第83話

「ヒナタ殿!」

 カーツウェルさんが私の方に駆け寄ってきた。

チラッとマユミの方を見ると、すっごいうれしそうな笑顔。

そして顔が赤い・・・

分かりやす過ぎて思わず苦笑いしてしまう。


「体の具合は大丈夫ですか」


 彼はマユミ達の勇者パーティーのリーダーをやっているらしい。

私が居なくなって、前衛がマユミ一人になったから、教会から推薦されたそうだ。

酷い負傷を負ったらしいけど、シンジの回復魔法とハルオが渡した回復ポーションのおかげで大分回復したみたい


「ヵッ、カーちゃん。

 病み上がり何だから無理しちゃだめだよ」


マユミがカーツウェルさんに一歩近付くと、笑顔のまま一歩離れられる。

そしてマユミは若干涙目になる。


この世界に来るまでは、マユミはスポーツが好きな活発な子だった。

バイマンさんのような筋肉が異常に膨張したマッチョな男性が好きで、よく筋トレ系の雑誌を買って見ていた。

カーツウェルさんはそこまでマッチョじゃないけど、鎧の上からだし、着やせするタイプなのかな。


でも、今のマユミは女の子じゃなく、バイマンさんと並んでも遜色が無いくらいマッチョなお兄さんになってしまった。

そしてカーツウェルさんの今の態度。

親友の恋がうまくいくように応援したいけど・・・無理かな・・・

残念だけどマユミの恋は成就しないとおもう。


じーっとマユミ見る。

いい感じに顔の造形は整っていて、がっしりとした体型。

すごく女の子にモテるんじゃないかな。

だけど心は女の子。

神様って惨いことすると思う。

いや、でも、男の子になったときはすごく喜んでたんだよね・・・


「竜王の軍勢の中にゴルドラという黄金の竜がいる。

私情をはさんで申し訳無いが最優先でこの邪竜を討伐したい。」


「えっと、

 どうして私に?」


黄金の竜・・・かなり手強そうね


「えっ?

ヒナは私達のPTに復帰してくれるんでしょ?」


「うん、そうね・・・」


 ああ、そうね、まぁそうなるよね。

ひょっとしたらハルオと一緒に復帰?

流石にいやなんだけど・・・


「ああ、ハルオはバイマンさんと一緒だから大丈夫。

安心していいよ」


「え!」


マユミは私の考えている事わかるの!?


「いや、驚かれてもねぇ。

 私も嫌だし!

 ヒナタも嫌だろうとおもったのよね」


やっぱり、男の子になったマユミでも嫌なのね。


「どうしてゴルドラって竜を最優先にするのかな?」


「ラファという勇者がゴルドラの持つ勇者の剣に封印されている。

俺はなんとしても助け出したい!」


「ラファさん?」


「俺の・・・

 大事な人だ・・・」


 ハルオのことは置いておいて、カーツウェルさんに事情を聞いてみると、どうやらラファさんはかなり高位の勇者で想い人らしい。

ゴルドラという竜はラファさんを剣の中に封じ込めて、勇者の力を使っている。

勇者の力を使ってているということは、剣の中で生きているということなので一刻も早く救出したいそうだ。


マユミも救出に行くことには賛成のようだし、わたしも協力してあげたい。


「いいわ。

 じゃあ私もお願いがあるの。

 悪魔城の下にダンジョンの入り口があって、フィリアがそこにいるの

 ダンジョン内に逃げていると思うから保護しに行きたいかな」


 まずはフィリアを保護する。

一人で助けにいくより、仲間が居た方がいい。

ついでにクロスとも合流したい。


「あの悪役令嬢さんが悪魔城の下にいるの!?」


「あの子の悪い噂は色々聞いているけど、そもそもあの子の婚約者に手を出した子のほうが悪いし、浮気しながら公衆の面前で婚約破棄を言い渡す男のほうに問題があると思うな。

一緒にダンジョン内をさまよっていたけど悪い子じゃないし、今はわたしの親友なんだけど?」


 マユミは何か言いたそうだけど、シンジがこちらに近づいてきたので中断になった。


「フィリアさんを助けに行くのですか?」


「そうだけど、シンジは手伝ってくれるかな?」


「ええ、喜んで」


 シンジって離れたところにいたんだけど聞こえてたの?

私の声ってそんなに大きかったかな?

まぁ、でも、シンジが来てくれたら助かるか。


「なぁ、シンジ。

 ハルオはリーマンの子と婚約したんだよ、それにレナさんも諦めることはないと思うんだ。

あんたまでその争いに加わるわけ?」


「はい!!!

 ハルオ様は最後に必ず私のもとに来られます!!!!!」


 ハルオ様ねぇ・・・

 マユミがじっとシンジの目をみてハルオの事はあきらめるように説得しているが、シンジの濁った目・・・

これってレナ様と同じだ。


この子を正気に戻すにはクロスのパンツをはかす必要があるみたいね



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