼットのような置物の扉を開け、中から剣を取り出した。その間、一瞬たりとも僕から視線は外さなかった。

そして僕はその剣を見たことがあった。

僕が城の兵士から奪い取った剣だった。


「この件の柄の色は、お前の国の兵士の剣という証だ。これでもまだ、お前はスパイではないと、我が国の敵ではないというのか!」

そう言われて、僕は言葉に詰まる。スパイではない。これは事実なのに、それなのに否定できない証拠が兵士の手元にはあったのだ。

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