記憶喪失

カタコトと馬車が揺れる音が聞こえる。僕はその音と連動するように揺れる馬車の中でハッと目覚めた。

そして目覚めた視線の先には将が座っていた。

「おはよう、翔太」


「おはようございます。将、なぜ僕はここで眠っていて...」

そこで僕はハッと思い出した。

「そういえば僕は戦に駆り出されていたはずじゃ。戻らないと」

「まぁまぁそう慌てるな。戦は無事にこちら側の勝利で終わったぞ」

「ホントですか?それは良かった」


僕は一安心し、ゆっくりと息を吐いた。

そこでまた一つのことを思い出してして、将に尋ねてみる。

「そういえば清隆は?清隆はどうしたんですか?」

僕がそう尋ねると、将は少し迷ったような顔をして答えた。

「それは秘密だ。まぁ、でも安心しろ大丈夫だ。そんなことより体の方は大丈夫か?怪我とかはないか?」


「はい。幸いけがなどはなく」

「それは良かった。じゃあ城に戻ろう。王が待っている」


王に帰ってから僕は、王の話を聞き、部屋にへと戻ってきた。

俺は疲れがたまっていたのか、バタッと布団に倒れると立ち上がれなくなる。

せめて水は浴びておこうと思い、立ち上がってなんとなく外を見ると、兵士たちがせっせと長方形の箱を運んでいた。

僕は気にすることなく、水を浴び、そしてそのまま寝た。


戦から帰ってきた次の日からは早速訓練が始まった。その次の日も、またその次の日も訓練に励んでいた。次なる戦にへと備えて。

だがやっぱり、他の生徒たちと僕の訓練は違っていた。

僕だけワンツーマン指導だった。だが、戦の前と比べて兵士の態度が変わっていた。

この前までは緩く、優しい感じだったのがいきなりスパルタ指導に変わったのだ。


この前までなら寸止めで当てられていなかった木刀も、今となっては寸止めする気もない。日に日に僕の傷は増えていった。

僕が振りかぶった木刀が、寸でのところで兵士に躱され、峰に木刀を食らう。僕の口から唾液が飛んだ。


「早く立て、時間は有限なんだ」

その言葉に従い、僕は素早く立ち上がる。しょうがないんだ。これも戦で活躍するための訓練なんだ。自分にそう言い聞かせながら自らの身体に鞭を打つ。

手にまめができ、体中はあざだらけ。寝るときは体が痛んだ。


それが約二か月ほど続いたとき、僕たちに新たな情報が入ってきた。次の戦が決まったのだ。敵国は前回戦った国と同じ国だ。

詳細が伝えられる。伝えられたその時、僕たちは息を呑んだ。

見積り敵兵士数。二万


こちらの兵士、一般兵士百人プラス全校生徒。

前回より難易度の高い、無理げーだった。

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