知らない場所

パッと目が覚めた。僕の目線の先には太陽が昇り、窓からは陽が気持ちよく差し込んでおり、それを背景にして魔女みたいな人が寝る前と同じ格好で座っていた。

身体を確認してみるが、怪我をしているわけでもなければ手錠を掛けられているわけでもない。寝る前と同じだった。


「おはよう。よく眠れた?」

魔女みたいな人が微笑みながら聞いてくる。

「まぁ、それなりに」

「それは良かったわ。でもそろそろ動かないといけないんじゃない?ずっとここに居るわけでもないでしょ?」

「はい」


僕は一回身体を伸ばしてから立ち上がった。

耳を澄ますが、兵士たちが歩いていたり走っていたりする音は聞こえなかった。

「大丈夫よ。さすがに結構な時間が経ったから一旦諦めたらしいわよ」

「良かった...」

安堵の溜息を洩らした。


「これからどうするの?」

「城に潜って内情を探ろうと思います」

僕は魔女みたいな人にある程度の信頼を置き、話していく。

「こんなに探索されて危なかったのに、なかなかチャレンジャーね」

「まぁ、そうですね」

「でも私好きよ。そういう、親友のために命張って頑張る人。燃えるわね」

「.....」

「まるで人間じゃないみたい」

魔女みたいな人はそう小さく呟いた。


僕が頭に疑問符を浮かべると、それ気づいたのか言葉を発する。

「全然気にしないで、独り言よ」

僕は気にはなったが、ここで質問しても意味はないだろう。そう思い、踏みとどまった。


僕は足をドアの方向へ向け、振り向いて礼を言う。


「ありがとうございます。匿ってくれて、あなたがいなければ多分捕まってたでしょう」

「もう行くの?」

「はい、時間は有限なので」

「そう」


魔女みたいな人は少し残念そうな顔をした。

僕は頭を下げ、ドアノブに手をかけてドアを開けようとした。

その瞬間、後ろから小さな声が聞こえ、視界が光に包まれ、体の感覚がおかしくなる。


そして視界と体の感覚が元に戻ったとき、僕は知らないところに居た。

目の前にはがっちりした体格で、王冠を被っている人がおり、その後ろには国旗が掲げられていた。


そして僕はその国旗を見たことがあった。戦場で、敵兵士たちが掲げていた国旗だ。

後ろを見ると、驚いたような表情で、槍や剣を持った兵士たちが構えていた。その槍や剣の先はすべて僕に向けられている。


もう一度前を振り向き、王冠を被っている男は驚いたような顔をしながら、大声で叫んだ。

「捉えろ!」

僕はまだ状況を把握しきれていなかったが、とりあえずやばいということだけは理解し、手に持っていた剣を構えた。


後ろを見ると、敵兵士の数は約十人ほど。全員一般兵より強そうだ。

そして何よりも強そうなのが、王冠を被った王だった。

後ろを振り向くと、豪華そうな脚色が施されている剣を手に持っており、こちらに歩み寄ってきている。


勝てる気がしなかった。

僕はすぐにそう思い、窓の方向へ走っていく。高さがどれくらいの場所か分からないが、少なくともここに居ても死ぬだけだ。そう察したのだ。

そして僕が窓に飛び込む直前、僕の顔を炎が焼いた。


瞬間顔に激痛が走り、後退りしてしまう。一体何があった。状況を判断できなかった。

後ろからこちらへ向かってくる足音が聞こえるが、痛みでなかなか足が動かなった。顔を触ると、またも顔に激痛が走る。


終わった。そう直感した。そしてこんな状況になった原因であろうあの魔女みたいな人を心底恨んだ。

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