第92話

「ボールド!

 口を挟むな!

 これは妾とこの小娘との1対1の決闘じゃ」


「この娘を城に連れて行くのがあなたの役目ではありませんか?」


 ゴルドラはちらちらとクロスと瓜二つの少女を気にしながら蛭の吸血鬼と言い合いを始めた。


出血が酷いので気を失いそうだけど、まだゴルドラとの決闘の決着はついていない。

両手が無い状況でも、まだ魔法は使える。

うまくいけば、あの蛭の吸血鬼も一緒に倒せる。


腕が無いから印は結べないし、直ぐ近くにいるから長い詠唱も出来ない、念じるだけで一気に成功させないといけない。


「ゴルドラ。

 決闘は貴様の負けだ」


最後に私が使える最高位の魔法『フレア・ボム』を使おうと念じ始めたけど、クロス似の少女がいつの間にか私の目に前に現れ、地面に落ちた私の手を拾い上げなら勝利を告げた。

私の勝ちなの?


 そして羊のような角を生やした白髪のメイド達が現れて、みんなに回復魔法を掛け始めた。

良かった。

みんな生きているみたい。


「な、何を言っておるのじゃ?

 これは妾と小娘の1対1の勝負。   いかにお主でも口出しはさせぬ

 どうみても妾の勝ちでじゃ」


「貴様、人間の姿になれ」


「な、なんじゃ」


ゴルドラは素直にまた人の姿になった。

表情を見てわかった。

あの人、クロス似の少女を相当恐れている。


「貴様が背負ってる剣の中に勇者がいるな。

これでは2対1だ」


あ、確かに2対1だよね。


「こ、これは、そう、知性を持つ剣じゃ、こういう武器なのじゃ!」


「うるさい」


「クッ、わかった・・・」


ゴルドラは何か言いたそうだが、クロス似女の子が睨むと負けを認めた。


「それじゃあ私の勝ちということで、約束通り皆には手出ししないね」


ゴルドラに念押ししたけど俯いたまま何も言わないので、クロス似の女の子見る。


「我の判定には誰も逆らえぬ。

 ゴルドラ、その剣も寄越せ」


「え、これは妾の・・・」


「我の命令だ!」


 金色のドラゴンは何か言い出そうだが、渋々クロス似の少女に近づいて地面に突き刺して離れていった。


剣の中に閉じ込められて女の子は私を心配そうにじーっと見ている。


「あの、この女の人を剣の中から出してもらえないかな?」


「分かっておる。

 まずは貴様の治療からだ。」


どうやらこの女の人は解放してもらえるようだ。

そして、クロス似の少女は私の腕を引っ付けて回復魔法を唱え始めた。


「魔王様!

 腕が左右が逆です!」


「む、そうなのか?」


ちょっと!

ちゃんと付けて欲しいな!


メイドさんが慌ててやってきて、私の腕を付けて回復魔法を唱えた。

そして、クロス似の少女は本を取り出して難しい顔をしながら本と私を交互に見ている。


「あー、その、なんだ。

 貴様がヒナタだな。

 妹から話は聞いている。」


「そうだけど、あなたは不滅の魔王?」


本をじーっと見ながら、「これを我にやれと・・・」と困惑しながら呟いた。


「どうかしたのかな?」


「うむ・・・」


なんか本を閉じて深呼吸を始めた。


あ! 

カーツェルさん起き上がった。

良かった生きてたんだ。

でも、すっごくこのクロス似の女の子を睨んでる。


「後ろ、危ないかも?」


「待て、我は今とてつもない難題に直面しておる。

これは神話級を超える魔法を100個同時に唱えるより難しいものなのだ。」


ええ?

深呼吸をしながら目を瞑って物凄く集中しているけど、どんだけ強力な魔法を使うつもりなの!?


「うぉおおおお! ラファを返せぇ!」


ああ!

カーツェルさんが剣を構えて突進してきた


「ちょっと後ろ、危ないよ!」


ああ、だめだ、集中していて気付いてない。

私の治療をしてくれてるメイドさんは気づいているみたいだけど何事も無いように治療を続けている。


「われ・・・わ、私の事はぁ、不滅の魔王じゃなくてぇ♪

 ルゥイちゃんって呼んでほしいな♪

ゴフゥ♪」


「は?」


カーツェルさんは剣を背中から心臓の辺りを貫いた後、そのまま気を失ってしまった。

ルゥイって子は口から吐血して息が荒い。

ちょっとやばいんじゃないかな。


「だ、大丈夫!?

 私よりこの子の治療を!」


メイドさんはチラッとルゥイって子を見た後、何事も無いように私の治療は続けている。


っていうかカーツェルさんの後を追っかけて来たメイドさんは気を失ったカーツェルさんの治療を再開した。


「ちょっとあなた達!

 早くこの子の治療もしないとダメでしょ!」


「ヒナタ。

 我の・・・

 いや、私のぉ、友達になって欲しいな♪

 ゴホゴホゴフォ!」


ルゥイ吐いた血が私顔にかかる


「いや、そんな事より早く治療して貰いなさいよ!」


「お、お願い♪

 友達になってぇ♪」


「分かりました!

 友達にでもなんにでもなるから!

 早く治療を!

 そうだ!

 私のポーチの中にクロスが作った回復ポーションあるから使って!」


私の言葉を聞いたメイドさんが直ぐにポーチを外して恭しくルゥイさんに渡した。


「おお!

 これが妹の作ったポーションか!」


「そうよ!

 早く飲んで!」


「ありがとう♪

 我の宝物にするぅ♪」


「いや、だから、早く飲め!」





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