第91話
勝った!
バラバラになった巨人がかなり気持ち悪い。
早く回復ポーションをみんなに使いたいけど、金色のドラゴンに吸血鬼達がいる。
勝てるかどうか分からないけど、絶対諦めたらだめだ。
吸血鬼達がジリジリ近づいてくるので、私は槍を構えて力を込める。
「めんどくさいのう。
妾と一緒にくればお主は助かると言っておるのに・・・」
「私だけ助かるなんてお断りよ!」
ドラゴンは私の槍を見ながら溜め息を付いた。
「ルゥイも面倒なことを言っておるし。
あー、なんじゃ。
古来よりこういう時は1対1の決闘で決着を付けるのが習わしらしいの。
妾と戦って勝てばそこのお主の仲間は手を出さぬぞ?
負けたら大人しくついてきて貰おうかの。」
「あなたと?望む所よ!」
「ほぉ、即決とは恐れ入ったわ」
金色のドラゴンが巨大な大剣を背負った頭以外は金色の鱗に覆われた大柄の女性の姿になった。
吸血鬼達が大柄の女性の方を見ながら鼻息を荒くしている。
なんかキモいけど、早く決着を付けないと。
「皆の者、下がれ。
さぁ、始めよう。
妾の名はゴルドラじゃ
いつでもかかってくるが良い」
右手で背負っている剣を握りながら左手でかかってこいと手招きをしている
槍に力を込めると白く輝き始める。
「いくわ!」
『ドン』と音を立て地面を蹴ってゴルドラに近付き、フェイントを入れながら槍を突き出す。
いける。
さっきの巨人の時より槍に力を感じる。
目の前に磔されたように両手を広げた全裸の人間の女性が現れられた。
「え、何?」
思わず後ろに下がる。
よく見ると大剣の中に女性が閉じこめられてる。
「『天弓』発射じゃあ!」
ニヤリと嗤ったゴルドラが剣を蹴ると、無数の光の矢が現れて私を追いかけるように向かってきたので、槍で払いのける。
「あはははは!
次は妾の剣技を受けるのじゃ」
今度は凄い速さで近づいて来て巨大な剣をグルグルと振り回す。
下手くそ
この人へたくそだとすぐに感じた。
はっきりいって力は凄いんだろうけど、剣の軌道は読みやすいから避けるのは簡単。
剣を避しながら槍を胸に向かって突き出し槍先が鱗に当たると『パチパチパチ』と火花が飛び散りった。
鱗を突き破ることが出来なかったので、槍を引いて距離をとる。
「どうやら妾の勝ちのようじゃな」
「はぁ、何言ってるかな?」
ゴルドラがツカツカと近づいてきて剣を振り下してきたので、避けようとしたが体が動かなかった。
麻痺してる?
「きゃぁあああ」
大剣が振り下ろされると、カランと槍が地面に落ち、右腕に激痛が走る。
そして血の気が引いていく。
「妾の勝ちじゃ
大人しく付いて来るのじゃ」
「嫌よ!
まだ負けてない!」
今度は左腕から激痛が走る。
ぼとりと地面に落ちた私の左腕を見ると
「負けを認めるのじゃ」
「嫌よ!」
「ならば次は耳が良いか?
鼻が?
それとも足を切ろうかの?」
ゴルドラはニヤニヤと嗤いながら顔を近づけてきたので、思いっきり頭突きを食らわしてやった。
「どうやらお主は妾の腹の中入れて連れて行った方が良さそうじゃの」
ゴルドラはドラゴンの姿に戻り私を丸呑みにしようと口を開けて頭を近づけてきた。
「止めんか!
このど阿呆が!」
これはボールドという吸血鬼の声。
あの蛭の吸血鬼が戻ってきたのか。
いや、吸血鬼の他に後ろから何かとてつもなく強大な力を感じる。
ゴルドラが一歩二歩と下がっていくと体が動くようになったので後ろをみる。
「クロス?」
いや、違う。
すぐにわかった。
虚ろな真紅の瞳で少し赤みがかかった金色の髪、そしておぞましい程の黒い負のオーラを放つ少女がじっと私を見ていた。
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