#4.親玉を討て
時刻は昼を差し掛かった、森の中腹くらいまで来ただろうか。
「なんか森が騒がしいなぁ」
「そうかな?鳥とかじゃない?」
「お腹すきました~」
森の中はやはり涼しい。
一定のヒーリング効果があるのにも納得出来る。
森の中ではよく、
それにやはりシャラさんが強い、敵を目の前にしても動じることなく手早く処理している。
父のデクラさんから盗んでいる技術があるのだろうか。
僕も早く大人になれれば、役に立てるはずなんだ……。
「サゴリン、足元気をつけなよ」
「ぬかるんでますね」
「水が豊富、いい場所」
ヤギさんの目は、いつにもまして鋭く、まるでプロの狩人のような双眸をしている。
対照的にシャラさんは起きているのか寝ているのか見分けがつかないほどにノホホンとしている。
「お父さんはやっぱり強いんですか?」
「強いですよ~、父は傭兵でしたからね~」
そういえばデクラさんもいってたな。
「故郷では英雄だとかいわれてましたね~、私は興味無いですけど」
「シャラさんとどっちが強いんですか?」
「そりゃあ父ですよ~、でも身体能力なら負けませんっ!」
「大きいし、若いですからね」
「サゴリン、それセクハラっていうんだよ」
「あ、失礼しました」
「セクハラ??美味しそうな名前ですね~」
「デリカシーのないオヤジにとっては大好物かもね~」
「性格とスタイルによって好みが変わるんですか~?」
「そ!アタシも大好きだから」
「んん?ヤギさんはおじさんだったんですか~?」
「まぁね~、禁酒と禁煙が9年続いてマジでイライラしてるから」
「9年??ヤギさん何歳なんですか~?」
「きゅーさい!!」
「0歳から嗜んでたんですか~?!」
「そうだよ」
「はあえ~、世の中は広いですね~」
「大丈夫だよ、シャラさん。ヤギさんはまだ飲んだことも吸ったこともないから」
「なら安心しました~」
「ってかこの世界にタバコとかあんの?」
「タバコってなんですか~?」
「僕が城を見た限りだと葉巻はあったみたいだけど、タバコみたいなフィルターを通すやつは無かったよ」
「かぁ~、葉巻はやだなぁ~」
「葉巻は父が吸ってましたね~、私は嫌いでした」
「まぁ、吸えるもんあんならいいべ」
「体には気をつけてね」
「おっ、健康に気を使ってくれてるの~?サゴリンちゃぁん」
「うん」
「お、おう。もうちょっと回りくどく返していいんじゃない??例えば、そっ、そんなじゃねえよ///とか恥ずかしがってみるとか」
「はは、いる?それ」
「まぁ、必要ではないね……うん」
「これからは適度に織り交ぜていくよ」
「おう、待ってるよ」
足のぬかるみがどんどん深くなっている。
「そろそろ通れるところじゃなくなるかもね」
「そうですね~、足が重いです」
「魔法で足元燃やそうか?マシになると思うけど」
「バカ、森が燃えたらどうすんだ」
「そ、そうだね」
役に立ててないなぁ……。
「あのおふたりさ~ん」
「はい?」
「どした?」
「
「ん?」
「あっ、そういうこと?」
え?ヤギさんもシャラさんも何を……
「だから騒がしかったのね、サゴリン…よーく注意して周りを見て見て」
目を凝らし、周りをじっと見渡す。
よく見ると緑色の何かが大量にうごめいている。
「うわ~ちょっかいかけすぎたかなぁ……でも女、子供を狙って現れるあんたらが悪いじゃん。なぁ、サゴリン」
「僕にはまだ、存在が点々としか……」
「アンタは援護頼むよ、シャラちゃん。準備はいい?」
「了解で~す」
スっとナイフを抜くヤギさん、腰にかけてある鞘に手をかけるシャラさん。
僕は……
「これほどの数だと親玉がいるはずです。森ゴブリンだと腰巻の色が違います。そいつを見つけ出して殺せば群れは一気に散っていくはずです」
僕は…せめて情報をっ
「さんきゅー辞書百科!!」
「分かりました~」
「
森全体と意思疎通をはかれ……
いた…!
「
この場所を伝えろ。
「
「うぉ、サゴリン…アタシになにした?!」
「なに~…この魔法」
「ボスの位置を伝えました、あとはどちらが先に討ち取れるかの勝負です」
すこし競争というスパイスを加えようと思ったが……この二人には効き目が強すぎたみたいだ。
「ごめんね!シャラちゃん、アタシ速さは宇宙一だよ!」
「私だって負けません!!」
ボスの位置を特定するや否や、一直線に走り出した。
僕は森の囁きを通して2人の戦況を見守るとする。
「なんて身のこなし……ヤギさんは妖精さんのようですね」
「シャラちゃんも大きい体にしては機敏だね」
「関係ないですよ!」
生い茂る草木を力で強引に突破しているシャラさんに対し、ヤギさんは木々を利用してまるで忍者のように飛び回っている。
「見っけた、あいつか!!」
「しまった!」
「んじゃ、いっちょ貰い!!シャラちゃっ…あ?!」
ボスを囲むように精鋭のゴブリン達が現れた。
「くっ、範囲を巻き込む攻撃なんて知らないよ!」
「追いつきましたよ!ヤギさん」
ヤギさんは鋭い目付きでニカッと笑うと、目では追えぬ様な速さで精鋭ゴブリン達の急所を丁寧に突いて行く。
あるいは頸動脈、アキレス腱、目や喉をその小さなナイフで正確に速く、
「数が多いっ」
「丁寧な技ですね~、9歳にしてどこで覚えたのでしょうか」
一方でシャラさんは刀を使い、バッタバッタと力強くゴブリン達を薙ぎ払う。
「グガアアアア!!!!」
ついにボスが現れたようだ。
「お出ましか!!」
「来ましたね……」
精鋭達は全て殺り終えた、残すはボスだけ……だが
「アタシがやるから」
「いえ私が!!」
二人はもめていた。
「勝負とか正直、どうでもいいんだよね。ね?」
「そうですね」
「はい!言質とったー!じゃあ、ボスは譲ってよ!」
「小賢しいですよ!ヤギさん!ほら、ボス待ってますよ!もう私が行きますね!」
「ちょっと待った!!なんでそうなんのよ!」
「だってどうでもいいんでしょ」
「だ~~か~~ら~~」
ザシュッ
血の吹きでる音……。
各々が別々に分散するゴブリン達、あれ……言い合ってる間にボスやられてない?
「あぁ~……そのなんだ。二人が言い合いしてたから……俺が、な」
この声どこかで……
「パパ?!」
「ピカおじ!!」
「全く、探したぞシャラ」
「パパ~!!」
「うわっ!やめろ!!腰が折れる」
その大きな体で父に抱きつくシャラさん。
どうやら、デクラさんのようだ。
「ふぅ……捜索隊を出しにサラファンに向かって正解だった。さぁ、帰るぞ」
「は~い」
「君……見かけによらず強いんだな。あのデコピンはキツかった」
「アタシも強いけどサゴリンも強いんだぜ、あれサゴリンどこいった」
遠いところから聞いてます……。
「ただ、子供たちだけでこの森に入るのはいただけない、出口まで案内しよう」
「え?今の見てた?アタシら強かったからいいじゃん」
「……だーめだ、大人がいなければ色々と危ない」
「ぶ〜わかりましたよ、んじゃいこ、サゴリン!ってサゴリンどこいった」
だからここにいますよ。
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